›3 27, 2008

海外新興市場へのIPO(イギリスAIM)

ベンチャー企業のIPOの選択肢としてこれからは海外が広がってくるだろう。
イギリスAIMが世界最大の新興市場と言われ、シンガポールCatalistが今年からは盛り上がるだろう。そして上海、香港も将来的には新興市場として活況していく気がする。

日本の新興市場はどうか?既にジャスダック、マザーズ、ヘラクレス、セントレックス、アンビシャス、Q-board、NEOと市場の数はあるのだが、将来的に衰退していくのではないかと思う。

ちょっと考えてみても以下のようなマイナス面がかなりある。

・日本の新興市場は機関投資家が買わない(個人投資家主体)。
・ライブドアショック以降、不祥事が続き信頼が無い。
・J-Soxの施行により上場維持費用と負担が大きい。
・厳しい情報開示。
・四半期決算、予算の開示がベンチャーには負担が大きい。
・証券会社の審査能力が低い。
・地方新興市場はそもそも存在価値が薄い。
・2期間の監査が必要だが、大手監査法人がベンチャーを受けない傾向。
・監査費用が高い。
・監査役報酬、内部監査費用が高い。
・上場準備に時間がかかりすぎる。
・一般に流動性が低い。
・緩い利益相反規制(子会社上場、持ち合い)
・緩い内部統制(オーナー実質支配の上場)
・厳しすぎるコンプライアンス(残業代支払チェックまで)
・上場しても株価がつかない。資金調達ができない。
・製造業の上場数が少ない(合計20%以下)。
・金融庁の対応・方針に不満がある。

海外の新興市場に上場するのは敷居が高いと思われがちだが、審査基準、費用の観点からは決してそんな事はない状況だ。
もちろん、海外の市場ということで渡航費用、英文による国際会計基準(IFRS)による提出、英語での審査、IRは絶対必要だ。

だが、日本企業ではあるが、マーケットがヨーロッパやアジア(要するに日本外)の企業で海外取引が当たり前であったら大した問題では無いと思う。

日本で上場するのであれば、国内が主戦場で信頼性が欲しいといった場合に限定されるのではないか。少なくともVCは国内新興市場ではExitがし難い環境だろう。

□AIM(Alternative Investment Market)
AIMはイギリスの新興市場であり、中小ベンチャーのIPOの場として世界的な地位を確立してる。つまり、イギリス以外の国の企業の上場も多い市場だ。

上場企業総数は昨年で1,682社、平均企業価値は約100億円である。

時価総額、利益、事業年数、最低株主による基準は無いため上場の敷居は非常に低く、上場準備期間 4~6ヶ月とのこと。。それでも上場維持費用として少なくとも1億円程度はかかるようだ。
過去米国でSOX法が施行され審査基準が厳格化した際に、ベンチャー企業がAIMにおおく流れた。その後SOX法は緩和傾向にある。

日本の新興市場同様に質の低い(上場後下方修正したり、不正など)ベンチャー企業が多いという問題も抱えている。

取引の95%が機関投資家であり、この点が日本の新興市場と大きく異なる。
感覚的には、日本の新興市場がVCが個人投資家に高く売却する場であるのに対し、AIMはベンチャー企業がVCから資金調達する感覚で上場する場なのかもしれない。

日本からは、セキュアデザインが設立から8か月後の06年7月に上場している。日本の新興市場ではとても上場基準には満たない経営成績と時期(アーリーステージ)である。

審査はNomad(Nominated Advisor:指定アドバイザー)が行い、日本の主幹事証券会社と同じような役割(実施的に審査をまかせられる)である。

AIMはこのように、ベンチャー企業にとって魅力ある市場であるが、世界の証券市場にとっては新興市場ということで運営のロンドン証券取引所はユーロネクスト、ナスダックにその地位を狙われており、ナスダックからはTOBをしかけられた。AIMはその提案に拒絶し、東証との提携へと動き出した。

東証のは「参加する投資家をプロに限定する、アジアなどの海外企業を呼び込む、既存の上場基準を満たさない新興・中堅企業の上場を進める」ようであり、「英文開示資料、国際会計基準の適用、監査証明・内部統制報告書・日本版SOX法の適用免除、四半期開示の免除」を金融庁に訴えている模様だ。

実現したら、ベンチャー企業にとって大変素晴らしいが、金融庁がそんな市場の開設を許すのだろうか。。

Comments