›3 17, 2008

トップ・レフト

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90年代後半の世界最前線の投資銀行を部隊に繰り広げられるグローバル資金調達を中心としたストーリーであるが、日本の都市銀行、日本最大の自動車会社のイラン工場を舞台とした資金調達、日本の総合商社が絡み、複雑な人間関係・憎悪から深いストーリーと実際の現場を体験した者しか描けない壮大な小説となっている。

トップ・レフトとはシンジゲーション・ローンの主幹事を獲得した者が表彰として左上に記される栄光を指す。

国際的企業のグローバル資金調達のスケールの大きさ、イギリス・シティにおいて繰り広げられる投資銀行(IB)の戦い、そしてIBの神秘性の秘密が解き明かされ、どのような実務が行われているのかが具体的にイメージでき、それだけでも興奮した。

世界を舞台に活躍するビジネスマンというのはやはり目指したい者と再認識させられたのだが、やはり相当な努力が必要だと感じた。また、プレッシャーも計り知れない。だがそれ以上の仕事の面白さ、やりがいのためにやっている連中の姿が描かれている。

この小説もまた、ハゲタカと同じで悪役が主役を食っている。主役は日本の都市銀行でエリートコースを歩んでおり、悪役として描かれるは、主役と同期で同じ銀行に入っておきながら、現場の苛酷な環境と侮辱・屈辱をひたすら耐え努力の末に米国系都市銀行に転職した龍花だ。

その銀行に対する恨みはIBでの成功後も決して癒えることなく、機会がある度に復讐を狙う。
かつての日本に尽くすという気持ちは消え、国籍さえも捨てた。

日本の銀行は弱体化しており、情けない社内派閥や既得権益を主人公も嘆く。他方、自動車会社は世界を舞台に過酷な競争を生き抜いている。だが、そこにも社内の既得権益を守ろうとする情けない人物が登場する。

金融知識をフルに使い、復讐のためのバトルが繰り広げられるシーンはすごい迫力だった。

日本の総合商社の金融機関としての役割がまたすごいと思い知らされた。総合商社もまた、日本の銀行とは違い、世界の過酷な競争で戦い、利権をひたすら求めている存在なのだな。

飛行機で読み終えたのだが、結末は衝撃的で数日間その衝撃が常に忘れられなかった。
こんなに読み応えのある金融小説は滅多に無く、こんな本があったらまた読みたいと思った。

トップ・レフト ウォール街の鷲を撃て (角川文庫)
トップ・レフト ウォール街の鷲を撃て (角川文庫)黒木 亮

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