›3 27, 2008

海外新興市場へのIPO(イギリスAIM)

Posted by skillstorage at 17:56 / Category: VC(ベンチャーキャピタル) / 0 Comments

ベンチャー企業のIPOの選択肢としてこれからは海外が広がってくるだろう。
イギリスAIMが世界最大の新興市場と言われ、シンガポールCatalistが今年からは盛り上がるだろう。そして上海、香港も将来的には新興市場として活況していく気がする。

日本の新興市場はどうか?既にジャスダック、マザーズ、ヘラクレス、セントレックス、アンビシャス、Q-board、NEOと市場の数はあるのだが、将来的に衰退していくのではないかと思う。

ちょっと考えてみても以下のようなマイナス面がかなりある。

・日本の新興市場は機関投資家が買わない(個人投資家主体)。
・ライブドアショック以降、不祥事が続き信頼が無い。
・J-Soxの施行により上場維持費用と負担が大きい。
・厳しい情報開示。
・四半期決算、予算の開示がベンチャーには負担が大きい。
・証券会社の審査能力が低い。
・地方新興市場はそもそも存在価値が薄い。
・2期間の監査が必要だが、大手監査法人がベンチャーを受けない傾向。
・監査費用が高い。
・監査役報酬、内部監査費用が高い。
・上場準備に時間がかかりすぎる。
・一般に流動性が低い。
・緩い利益相反規制(子会社上場、持ち合い)
・緩い内部統制(オーナー実質支配の上場)
・厳しすぎるコンプライアンス(残業代支払チェックまで)
・上場しても株価がつかない。資金調達ができない。
・製造業の上場数が少ない(合計20%以下)。
・金融庁の対応・方針に不満がある。

海外の新興市場に上場するのは敷居が高いと思われがちだが、審査基準、費用の観点からは決してそんな事はない状況だ。
もちろん、海外の市場ということで渡航費用、英文による国際会計基準(IFRS)による提出、英語での審査、IRは絶対必要だ。

だが、日本企業ではあるが、マーケットがヨーロッパやアジア(要するに日本外)の企業で海外取引が当たり前であったら大した問題では無いと思う。

日本で上場するのであれば、国内が主戦場で信頼性が欲しいといった場合に限定されるのではないか。少なくともVCは国内新興市場ではExitがし難い環境だろう。

□AIM(Alternative Investment Market)
AIMはイギリスの新興市場であり、中小ベンチャーのIPOの場として世界的な地位を確立してる。つまり、イギリス以外の国の企業の上場も多い市場だ。

上場企業総数は昨年で1,682社、平均企業価値は約100億円である。

時価総額、利益、事業年数、最低株主による基準は無いため上場の敷居は非常に低く、上場準備期間 4~6ヶ月とのこと。。それでも上場維持費用として少なくとも1億円程度はかかるようだ。
過去米国でSOX法が施行され審査基準が厳格化した際に、ベンチャー企業がAIMにおおく流れた。その後SOX法は緩和傾向にある。

日本の新興市場同様に質の低い(上場後下方修正したり、不正など)ベンチャー企業が多いという問題も抱えている。

取引の95%が機関投資家であり、この点が日本の新興市場と大きく異なる。
感覚的には、日本の新興市場がVCが個人投資家に高く売却する場であるのに対し、AIMはベンチャー企業がVCから資金調達する感覚で上場する場なのかもしれない。

日本からは、セキュアデザインが設立から8か月後の06年7月に上場している。日本の新興市場ではとても上場基準には満たない経営成績と時期(アーリーステージ)である。

審査はNomad(Nominated Advisor:指定アドバイザー)が行い、日本の主幹事証券会社と同じような役割(実施的に審査をまかせられる)である。

AIMはこのように、ベンチャー企業にとって魅力ある市場であるが、世界の証券市場にとっては新興市場ということで運営のロンドン証券取引所はユーロネクスト、ナスダックにその地位を狙われており、ナスダックからはTOBをしかけられた。AIMはその提案に拒絶し、東証との提携へと動き出した。

東証のは「参加する投資家をプロに限定する、アジアなどの海外企業を呼び込む、既存の上場基準を満たさない新興・中堅企業の上場を進める」ようであり、「英文開示資料、国際会計基準の適用、監査証明・内部統制報告書・日本版SOX法の適用免除、四半期開示の免除」を金融庁に訴えている模様だ。

実現したら、ベンチャー企業にとって大変素晴らしいが、金融庁がそんな市場の開設を許すのだろうか。。

›3 24, 2008

円高は損なのか?

Posted by skillstorage at 19:28 / Category: 日々雑感 / 0 Comments

「ミスター円」こと榊原英資・元大蔵省財務官は、強い円こそ日本の国益だと発言した。昨年も円高を予測し、円は80円台まで行くようなことも仄めかしたらしいが、実際円高が国益に合致するという意見は賛成だ。

そもそも輸出型製造業が中心の産業界では円高を危惧する意見ばかりなのだが、輸入資源、輸入食料が無ければ生活できない日本にとってはある程度の円高は必要なはずなのだ。
そもそも円高ではくて、ドル安というのが現状なのであるし。

米国経済に頼ってばかりでは製造業だって生きてはいけないのだから、円高を受け入れ円高で利益を出せるリストラクチャリングを進めるべきだと思う。

長期計画経営

Posted by skillstorage at 19:27 / Category: 経営戦略 / 0 Comments

10年先まで考えている経営者がどれくらいいるだろうか?
5年先といった中期計画さえ具体的にイメージできない経営者がほとんどではなかろうか。

経済も、国家の動きの変化が激しい時代のため、なかなか先が見通せないの実情だと思う。
一昨年は好景気でうかれ、それがしばらく続くという論調だった。それがサブプライムローン問題と米国の景気低迷感から急に将来を不安視するようになった。

未来を予知する事はなかなか難しく、経済新聞の日々のニュースや論調に流されてしまう人がほとんどなんだろう。

日々の業界の再編や新興国の台頭だとか為替の変動からいかに自社が対応するかという、足元の調整に精一杯な感じも強い。

中小企業では尚更で、日々の運転資金や主要顧客の動向、社内の調整でとても将来のことなどイメージできないという経営者も多いと思う。大企業の経営者には自分の任期中の経営成績しか頭に無い者もいる。

だが、そのようなことでは経営者は失格だと思う。

企業は永続的に発展させることを前提とした、日々の業務があるという観点がやはり基本だと思う。それは、特に製造業の設備投資を見ていると痛感させられる。

設備投資は多大な費用を必要とするもので、どこまで思い切ったことができるか、早く決断できるかが重要である。それには、競争企業がついてくれないほどの規模とスピードが要求される。

中途半端に設備投資をした液晶パネルメーカーは撤退となった。松下は「破壊と創造」と呼ばれるほどの大胆なリストラクチャリングで、液晶をほぼ撤退し、プラズマに集中投下し世界一となった。
シャープも町田前社長が「テレビは液晶しかつくらない」といち早く投資決断したことによって安物家電と言われたシャープが液晶のシャープ、携帯電話のシャープと呼ばれるほどまでになった。

経営者の決断が将来を左右する。そしてその決断は長期的なものでなければならない。

非常に難しいことだ。

›3 21, 2008

ドリコム楽天へ第三者割当(楽天の傘下へ)

Posted by skillstorage at 19:21 / Category: 日々雑感 / 0 Comments

株価が下げとどまらないというか業績悪化に歯止めがかからないドリコムであるが、楽天に第三者割当を行い20%強を楽天が保有する持分適用関連会社となる模様だ。

資金の使用使途は、なんとほとんどが借入金の返済とのこと。

上場し高株価だったものの、創業者とVCが高値で売り抜け自社で調達した資金も使い果たし、銀行借入による運転資金だったものの、業績の低迷から銀行の態度も強くなったのだろう。

銀行借入にあった条件が厳しかったので、どういうつもりかと思っていたのだが。当然経営陣は業績回復のつもりだったのだろうが。

楽天がどういうつもりで増資を引き受けたのか非常に気になるところです。

›3 19, 2008

オーベン(旧アイ・シー・エフ)上場廃止

Posted by skillstorage at 16:49 / Category: アントレ(起業) / 0 Comments

何度か書いたが、フロント企業のおもちゃと化したオーベンがいよいよ上場廃止と報道された。
すでに上場時のビジネスモデルは崩壊し、一般投資家から金を巻き上げる株券印刷会社となり魑魅魍魎の人物の出入りする企業となっていた訳だが、かつて上場廃止宣告された新興ネット企業同様に今後生きる術があるのか疑わしい。

新興市場が岐路に立たされていると言っても過言では無いだろう。

一部のこうした企業の影で、早期に上場したおかげで資金調達に成功し、知名度が向上し成功した企業も存在する。
そのような成功例はあまり意識されず、投資家保護の観点から新興市場全体に対する懐疑的な雰囲気が広がってしまった。

これによって被害を被るのは、上場を目指すベンチャー企業だ。もっと言えば、ベンチャーの育たない風土になり国力が落ちる可能性さえあると思う。

上場に値しない企業を見抜く能力というのは非常に難しい。証券取引所に審査能力が無く、証券会社に丸投げしていたのは問題ではあった。

但し、審査の厳重化というのがまともなベンチャー企業にも重くのしかかっている点もまた問題だ。

審査の厳重化が形式的な厳重化に思えてならない。

以前の軽い審査の時には、
監査法人の監査はバックデート可能で、上場準備期間がそれこそ半年でも良かった。
内部統制や反社会勢力排除という概念が薄かった。
J-SOXはそもそも無かった。
上場後のMSCBやインサイダー取引なども規制されていなかった。

それは問題ではあったが、
監査期間2年以上、
監査報酬は無料に近かったのが年間1千万近い、
内部統制のチェック体制、
J-SOX法、
と費用と労力が莫大に増加し、また新興市場で株価が低迷している状態でとても上場しようと思えない状態になってしまった。

自分が思う改善策としては、
上場に値しない企業は排除宣告(明確な定義づけは難しいだろうし、その企業の株主は保護されないという問題はあるが)することに留め、上場の敷居を上げるべきでは無いと考える。

上場時の目論見書等による情報開示はしっかりやるべきだし、監査もきちんとやるべきであるが、今は監査法人も責任を感じてしっかりやっているし、一般投資家も目論見書をちゃんと見て企業の内容を調べるようになってきているのだから。

新興市場に上場しているベンチャーで成長段階であるにもかかわらず、所持している現金よりも時価総額が低い企業が存在するのは明らかに市場の存在価値が無い。

未公開企業を買うよりも安いだろうし、それこそ魑魅魍魎な輩に株を買い占められるような危険性さえ感じる。

実況LIVE 企業ファイナンス入門講座―ビジネスの意思決定に役立つ財務戦略の基本

Posted by skillstorage at 16:20 / Category: 書評 / 0 Comments

実はこの本の題材にもなったファイナンスの講座に1回だけ出たことがある。実践的で具体的な事例をベースに説明されていて結構ためになった。講座はファイナンスのまったくの初心者はいないようで、M&A担当者や証券会社勤務の人が多かったようだ。

バリュー株の株式投資で有名な某事務所の人も参加していたのだが、訳分からない質問をして失笑されていたのを思い出した。

そっちのバリュー株の投資のセミナーというのは数十万するらしい内容なのだが、やる内容はファイナンス入門(DCFによる価値算定)がメインで、インデックスや投資信託の買い方はやらないとのこと。アセット・アロケーションも知らないようで、株の投資ブームの中でファイナンスによる理論株価を出す方法とバフェットブームが受けたのでしょうな。

まあ、レベルが違う感じでした。この本の元のファイナンス講座は値段も安く、内容は実践的でかなり良い内容だった。
株の投資という趣旨では無い内容で、ベンチャー企業の資金調達からM&A、アドバイザリー業務の内容までわかって非常に内容が濃い感じだった。

最近では、企業の財務担当者のレベルも上がってきている事を感じる。MBA取得者が増えたおかげか、外資系金融機関が国内に入ってきてかきまわしているおかげか、スティールパートナーズのような敵対的買収前提の株取得の恐怖のおかげなんだか。

他方で、ファイナンスをまったくわかっていない上場企業も多数存在する。既存株主価値を既存する資金調達や銀行借入を増資で返したり、フロント企業に入り込まれたりと。

この本は恐らくベンチャー企業から大企業の財務部の新人~中堅まで幅広く読まれるだろう。
読みやすいので。

最もこれくらいの内容はプロだったら本当は知らなかったおかしいし、最近は専門書も多く出てきているのだが。

実況LIVE 企業ファイナンス入門講座―ビジネスの意思決定に役立つ財務戦略の基本
実況LIVE 企業ファイナンス入門講座―ビジネスの意思決定に役立つ財務戦略の基本保田 隆明

ダイヤモンド社 2008-02-29
売り上げランキング : 1767

おすすめ平均 star
star平易で良くまとまっている
star現場が分かる本
starステージにあっており、非常にわかりやすい。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

›3 18, 2008

黄金の扉を開ける賢者の海外投資術

Posted by skillstorage at 20:02 / Category: 書評 / 0 Comments

最新作はこれまで以上に一般投資家がグローバル投資を行う実践の指南書として書かれている。まったくのゴミ投資家だと読んでもわからないだろうか、当ブログを見ていてで多少ファイアンスに興味がある読者なら、理路整然とした投資理論に納得できるだろう。

まあ、初心者でもPERだとか、インデックスだとか、アセット・アロケーションについてまたこの本で復習もできるのでゆっくり読み進めていけば良いのだと思うが。

逆に金融理論や金融商品知識が無いままに投資をするのがどれほど恐ろしいか改めて気付かされた。
特に金融商品の紹介が非常に豊富だ。手数料の安いインデックスやETF商品だとか、楽天証券でも買えるiSharesは国際分散投資のインデックス派にはなじみ深い(それでも一般投資家は知らないか)が、REIT(不動産投信)や更に為替やコモデティ関連商品があり、市場とは逆の動きをする金融商品についても紹介されているのがすごいと思った。

これだけネットで情報が氾濫しているのに、ネットで多数いるマニアの個人投資家の情報を集めてもかなわない有力な情報だ。

世界的な株安、コモデティ高騰、ドル安、不動産価格下落の中、例えばインデックスと逆の動きをする商品やREETと逆の動きをする商品も載っていた。

要するに空売り(Short)を現物でできる商品ということで、昨年のサブプライムローン以降買っていたら資産を大きく増やせただろう。

ところで今、円高が進んでいる。このタイミングで銀行で外貨預金に資産を移す人が増えていて銀行のシステムがパンクしそうという記事もあった。米国の巨額の貿易赤字、インフレ、原油高、金融危機、インフレ、失業と怒涛に押し寄せる問題の数々から、ドルがまるで紙くずのようになっている現状だ。下落速度はゆっくりと確実に進んでいるのではないか。

以前から指摘しているように、ドルが各通貨と実質的に固定されている状況がおかしかった。この点も本書では触れられており経済学では説明がつかない、国家の関与(円キャリートレード)によって円とドルも実質的に固定されていた。

そもそもドルは刷られ過ぎで世界にばら撒かれたが、ウィスキーを水割りにして量を増やしてもウィスキーの量(価値)は変わらないのと同じで、実質ドルの1$当たり価値は薄まるだけなのだ。

さて、この本では資産が300万円の現金しか無いサラリーマンがプライベートバンクを利用する富裕層に対抗する資産運用を提案している。これが非常に面白い。

サラリーマンの生涯労働賃金を現在価値に割り引くところから話は始まる。ファイナンスの基本であるDCF(Discounted Cash Flow)で自分の生涯価値を出す訳だ。そしてその生涯労働賃金を国内安定収益とみなすと、アセットアロケーションとしては海外へのリスクマネーへの投資にすることでバランスが良くなるという独自の理論だ。

また、持ち家を痛烈に批判している。不動産の所持というのは、日本において特に新築というのは買った瞬間に価値が目減りし、その後も価値が下がり続ける。

少ない頭金で家を買うということは、レバレッジを掛けて価値の目減りする金融資産をポートフォリオに組み入れるという非合理なことなのだ。また「たまごをひとつの籠に入れるな」というアセット・アロケーション観点からも非合理である。

ここら辺は橘氏の繰り返しの主張であるが、具体例が豊富で投資イメージが抜群に沸くだろう。

黄金の扉を開ける賢者の海外投資術
黄金の扉を開ける賢者の海外投資術橘 玲

ダイヤモンド社 2008-03-07
売り上げランキング : 18

おすすめ平均 star
star具体的な手法に特化しています。
star「金融2.0」時代突入、個人投資家必読の書
starサラリーマンは仕事自体が投資である

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

›3 17, 2008

トップ・レフト

Posted by skillstorage at 18:51 / Category: 書評 / 0 Comments

90年代後半の世界最前線の投資銀行を部隊に繰り広げられるグローバル資金調達を中心としたストーリーであるが、日本の都市銀行、日本最大の自動車会社のイラン工場を舞台とした資金調達、日本の総合商社が絡み、複雑な人間関係・憎悪から深いストーリーと実際の現場を体験した者しか描けない壮大な小説となっている。

トップ・レフトとはシンジゲーション・ローンの主幹事を獲得した者が表彰として左上に記される栄光を指す。

国際的企業のグローバル資金調達のスケールの大きさ、イギリス・シティにおいて繰り広げられる投資銀行(IB)の戦い、そしてIBの神秘性の秘密が解き明かされ、どのような実務が行われているのかが具体的にイメージでき、それだけでも興奮した。

世界を舞台に活躍するビジネスマンというのはやはり目指したい者と再認識させられたのだが、やはり相当な努力が必要だと感じた。また、プレッシャーも計り知れない。だがそれ以上の仕事の面白さ、やりがいのためにやっている連中の姿が描かれている。

この小説もまた、ハゲタカと同じで悪役が主役を食っている。主役は日本の都市銀行でエリートコースを歩んでおり、悪役として描かれるは、主役と同期で同じ銀行に入っておきながら、現場の苛酷な環境と侮辱・屈辱をひたすら耐え努力の末に米国系都市銀行に転職した龍花だ。

その銀行に対する恨みはIBでの成功後も決して癒えることなく、機会がある度に復讐を狙う。
かつての日本に尽くすという気持ちは消え、国籍さえも捨てた。

日本の銀行は弱体化しており、情けない社内派閥や既得権益を主人公も嘆く。他方、自動車会社は世界を舞台に過酷な競争を生き抜いている。だが、そこにも社内の既得権益を守ろうとする情けない人物が登場する。

金融知識をフルに使い、復讐のためのバトルが繰り広げられるシーンはすごい迫力だった。

日本の総合商社の金融機関としての役割がまたすごいと思い知らされた。総合商社もまた、日本の銀行とは違い、世界の過酷な競争で戦い、利権をひたすら求めている存在なのだな。

飛行機で読み終えたのだが、結末は衝撃的で数日間その衝撃が常に忘れられなかった。
こんなに読み応えのある金融小説は滅多に無く、こんな本があったらまた読みたいと思った。

トップ・レフト ウォール街の鷲を撃て (角川文庫)
トップ・レフト ウォール街の鷲を撃て (角川文庫)黒木 亮

角川書店 2005-07-23
売り上げランキング : 18740

おすすめ平均 star
star小説としての価値に止まらない良作
star個人投資家の「たまご」達へ
star国際金融ビジネス+エンターテインメント

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

›3 06, 2008

中国での対応を迫られる日系製造業

Posted by skillstorage at 15:55 / Category: オペレーション / 0 Comments

ここ5年ほどの間に中国進出した製造業が数多くある。80年代、90年代に進出した企業と比べると法制度やインフラ環境が整備され、かなり進出しやすい環境にあるようだ。

進出は大手企業から始まり、その下請け業者が生き残りをかけて追従した。2000年に入ってからは、低賃金労働者の活用や中国本土の工場向けの生産で進出した企業が多いだろう。

かつて日本で生き残りを図った部品メーカーは、工場の省力化、自動化といった生産性合理化を図る努力をした。中国進出リスクと国内の高い人件費を合理化で削減することを天秤にかけた訳だ。

ところがその後の経済状況の変化を見ていると、中国進出した企業のほうが成功例が多い感触を感じる。それは製品がそれほど高度化せず、高い技術力を要せずつくれる製品が多いことと、多品種少量でリードタイムの短い製品が多くなったことがあると思う。

中国進出のメリットというのは労働集約型の作業であり、これは高度な技術を要しない製品に適する。多品種少量の短リードタイム製品というのも、作業の段取り(セットアップ)はやはり装置よりも人を動かすだけのオペレーションということで適するのである。

そのようなことも背景にありEMSが成功し、また部品メーカーも中国で成功した企業が多かった。

しかし時代は急速に変化しているように感じる。まずは賃金の上昇スピードがあげられる。中国での生産メリットというのは低賃金で労働者数が圧倒的に多いことだ。それが今崩れている。

新規に中国工場で人を集められなくなってきているのだ。また賃金の上昇スピードも5%、10%など非常に高く、今年に入ってから労働者保護の法律も強化されている。

そのようなことから、低賃金、労働力を中国に求められなくなってきているのが現状だ。

そのため、付加価値の低く、簡単な製品製造は他の東南アジア、アフリカなど移転が進むだろう。一度中国に進出した企業がまた他国に移るのは大変なので、かつての日本のように設備、装置の導入も進んでいく。

更に注目しているのは、中国の上がってきた技術レベル、教育レベルを活用するために研究開発や技術の拠点としての参入だ。

これも間違いなく進むことであり、注目している。

未だ採用活動活発な大企業

Posted by skillstorage at 15:55 / Category: HR(人事) / 0 Comments

時事通信によると、未だに大企業の採用意欲が依然旺盛であることが、主要100社を対象に実施した2009年春の新卒者採用計画調査で分かった。27社が採用予定数を08年春実績(見込み含む)よりも「増やす」と回答。「前年並み」と答えた53社と合わせ8割の企業が、大量採用が目立った今春の積極的な採用計画を引き続き維持する。「減らす」との回答はわずか4社にとどまった。

景気に先行き不透明感が漂う中、何故採用を増やすのだろうか?ここ数年は人材不足として相当数の採用を行っている。90年代後半からの不景気にはリストラを徹底して行ってきた。必要なときに人がおらず、必要ないときに人がいる状況なのだと思う。

大手企業は予算性で採用枠が決められており、今回の不景気感は昨年夏以降のサブプライムローン問題から米国の不況感、円高、資源高と今年に入り急速に進んでいる。

要するに先に予算で採用計画を立ててしまっており、修正されていないのではないかと思う。特に今採用活動しているのは来年春入社の新卒が中心で、この計画は昨年夏以前につくられているところが多いのではないか。

人材紹介会社によると、再来年春は新卒採用を控える企業が増加するだろうとのこと。

やっぱり企業の計画が景況感に対して変動させるのが遅いのだ。そう考えると数年後は過剰な労務費に苦しむ企業がかなり出てくるだろうと思われる。

›3 05, 2008

大混乱のFPD業界

Posted by skillstorage at 17:23 / Category: イノベーション / 0 Comments

LCD、PDP共に前年は低迷した。サブプライムローン問題における消費者心理の冷え込み、新興メーカー参入による競争激化があった。パネルメーカーは中堅が設備投資についてこれず業界の再編が進み、大手メーカーの協業体制ができあがった。

キヤノンはSEDの話は出さなく無くなり、有機ELの設備メーカーの買収、パネルメーカーへの出資と舵を取った。

ソニーはパネル供給をサムスンだけから、シャープの設備投資を負担し供給を受ける事となり、また有機ELの小型モニター販売に至った。

さて、オリンピック年として本来大きな需要が望めるFPD業界だが、今年の景気は良くなるのだろうか。

パネルメーカーや装置メーカーのIRを見ると、FPD市場は低迷を脱し、パネル価格は下げ止まり、設備投資も活性化してよい傾向のように見える。

しかしながら、生き残れるのは数少ないだろう。

装置メーカーで上場しているところも大きな赤字を抱えたり、下方修正しているところが相次ぐ。
ミナトエレクトロニクス
ブイテクノロジー
オー・エイチ・ティー
山一電機(子会社売却)

それ以外もどこも減収減益のようだし、非上場の中小企業、ベンチャー企業は大幅な欠損を抱え倒産も相次いでいるようだ。

見通しも業界の再編で混乱していて予想が立てづらいようだ。

国内オフショア

Posted by skillstorage at 17:22 / Category: 経営戦略 / 0 Comments

約3年前にオフショアリング(海外オフショア開発)について取り上げた。
IT(ソフトウェア)の開発やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)といったものが英語圏の成功を垣間見て、日本でも中国の大連やインド、タイに進出した企業が多い。
多くが成功しているようだ。

しかし、それでも人材が足りないという問題がまず一つあり、さらに国外オフショア開発や就労ビザによる出稼ぎが増えている。(国内給与で雇うとコスト高いと思うんだけども)

最近は国内オフショアという言葉も聞かれ始めている。オフショアということなら意味どおりだと沖縄になるのだが、地方都市も含めて国内オフショアと呼ばれている。

国内で製造業の工場が移転して閑散としている地方都市は多い。また沖縄は産業が無く失業率も高く賃金も安い。

そのようなことからコールセンターだけでなく、開発拠点として活用されるようになってきている。

›3 04, 2008

沈み行く日本の新興市場

Posted by skillstorage at 14:38 / Category: VC(ベンチャーキャピタル) / 0 Comments

インタビュー:日本に新興株式市場は一つでいい=JPモルガン・アセット 太田氏

年間20社程度の優良な企業だけにIPOを絞らなければ失われた信頼は取り戻せないと警告http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK009374620080227?rpc=144

90年代後半から大公開時代と言われ、新興市場が乱立した。

札証アンビシャス、名証セントレックス、福岡Q─Board、ジャスダック、東証マザーズ、大証ヘラクレスとあるが、生き残れる市場は少ないと言われている。
地方の市場は統合せざるを得ないだろう。

セントレックスは金融庁から業務改善命令が出た。

その背景には、IPOを薦め業績の伴わない(もしくは虚偽の業績で)企業に対する審査を甘くして上場させたという市場の責任が大きい。

ループ取引(飛ばし)による不正売上計上や反社会勢力の介入、株価操作、ウソのIR、大幅な業績下方修正といった不祥事が相次ぎ、新興市場の中の数少ない真っ当な企業まで懐疑的に見られてしまっている。

また利益相反に当たる子会社上場が未だに許されているのも問題である。

そう考えると太田氏は当たり前のことを言っていると思う。

›3 03, 2008

衰退する日本の製造業

Posted by skillstorage at 18:50 / Category: 日々雑感 / 0 Comments

原油など輸入価格急上昇、所得の海外流出最大
原油など輸入価格が急上昇している一方、輸出価格の上昇は小幅にとどまり、貿易を通じた所得の流出が拡大している。流出額は海外資産からの収益を上回った。これまで日本は海外からの利子・配当収入により国内経済活動で稼ぐ以上の所得があったが、海外への所得流出で実質的に国民の所得が目減りしている。
(日経新聞より)

輸入する資源の価格高騰、円高により製造業が大打撃を受けている。日本の製造業の強みは輸入した資源を加工して付加価値を付けて輸出販売することにある。これは日本の強みでもあり、これ以外に外貨を稼ぐ能力がほとんど無い。
(他国でも日本のように資源の無い国はあるが、シンガポールのような小国は金融、ITを駆使しているが、日本はなまじ人口が多い大国でありそのような産業政策を取れていない。)

記事が示すように、日本の製造業が付加価値を付けられなくなっており、これは新興国の製造業の追い上げや付加価値の向上があることを示している。

日本が先進国であり続けるためには、製造業がより高付加価値な製品を投入し続けるか、他国への投資・回収といった金融や他の産業で外貨を稼ぐしか無いのだが。

やっぱり前者を推進する方が過去の成功体験からもやりやすいのだろう。

製造業で付加価値を出すためには安い賃金、減価償却や法人税で新興国と競争できるような環境が必要となってくる。

安い賃金は、やはり労働力の流動化も必要で偽装請負が問題となっており、なんとか海外の労働力を国内に持ってくるしかないのではないか。

日本で(輸出)製造業ほど国際的な競争にさらされている業界は無いのだ。日本国内だけで戦っている産業なんてやはり甘い環境にいると思う。

そう考えると、産業政策上は輸出し外貨を稼ぐ製造業に対するバックアップは大切だろう。
さらに、製造業に頼っているだけでなく、金融は国際的競争力をつける必要がある。

でも競争力をつけるために国内で外資金融とガチンコさせると生き残れないほど重症なので厳しいのだろうな。

中国からの人材供給

Posted by skillstorage at 12:36 / Category: HR(人事) / 0 Comments

週末の日経新聞にもあったが、中堅人材紹介会社が人材を中国から直接取りに行き国内メーカーへ供給する動きが活発化している。

実際に付き合いのある人材紹介会社の連中(20社以上)に、以前から話を聞いておりそのような動きを知っていた。

また、上海に行ったときに日本人向けフリーペーパーには30社以上の日系人材紹介会社が掲載されていた。

日本国内においては、多い月で200社以上の登記があるというので、人材紹介会社の競争激化はひどくなっており、人材をいかにして集めるかが生き残りをかけた勝負になっているのだろう。

需給面では、昨年よりは落ちてきているものの、どの業界も人材紹介会社を利用した中途採用は積極的であり、少子高齢化時代において人材の採用がますます重要になっていることから市場はまだまだ成長するようである。

新規参入が多いのは、ビジネスモデルがシンプルで成長が見込めるからだろう。ビジネス上の知識・スキルもそれほど必要ではなく、そもそも在庫がいらないため開業資金も運転資金もそれほど必要ない。
商材が分かりやすく、新規の売り込みもそれほど困難ではない。

問題は紹介する人材が見つからない事なのだ。

現状ではほとんどが転職ポータルサイトを利用している。
エンジャパン、eキャリア、人材バンクネット等の転職希望者が登録するサイトに対して、人材紹介会社はいくばかの金を払いスカウト(アプローチ)して、自社の持っている求人に対して紹介するのだ。
そして紹介料は年収の20~30%を抜く。

近年は求職者(登録者)数に比べて、求人数、人材紹介会社が増加しており中堅は厳しい状況となっている。大手は独自の登録サイトや求職者を集めるノウハウを持っているのだが、転職ポータルに頼っているビジネスモデルは差別化の必要に迫られているのだろう。

そこで、中国の人材紹介会社と提携したり、直接中国人を雇用し日本で日本語教育をした後派遣や紹介するビジネスモデルが登場したのだろう。

もっとも、これでは在庫が要らないうまみが無いのだが。

感心しているのは、企業が日本人にこだわらず優秀な人材は国籍を問わず雇用するようになってきていることだ。そうせざるを得ない環境にはなってきているが、他国の人材をマネジメントするのは困難ということを考えると感心させられる。