最新作はこれまで以上に一般投資家がグローバル投資を行う実践の指南書として書かれている。まったくのゴミ投資家だと読んでもわからないだろうか、当ブログを見ていてで多少ファイアンスに興味がある読者なら、理路整然とした投資理論に納得できるだろう。
まあ、初心者でもPERだとか、インデックスだとか、アセット・アロケーションについてまたこの本で復習もできるのでゆっくり読み進めていけば良いのだと思うが。
逆に金融理論や金融商品知識が無いままに投資をするのがどれほど恐ろしいか改めて気付かされた。
特に金融商品の紹介が非常に豊富だ。手数料の安いインデックスやETF商品だとか、楽天証券でも買えるiSharesは国際分散投資のインデックス派にはなじみ深い(それでも一般投資家は知らないか)が、REIT(不動産投信)や更に為替やコモデティ関連商品があり、市場とは逆の動きをする金融商品についても紹介されているのがすごいと思った。
これだけネットで情報が氾濫しているのに、ネットで多数いるマニアの個人投資家の情報を集めてもかなわない有力な情報だ。
世界的な株安、コモデティ高騰、ドル安、不動産価格下落の中、例えばインデックスと逆の動きをする商品やREETと逆の動きをする商品も載っていた。
要するに空売り(Short)を現物でできる商品ということで、昨年のサブプライムローン以降買っていたら資産を大きく増やせただろう。
ところで今、円高が進んでいる。このタイミングで銀行で外貨預金に資産を移す人が増えていて銀行のシステムがパンクしそうという記事もあった。米国の巨額の貿易赤字、インフレ、原油高、金融危機、インフレ、失業と怒涛に押し寄せる問題の数々から、ドルがまるで紙くずのようになっている現状だ。下落速度はゆっくりと確実に進んでいるのではないか。
以前から指摘しているように、ドルが各通貨と実質的に固定されている状況がおかしかった。この点も本書では触れられており経済学では説明がつかない、国家の関与(円キャリートレード)によって円とドルも実質的に固定されていた。
そもそもドルは刷られ過ぎで世界にばら撒かれたが、ウィスキーを水割りにして量を増やしてもウィスキーの量(価値)は変わらないのと同じで、実質ドルの1$当たり価値は薄まるだけなのだ。
さて、この本では資産が300万円の現金しか無いサラリーマンがプライベートバンクを利用する富裕層に対抗する資産運用を提案している。これが非常に面白い。
サラリーマンの生涯労働賃金を現在価値に割り引くところから話は始まる。ファイナンスの基本であるDCF(Discounted Cash Flow)で自分の生涯価値を出す訳だ。そしてその生涯労働賃金を国内安定収益とみなすと、アセットアロケーションとしては海外へのリスクマネーへの投資にすることでバランスが良くなるという独自の理論だ。
また、持ち家を痛烈に批判している。不動産の所持というのは、日本において特に新築というのは買った瞬間に価値が目減りし、その後も価値が下がり続ける。
少ない頭金で家を買うということは、レバレッジを掛けて価値の目減りする金融資産をポートフォリオに組み入れるという非合理なことなのだ。また「たまごをひとつの籠に入れるな」というアセット・アロケーション観点からも非合理である。
ここら辺は橘氏の繰り返しの主張であるが、具体例が豊富で投資イメージが抜群に沸くだろう。
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