›4 28, 2008

上場、もはや「目標にあらず」を読んで

Posted by skillstorage at 17:49 / Category: VC(ベンチャーキャピタル) / 0 Comments

日経ビジネスの「上場、もはや「目標にあらず」」を読んだ。

もうIPOブームは終わったということだが、気になったのは何故目指さないのか、ということである。
その中に「外資や大企業に狙われる」というのがあり驚いた。
上場したら誰でもその企業を買えるという根本的なことを忘れてしまっているのではないか?
また、上場しても中小企業の場合、オーナーが過半数を所持しているところもたくさんある。
それに日本では敵対的買収が成功した事例が無い。

なので、この外資や大企業に狙われるから上場しないというのはナンセンスだ。

最も誰からも狙われないといいうことは株主意見の軽視であり、そんな市場だから日本は相手にされなくてアメリカよりも酷く株価が下落しているという見方もあるのだが。

さて、上場しないでどうやって会社をイグジット(終了)させるのか?
本当は儲かるところまで事業を続けて、もう儲からないと思ったら解散してしまうのが良いのだが。
そうすると、解散時で純資産が増えていないといけない。資産から負債を引いて何も残らないのだったらオーナー(一般的に社長はオーナーという前提)はサラリーマンと変わらなかったと嘆くだろう。負債が大きかったら自己破産せざるを得ない。

もっと良い方法では、売却だ。IPOの方が売却してもまだ会社を所持できて発展させられる余地はあるのだが、この記事にあるように手続きの煩雑さや上場維持コスト、新興市場のイメージの悪さから上場しないで売却するのが、金銭的な面でオーナーが得をする方法ではないだろうか。
売却であれば、負債が多くても値段がつく。

その前提としてはもう成熟期に入っているが、あまりそれが知られていないこと。つまり高く売却できる可能性があること。売却したらすぐに事業から手が引けることが重要である。

売却しない選択肢としては、まだ成長期でこれからも利益がでる。事業意欲があるという点だ。非上場なので社長はいくらでも会社から金を引っ張れるし、どこかで事業意欲低下したりした場合に売るのが良いだろう。

ところで、日経ビジネスではVC85社の内部収益率推移が書かれているのだが、06年からマイナスに。

FPD主戦場

Posted by skillstorage at 14:24 / Category: 日々雑感 / 0 Comments

FPD(薄型テレビ)分野においては、日本・韓国・台湾がセットメーカー、パネルメーカー、デバイスメーカーの全領域に渡りメインプレイヤーとなっている。

このFPD業界の凄まじい業界再編がどのように進んでいくのか。

(1)松下・日立・キヤノン連合
キヤノンのデバイス強化

(2)シャープ・東芝・パイオニア連合
シャープは垂直統合を加速させ、パネル・デバイス販売強化

(3)ソニー・サムスン連合
ソニーがサムスンよりシャープに歩み寄り
ソニーは水平分業を加速

デバイスメーカー、装置メーカーの業績は方針を見てみるのも面白い。

特に装置メーカーはFPD業界の設備投資のための開発を行っており、将来利益の先取りを行っている業態である。
そのFPD関連装置メーカーであるが、前工程(パターン形成工程)、後工程(セル組立工程)共に陰りが見えてきており、前工程のように特定の装置メーカーが独占している市場では大企業ほど利益が出せているが、競争の激しい中小企業の乱立する後工程においては赤字企業も多いのが実感だ。

先日あるベンチャー企業はFPD向け検査装置事業を縮小することを発表した。既に成熟産業となっているFPD業界では設備投資もやがて縮小するだろうし、今の時点でコストダウンに見合った収益が取れないという理由であった。

日本メーカーは撤退しても新興国メーカーは参入してくる。そうなるとデバイスメーカーは海外勢力も力を持ち出し、日系企業が独占している利益も取られてくるだろう。

しかし、販売予測を見ると2011年から完全に成熟期に入るFPD市場にあと数年間の利益を取るために途方も無い努力をしているように見えるのだが。

案外、三洋電機のように地味に電池のようなデバイスに特化したほうが利益が稼げるのかもしれないと思う。

そういえば読売新聞によると三洋は松下に買収されるようですな。松下のIR(本日の一部報道について)では当たり前のように否定していますが。

今連載中の「専務 島耕作」の初芝と五洋とまったく同じ事が起きている訳やね。これで有機ELを隠し持っていたりすると。

永守社長の「休みたいなら辞めろ」発言について

Posted by skillstorage at 14:12 / Category: 日々雑感 / 0 Comments

永守社長は2008年4月23日の記者会見で「休みたいならば辞めればよい」と発言したと報じられた。「社員全員が休日返上で働く企業だから成長できるし給料も上がる。たっぷり休んで、結果的に会社が傾いて人員整理するのでは意味がない」と述べたとされている。asahi.com 2008年04月23日

日本労働組合総連合会の高木剛会長は2008年4月26日、東京都内で開かれたメーデー中央大会で「休みたいなら辞めればよい」と発言したとされる日本電産の永守重信社長を強く批判。高木会長は「言語道断。労働基準法が雇用主に何を求めていると思っているのか、どのように認識されているのか。ぜひ問いただしてみないといけない、そんな怒りの思いを持って、この日本電産のニュースを聞いたところであります」と、同社長の姿勢を非難。大会に出席していた舛添要一厚労相は「きちんと調査する」と応じた。

Yahoo!ニュースのコメント欄もかなり盛り上がっている。
http://headlines.yahoo.co.jp/cm/main?d=20080426-00000003-jct-soci&s=points&o=desc

日本電産の永守社長は尊敬される経営者だと思う。
モーターのような非常に競争が激しく利益の叩かれる商売の中で、何度も瀕死の企業をM&Aして再生させてきた。

瀕死の企業を再生させるのには痛みが伴う。日産のゴーンさんだってそうだが、楽をしたい労働者からはボロクソ叩かれる。

会社が潰れて職を失って、路頭に迷うのか
会社を厳しい環境にして再生させ、給与を上げ生活水準を上げるのか

永守さんは労働者に対して別にどちらを選んでも良いと言っているはずである。そして買収企業の人を切った事も無い。但し、厳しい環境に改革しているだけだ。

そして改革しない限り確実に買収される企業は潰れていたのだ。

「休みたいなら辞めろ」という発言は、それだけ聞くと労働者への攻撃にも捕らえられるが、ちゃんと永守氏の発言全てを見てみたい。搾取しようとして発言したのではない事は明らかだろう。

自分も他の経営者やハゲタカファンドが言うのなら怒るだろうが、永守氏は許せる。
それは本でも読んだのだが、永守氏が一番厳しい環境に自分を追い込み、誰よりも働いているからだ。

永守氏の本は是非読んでみて欲しい。

日本電産 永守イズムの挑戦

›4 21, 2008

中国頼みになる世界経済

Posted by skillstorage at 15:50 / Category: 日々雑感 / 0 Comments

米国がリセッション(不況)に入りだした。それに引きずられ先進国の産業の販売が滞りだし世界経済が悪化懸念にある。

そもそも先進国には経済を引っ張るほどの消費需要が少ない。車関連、洗濯機、テレビ、携帯電話、パソコンといった電化製品はは既に所持しており、今後家電業界を引っ張る製品が無いのだ。
世界各国のテレビのデジタル化による薄型テレビ特需を終えたら次の大型製品が見当たらない。せいぜい太陽電池だが、これまでの製品のような数の出るものではない。

そのような状況から10億人以上の発展途上国の消費に期待するしか無くなって来ている。中国、インド、そして1億人以下のアジア、東欧の小国の集合体の消費を促すことで先進国の輸出を確保というか利権を広げようという動きになるだろう。

それにしてもオリンピックがあるというのに盛り上がりに欠けるし、世界情勢の悪化は予想以上であり将来が心配な人も多いだろう。これもマネーゲームという虚業で遊びすぎた米国とそれに乗った世界中の大馬鹿野郎のせいですね。

›4 10, 2008

中国は崩壊していくのか?

Posted by skillstorage at 14:49 / Category: 日々雑感 / 0 Comments

中国に関しては悲観的な観点と楽観的な観点が交差し、訪問するたびごとに両方の気持ちが強くなる。政治に関しては悲観的であり、経済に関しては楽観的な観測である。

上海には毎月のように訪問しているが、その度ごとに変化が見られる。市内にあった古びたバラック部落がいつのまにか撤去されていた。そのブロックはまた再開発をするのだろう。建築中のビルがまだまだある一方、投資用物件のため夜の電気がまばらという現象も見られる。
商業に関しては活発で、物価が上昇も毎回感じられるものの消費意欲が非常に高い。

上海市内の工場団地のアパレル工場のようなローテクは地方都市に追いやられている。しかし人は集まり商業施設が繁盛している。

日本が高度成長期には地道に生活の基礎を築き、金持ちというのはバブル期に入り台頭したのとは違い、上海では最初から資本主義の投資とレバレッジで投機的な商売が多い。

まだ発展段階にもかかわらず大金持ちがこれほど誕生している状況は、日本とはちょっと違うと感じる。

工場経営者も、人件費の上昇からこれからは商業や投機ビジネスに変えるという人が多いようだ。急激に成長したので、失敗を知らないからか、強欲なのか、さらに金儲けを考える輩ばかりで、地道に今の工場での生産を続けようという気概のある中国人が少ない。

中国でも製造業(加工業、組立業)の多くは台湾人など外国人であるが、彼らとも考えが違うようだ。

ある中国人経営者と話した。不動産や株の投資はしないのか聞かれた。本質的にギャンブル好きなのか、賭博的要素で投資というか投機している。
モノをつくるのではくて、投機で設ける時代だと豪語する。

恐らく、ここ数年の株価上昇と不動産価格上昇で大金持ちになった人をたくさん見ているのだろう。製造業で1個数円のモノをこつこつ作るのがバカらしくなったと思える。

しかし、彼には株も不動産の知識も欠落している。話がまったく噛み合わない。何故投機するのかという質問に、彼は値段が上がるからと答え、何故上がるのかという質問には、一般庶民が買うから、という。
企業価値や不動産価格の決め方は無知である。恐らく一般庶民も同じなのだろう。

これはかつての日本のバブルと全く同じ現象であり、価値以上で価格が決まるといつかは暴落するのだ。

そんな話をしても、ゼロから資産を作ったのだから、ゼロに戻ってもいい。借金してでも大儲けしたい。借金なんて返す必要は無いのだから。

これにはハッとさせられた。日本ではそんな考えの人はいないのではないか。自己破産が2回認められているのだから、マイナスにならないゲームなのに多額の借金をしてまでそれを数倍に増やそうと思う人がいない。

中国ではそれが当たり前なのかもしれない。それが恐ろしく感じた。
ただ彼はお金は動かすと増えると言った。動かすと得をするのはゲームの胴元だけだということを知らないのか?ギャンブルだけでなく株でも不動産でも、仲介する金融機関や不動産屋は確実に手数料を抜ける。

何かに投資をすれば金が当たり前のように増えたという感覚を無知な人間が知るほどより恐ろしいことは無いと感じた。

ところで、工業から商業へとビジネスを転換させている経営者もいる。彼は儲かるところに資本を突っ込むという、日本人より遥かに資本主義的感覚を持っている。しかし、長期で何かを成し遂げるとかそういう気概がある中国人がいるのか心配だ。

政治に関しては、チベットの弾圧や各国の聖火デモも報道されておらず、言論の自由、報道の自由といった基本的人権が蔑ろにされている実態が改善されていない。

沿岸地区は豊かになり、内陸もこれから豊かになるだろう。だが、それを一党独裁の共産党がコントロールし続けることが可能なのだろうか。

›4 07, 2008

成熟期企業の事業継続戦略

Posted by skillstorage at 19:25 / Category: 日々雑感 / 0 Comments

企業も人の人生と同じように誕生があり、死(倒産)がある。そのスパンが短いものも長いものもあることが違うくらいだ。

創業期を生き残る企業はほんの一部であり、多くが資金調達さえ出来ずに死を迎える。活動資金が調達できても、その後の顧客獲得、製品開発が失敗するか、それ以前に運転資金が不足し死を迎えるところがほとんどだ。
そこを生き残ると発展期であり、売上拡大期においても資金が不足しやすい。それは売上が立っても支払される時期が遅いからだ。先に支払や社内経費出費が増えて運転資金が不足しやすい。
また競合の参入や製品の衰退といった問題をクリアし続けていかなければならない。

その後更に発展させるため、資金を調達するためなどで上場という選択がある。

上場企業において成熟期に入り伸び悩んでいる企業を想定すると、MBOやM&A対象という選択肢となってくる。もしくはその企業の置かれた環境(市場)自体の成熟期となると企業の再編が行われる。

薄型テレビ業界というのは、急速に伸びている成長産業だが、参加企業は利益が出ないため早くも成熟産業における再編と同じ現象となっている。過当競争のためコストダウンが激しく(これは半導体でも同じだが)、再編によって競争数を減らすという軍事的な同盟戦略と同じような戦術が取られている。
プラズマではパイオニアがパネル生産から撤退、液晶でも同盟が進んでいる。

その一方であまり報道されないが、部材メーカー、装置メーカーの状況が芳しくないようだ。最終製品を組み立てるセットメーカーと比べ非常に利益率が高い部材メーカー、装置メーカーだが規模が小さい(ニッチな)メーカーは悲鳴を上げている。

それは規模が小さいと経営環境の変化に対応する力が弱いからだ。一番問題なのは運転資金であり、潤沢な蓄えが無いと、一時的な再編による不況を乗り越えられない。また不況の波も余剰人員が正社員比率が大企業よりも高く、柔軟な対応ができない。売り先が一部の企業に偏っているため他の収益源が少ない。

特にFPD業界というのは再編とコストダウン、更には円高の影響でこれまでは良かったが体力の無い(資金の少ない)中小企業、ベンチャー企業がバタバタと倒れ始めている。

これを生き残ると、競争相手が少なくなって更に発展できるチャンスでもあるのだが。

海外新興市場(シンガポールCatalist)

Posted by skillstorage at 19:23 / Category: VC(ベンチャーキャピタル) / 0 Comments

前回のイギリスAIMに続いて今回はシンガポールの新興市場カタリストである。

カタリスト(Catalist)は、2007年12月シンガポール証券取引所(SGX)に新しく開設された新興企業向け市場であり、AIMの模倣でもありライバルでもある。

AIMが欧州、米国市場の企業向けに対し、Catalistはアジア地域という位置づけに将来的にはなる気がする。もしくは、AIMがより時価総額の高いベンチャー企業をターゲットにするのなら、Catalistはよりアーリーステージのベンチャーをターゲットにすることで棲み分けがされるのかもしれない。

AIMよりも更にIPOへのハードルが低い。時価総額、利益、事業年数、による基準は無く、最低株主200人以上という条件はある。申請期間カタリストは5~6週間程度と、圧倒的に短い。

AIM同様に審査は、Sponsorと呼ばれる主幹事証券に該当する機関に一任されている。Catalistもまた、機関投資家向け(プロ向け)市場である。申請書類の作成、上場後の開示、株主総会の運営は当然英語であり、会計基準もUS GAAPあるいは国際財務報告基準が必要とされる。

これでまたMBAとUSCPA保有者ニーズが上昇する気がするので傍観しているところである。

まだ新しく、日本企業の実績が無いどころか情報もそんなにない状態ではあるが、日本の新興市場が低迷し、回復の見込みが少ないことを考慮して、VCがExit先として必死にCatalist攻略を勉強している姿が目に浮かぶ。

日本の新興市場においてIPO数が激減しており、IPO公募価格、初値の騰落率の低下(そもそも公募価格を非常に低く設定しているし、VCはロックアップがかかり売れない場合も多い)、更にその後の株価低迷から、VCはExit先として代替案を必死に探している状況である。

代替案で手っ取り早いのがM&Aであり(監査、主幹事選定も不要)、そして海外新興市場となるだろう。最もそのExitはこれまでの過剰流動性から集めた金をベンチャー企業に高い株価でばら撒き過ぎたツケでもあるのだが。もうこれからはベンチャー企業投資は慎重になるだろうし、バイアウトなど大型案件中心にして、育成(ハンズオン)が必要で手間のかかるベンチャー投資が減少される気がしてならない。