もうずいぶん昔だが、世の中のゼニの流れ、経済の仕組みというのはこの漫画から教わった。青木雄二の本もずいぶん読んだことが思い出される。
思想的にはマルクス主義であり、日本経済の底辺の仕事を長く経験している者だけが書ける、搾取の構造を教えてもらったものだ。
そのナニワ金融道が、最近また復活しているのだ。青木雄二はもう亡くなっているが、絵も思想もそのままに、刑務所から出てきた灰原がまた泥臭い金貸しで敗者復活に挑むストーリー。
2巻では、旧ナニワ金融道でも重要な人物かつ、復活を遂げた肉欲棒太郎が灰原に復讐を挑むストーリーでかなり面白い。
原野商法が繰り広げられた土地で、政治家、銀行、デベロッパー(肉欲の会社)、そして灰原が欲とカネのためにデットヒートが繰り広げられる。
2000年以降のデベロッパー、不動産のバブルに繋がる裏の世界を見ている感じで勉強にもなる。
世界中の株式市場の時価総額の大暴落、ユーロ、新興国通貨の下落、コモデティ価格の下落と想像を絶するカネがこの1年で消えてしまった。この金はどこにいったのか?
2002年以降続いた世界規模の経済成長と過剰流動性(カネ余り)からひっくり返したような、バブル崩壊、銀行が貸し渋りまでするような状況である。
カネが忽然と消えたわけでは無い。信用乗数で膨れ上がった過剰流動性が収縮した結果である。
そもそもどのようにしてカネが膨れ上がったのか?
サブプライムローンで家を買った人達が中心となる。彼らは収入が低いにもかかわらず家の価値が上昇することを前提に金を借り、クレジットカードで消費をした。自己資本が著しく低く、有利子負債でレバレッジをかけて消費をしていたということだ。
同様にアメリカ国民の大多数がレバレッジをかけて消費と投資をしていた。消費が企業業績の向上につながり株価が上昇、融資の金利の利回りよりも株式投資の方が利回りが高いため借金を返済せずにその金を投資に向けた。そのように集まる金が株価を上げていった。
個人と同様に企業もまた高いレバレッジで投資を行い、銀行は担保を取らず価格上昇を前提にサブプライムローンの層にも金を貸した。ローンを証券化したCDOやCDFの算定も好業績の過去履歴が前提としてつくられ、格付もいい加減で最高クラスがつけられていた。
そのようなことから借りる利回りより投資に向けた方が遥かに高い利回りが出るため、その差(スプレッド)を拡大させるためにレバレッジ(融資比率)が高くなったということだ。
さて、米国自体は貿易赤字国家である。企業に例えると、自国で利益を上げることができないということであるが、運転資金さえあれば売上は上昇することはでき、潰れることは無いというネットベンチャーと同じような仕組み。
バランスシートで見ると、ひたすら資金調達のみ。増資同様にドルを印刷し、負債調達としては米国債を日本・中国・中東諸国に買わせ調達し、赤字を集めた資金で賄っていたというのが真の姿だ。
どこへカネは消えたのか?
各種ローンで浪費していた消費者が支払えなくなった。彼らは自己破産するか、資産を現金化してローン返済に回る。企業の業績が悪化しはじめ株式投資利回りが銀行借入・ローン利回りより悪化しはじめたため、売却し現金化し返済へ回る。レバレッジが高いほど、マイナスが大きい。
企業も同様に本業のビジネス以外での金融利回りが低下し始めたために現金化し、ローン返済へ回す。
返済しきれない人、企業が増加、金貸し側は不良債権が積み重なり、金利収入が低下。貸し渋りへと進むこととなる。
米国自体も集めていた金は国民のために使うことはできず、金融機関の救済へと大量に資金を投下することとなる。
このようにしてカネが消えていったということになる。使ったのは、利益を先食いしたサブプライムローンを組むような低所得者、そして多くの収入以上の浪費をした米国市民が使ってしまったということになる。企業も同様である。
莫大な将来の収益を米国市民は一般には使ってしまったのが大きいのではないかと思う。
欧州でも同様のことが起こっていた。
ジョージ・ソロスは「ドル、米国の株式は下落する。新興国は影響が小さい」と書籍「ソロスは警告する」に書いたことを大きな誤りだったと書いた。(日経ビジネス)
新興国株式への投資は、実際は外国人投資家のポートフォリオ上のリスクマネーとして投資されておりそれが新興国の時価総額を大きくしていたのではないかと思う。そしてポートフォリオから組み外すのは真っ先に高リスク商品である。
その結果が新興国株式、通貨の米国以上の下落なんではないかと思う。
ファンダメンタルズでは新興国はそれでも経済成長を続ける。先進国は経済成長は止まり不況入りしている。
現在の新興国のほうが大きな被害を受けている状況は、とばっちりであり、やがて米国のような貿易赤字国、経済成長が止まった国の方が被害が大きくなるのではないかと思うのだが。
EeePCの5万円パソコンの登場によってパソコン市場はがらりと変わった。これまでノートパソコンの開発は高付加価値を目指していた。パソコンで動画を見たり、いい音を出したり、処理スピードを上げるなど。
儲けを優先に高付加価値商品を目指すあまり、メーカーはユーザーニーズとはかけ離れたものをつくるようになった。
EeePCは本来のユーザーニーズに着目し、必要な機能に絞った製品化を進めた。一番の問題点だったのはWindowsVISTAだろう。EeePCではあえてWindowsXPを搭載した。
マイクロソフトもまたユーザーニーズとはかけ離れたソフト開発をしていたのだ。
VISTAの機能は不必要なものが多い。もっと言えば、マイクロソフトのWindowsである必要も無いのだが。
マイクロソフトはEeePCによりWindowsXPが売れるのでとても焦っている。
さて、EeePCであるが、これまではかなり機能を絞りディスク領域が小さく、ソフトも最低限しか入っていない。一般ユーザにはちょっと使いにくいかと思っていた。
ネットと動画とSkypeしかやらないというユーザーには全然使えるのだが、ビジネス系(Office等)もやりたいといういうのでは厳しかった。
ところが、EeePC 1000Hはかなりイケている。ディスクもHDDで160GBあり、マイクロソフトのOfficeと互換性のあるStarSuite8が標準搭載されている。Word、Excel、Powerpointがそのまま使えた。
購入したが6万円を切ってこれだけ使えるのがすごい。出張にも楽に持ち運びできるし、出張先でSkyepでTV会議もできる。CCDもマイクも標準搭載だ。
DISK領域も大きいので他にもソフトをばんばんいれた。ウィルスソフトも。
EeePCの開発のASUSTek社だが、実はノートパソコンのブランド企業の製品をOEM(ODM)で長いこと提供しているので性能、品質には問題が無いかと思う。
EeePCの登場で、大手メーカーもかなり焦って低価格ノートパソコン分野に参入してきている。新聞にも広告が載っているが、EeePCほど的確にユーザーニーズを把握していないように感じる。
どこもWindowsVISTAが標準で、OfficeインストールはUpgradeとして載せている。
その2つの製品がいらないのだが。
EeePCも更に安いモデルを投入すると宣言しているし、今後はコストのネックになるOSをマイクロソフトの製品を辞めてしまえば良いのにと思う。
EeePC 1000Hは買ったばかりだが、ずっと使える商品だし、使っていて楽しい。お勧めである。
ここの社長は面白い。いろいろな雑誌でこれまで取材も受けているのだが、とてもビジネスマンとは思えない受け答えだ。サービスはいわゆるレンタルサーバ、ホスティングでそれらのサービス名称もロリポップだったり、SNSはキヌガサなどふざけた感じが面白い。それでいてロリポップの超廉価レンタルサーバ(バーチャルドメイン)は5年前位に初めて知った時は安さが衝撃的だった。
もっとも1台のサーバをたくさんの人に提供しすぎて遅かったり問題もあるので、安かろう悪かろうはネットの世界でも見えにくいだけで存在するのだが。
社長の家入氏は何かのインタビューで言っていたが、経営とかビジネスはわからない。東京に出てくるにあたり、GMO傘下に入ったことを受けての話だ。
当時はライブドアやVCからもたくさんオファーがあったようだが、何故GMOを選択したのかはそのインタビューの受け答えではわからなかった。
しかし今回の上場は驚いた。てっきりGMOの完全子会社になって経営を持続するのかとずっと思っていたからだ。目論見書によるとGMOインターネットは58%を保持する株主。家入氏は38%所持の株主。しかも会長はGMOの熊谷氏だ。
それと家入氏が上場企業の経営者というのがキャラクター的にとても衝撃的だ。
経営成績はネットベンチャーに多い短期で急成長という感じではなく、着実に成長している。ホスティングが主な事業だからというのもあるだろう。同時に収益が急激に無くなるような心配は他のネットベンチャーと比べたら少ないだろう。
ただ、paperboyは面白いアイデアをどんどん出す面はあり、技術も結構良いのだが、中途半端なところが結構感じられる。SNSもかなり早い段階でmixiやgreeと技術的には同等に近いと思ったのだが、立ち上げ以降は改善やサービスアップか全然感じられなかった。まあ、ドリコムみたいにビジネス支援(CMS)に移ったがビジネスが成り立たないというのを、ドリコムを見て感じて力を抜いたのかもしれないが。
しかし、この時期に上場というのはいただけない。事業の成長上も平凡だし、何故来年以降の市場回復を見てから上場するのではいけないのだろうか?
そこらへんが不思議である。まあ、greeの上場みたいにあまりにもタイミングを狙いすぎるよりは、本来は良いことなのだが。
個人的には、上場などせず、GMOのグループにも入らず、いつまでもベンチャーとして高い経営の自由度で面白いサービスを作り続けてほしかったものだ。
エンロンのまやかしの成長と崩壊までを描いた作品。元CEOジェフ・スキリングの映像がふんだんに使われており、また当時の社員、ジャーナリストのインタビューもあり虚構のビジネスモデルがわかるだけでなく、ジェフ・スキリングというカリスマに従業員も株主も銀行もメディアも踊らされたということが良く分かり非常に参考になる。
ジェフ・スキリング自身のキャラクターは非常に魅力的であり、カリスマ性も高いと思った。
従業員も憧れ、ジェフ・スキリングの話に株主も魅了されている姿がよく表現されている。ジェフ・スキリングを批判する者はバカではないかとさえ当時は思われたのではないだろうか。
歴史上は悪党で終わった人物も多々あるが、きっとジェフ・スキリングのような魅力に惑わされ支持を集めたのではないかと思う。
ジェフ・スキリングの魅力は、まず卓越したプレゼンテーション能力と話し方にある。エンロンのビジネスモデルは誰も理解できなかったというか存在しなかったのだが、あたかもエンロンが金融工学を駆使して電力卸でしっかりと利益を出しているかのような実体の無いものをすばらしいものだと思わせるような詐欺師的能力。
話も面白い。カリフォルニア州を破たんさせるのではないかというほど電力価格を操作してカリフォルニアからボッタくったのだが、あたかも電力販売規制をしているカリフォルニアが悪いかのように世論をコントロールしてしまう話術。
ジェフ・スキリングが公の場ではこう話していた。
「タイタニックは沈む時に電気がついていたが、カリフォルニアは電気がつかないで沈んでいく」
会場は大爆笑だ。
こんな彼の話術がたくさん映像として残っている。
ジェフ・スキリングの過激さを求める性格も、上昇志向が強く成功を夢見る者を魅了する。
エンロンの役員が過酷な冒険をする映像が紹介されている。砂漠の中をバイクで永遠と何日も走る。大けがをする者も出るが、冒険心、探究心、危険な領域へあえて挑戦する姿勢というのは起業家に必要なことであるという信念からだ。
エンロンの社員も非常に過酷な競争に置かれ、多くが退職させられる。
ジェフ・スキリングは結局犯罪者なのだが、そのクレイジーで非常識な行動はやっぱり魅了させられた。
このようなひどい市場環境の中、グリーがマザーズに上場するようだ。
PCのSNSではmixiに突き放されて印象が薄くなっていたが、KDDIと提携してやっていたモバイルではモバゲーのようなビジネスモデルが結構良かったようだ。
昨年までは赤字だが、驚いたのは今期の決算(6月)の数字。
売上高が3億から30億弱に10倍近く伸びており、経常利益も1億超のマイナスから10億もの高い高収益。(しかし販売先はKDDIが30%を占めている)
これほどの成長は確かにすごいアピールになる。
来年から実体経済がますます悪くなる中、成長イメージを見せるためには今期にどうしても上場したいといったところか。
資本政策をみると、当初2500円の発行株価が直近で455,000と200倍弱に株価が増加してKDDIへの第3者割当増資。そして1:2000の分割。
これは上場前のネットベンチャーの株価吊上げによく見られる。株主が売上構成の大きなウェイトを占めているのもよく見るパターンだ。ドリコムを思い出す。創業者の田中氏が62%の株式を保有。田中氏は上場時には1,000,000株を売り出す。あードリコムのようだ。
BSで直近に自己資本比率が半分ほどに低下は、未払金と未払法人税の増加。未払金は何だろうか?
PLで売上は10倍近く増加の一方原価は2倍強の増加に留まる。一般管理費は6倍程度の増加。
このような時期であえて上場するのだが、株価がどのようにつくのかが見ものである。
円高かどうかを見るに当たり、何を基準に見るかが問題である。
世界の全ての通貨と比較しなければならない。
ここ数カ月の為替変動ではでは、日本円が強くなっているが、ドルが弱くなっているわけでもない。ドルも他の通貨と比べると高いのだ。ユーロ、新興国通貨はドルに対して弱くなっている。
このようにドルと比べるだけでなく、全体での円を比べるのが実行円レートとなる。
さて、その次に名目実効円レートと実質実効円レートで比べる必要がある。
円の価値は名目実効レートで見ると、この10年間でほとんど変化が無いことがわかる。
だが、インフレ(対物価)で見る実質実効円レートで見ると、円はこの10年間安くなっている。
日本銀行のHPで見ることができる。
http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/exrate.htm
この10年間は実質的に円安が進んだ。これによって日本の製造業は大きな利益を得たのである。この10年間は日本の製造業を中心とした経営努力により経済が回復したかの印象が大きかったが、90年代半ばと比べると、現在のほうが同じ為替でも利益がはるかに出る仕組みになっているのである。
それは、海外が物価が相対的に高くなり、国内物価が下がったからである。
マスコミでは円高が進めば不況になるという論調が多くあるが、それは間違いである。
外務省の「外国貿易概況」によると、外貨建て輸出よりも外貨建て輸入が大きくなっている。
全体で日本は輸出が大きくても、為替を外貨で立てているのは輸入が大きいのであるから、円高では全体的に得をする。
貿易以外で考えても円の強さは国の経済の強さと言っても良いのであるから、円が高いのが望ましい。
かつては、日本は全てが高いと言われていた時代から、今は先進国の中では日本は安い国になってしまったのだ。
何故、円高では不況と言われるか?それは声が大きい人が円高で困るからというだけで、日本人全員の声を反映していないからだと思われる。
つまり、日本の大企業の多くが製造業で海外に輸出している。例えば、キヤノン、トヨタ、ソニーである。上場企業の構成も偏っているので、日本の上場企業の時価総額も影響され、円高で時価総額が下がり、不況になるというイメージがある点もあげられる。
しかし、円高で一般庶民は得をする。食料品をはじめ、石油、日用品の多くも海外からの輸入品でありその恩恵を受ける。
しかし、ひとりひとりの声は小さい。大企業の輸出企業は経団連を通じたロビー活動も行うし、声が大きいということとなんだろうと思う。
さて、先の実質実効円レートで見ると、まだまだ日本の円は安い。しかしそれがどこまで是正されるかわからない。金利が安く、円キャリートレードも存在する。しかし、海外通貨の金利が安くなることと、海外の物価が相対的に日本よりも安いことを考えると、円安に進む要因は少ないと思われる。
米国の金融機関の損失は5四半期も続いており、資本の劣化が止まらない。しかし他方で米国の時価総額の下がり方は金融恐慌震源地であるにもかかわらず、他国に比べて大したことが無い。ドルに関しても円高ドル安ではあるが、ユーロや他の国の通貨に比べては逆に高くなっている。
米国の金融機関が生き延びているのは、米国市民の税金によってなどと言われているが、米国が生き延びているのは、他国の犠牲があってこそのような気もする。その点についても見ていきたい。
米国の金融機関が総破綻(救済含め)の状況に陥ったわけだが、その次はFRBも危ないのではないかと思う。FRBは金融機関への貸付を行っており、それは今後も続き、回収に至ってはいつになるかもわからないだろう。このようなことからFRBは債務超過に陥る可能性が高い。
どこから金融機関への貸付の原資を得るか。たんにドルを印刷すれば良いか。かつてFRB議長 バーナンキは「デフレを解消するにはヘリコプターでドルをばら撒けば良い」と発言したことからヘリコプター・ベンの異名を取る。ちなみにポールソンは資本注入を進めたことから「バズーカ」と呼ばれる。
だが印刷すればダイリューション(希薄化)が起こる。水割りで薄めるてもウィスキーは増えないのと同じである。つまり米ドルの価値はとことん減少することになる。
海外との為替レートが下がりっぱなしになるどころか、米国内はハイパーインフレになってしまう。
海外に買ってもらうしか無い。ECBも欧州の金融機関への貸付でいっぱいで余裕がないため、買わなければならないのは日本、中国、アラブということになる。これらの国の外貨準備高は合計で400兆円程度だ。
これらの国家もドルの下落は自国の資産の減少につながるので売ることもできず、買うこともできないジレンマがある。だが、買い進め米国が立て直さない限り、米国への輸出依存が高いため実体経済への影響を心配しているだろう。しかも日本は軍事力において米国傘下にある。
米国は赤字国家であるため、他国から資金調達できなければ破産することになる。
アイスランドが救済されなければ破綻する状況に追い込まれたのよりもひどい状況が想定される。アイスランドの金融国としての発展も不可解であった。人口30万人という日本の地方都市よりも少ない人口で漁業しか無いような国家である。その国家がGDPで日本をかるく凌駕していた。
やっていることはギャンブルだった。自国の金利を高くして他国から金を集め、レバレッジをかけてハイリスク・ハイリターン投資をしていたようだ。国内に高い金利で出しても借りないので、国民は超低金利の日本からサムライ債などを利用して借りていた。
問題は為替の修正が急激に入ったことだ。
その直後、ニュージーランド、オーストラリアなど高金利の国家の為替も急激に下げている。
円を借りて他国の金利で稼ぐ。為替の変動は無いことを前提にしていた円キャリートレードは逆に解消に向かっている。同時に米国から新興国への投資も解消され、ドルが他国通貨に比べ上昇し、円は更に上昇している。
中国企業は米国との取引が困難な状況が発生している。国際貿易においては船積時で決済するにしても銀行信用で行われるが、米国銀行の信用が無くなってしまったのだ。
昨年までは1ドル80円になると、ミスター円(榊原氏)が言っても、「アホか」位が多かったし、現に80円には到達していない。しかし今では1ドル50円位になるという人がいても、「もしかしたらそうなるかも」と感じる人が出てきているようだ。為替変動、株価やコモディティのボラティリティが高すぎて何が起こってもおかしくないようだ。
テレビで評論家の意見を聞いていても円高に対する評価が分かれている。円高は国力を表現している。購買力が増すので良いことだ。他方、製造業中心の日本は企業業績が悪化し不景気になるという意見だ。
どちらも合っているが説明が足りないのではないだろうか。円高により日本の購買力が上がる。これによって海外消費中心の一般消費者は恩恵を受ける。製造業は円高に対応しないといけない。もしくは円高でメリットがでる企業・産業へと転換しないといけない。輸出による外貨流入が減れば、いずれまた円安となる。要するに輸出型の製造業というのは根本的に発展途上国が有利ということだ。先進国で為替が高い国家では物を生産して売るということは困難になる。
電化製品、電子部品業界の株価の落ち込みが激しい。その重要な要因がコモデティ化(commodification)である。
そもそもコモデティとは何だろうか?「特徴のない商品・製品」のことである。
これまでコモデティと言えば、塩、砂糖、小麦、ガソリン、ティシュペーパーと言ったものを差した。
ところが、原材料、食糧は結構産地や品質によって特徴がある。
他方、電化製品、電子部品、デバイスはどうだろうか?
電化製品は会社のマーク以外の違いが無い製品が増えた。パソコンや携帯電話やテレビ。ロゴマークは有名ブランドでも、自社でつくらず海外のEMSで組立外注。製品の企画や調達までOEM、ODMに移行しつつある現状。これでは違いが無いのは当然だ。
電子部品はどうか。スイッチ、コネクタ、金型製品等多数あるが、ローテクであり製品の品質は欠品・不良の少なさである。製造技術よりも品質管理でしっかり不良をはじける会社が強い。製造技術は金型と装置で決まってしまうからだ。
デバイスも装置に依存されてしまう。例えば半導体メモリー。2GBが数百円にまで下落。メモリーの品質の違いは消費者にはわからないし、そもそも品質に違いがあるのだろうか。
こう考えると、これまでハイテクと考えられていた製品はローテク、コモデティ化してしまっている。
コモデティ化すると差別化戦略が取れず、単純な価格競争に陥り、他社との競争は完全なる規模と経済の理論に陥ってしまう。規模が大きいところ、キャッシュを持っているところが生き残る。多くが企業を持続すると赤字という状況だ。
先週開かれていたFPD Internationalでは、毎年新型テレビのコンセプト機が登場するのだが、今年は目新しさが感じられなかった。
2年前のキャノンのSEDテレビは立派なブースで行列まで出来たほどだが、その後特許問題と生産面の問題で未だに市場投入できていない。
そうこうしているうちにテレビは液晶テレビのデバイスがコモデティ化しコストが劇的に低減を続けコスト面ではとても対抗できなくなってしまった。
また、技術的にも薄型がトレンドとなり薄型で最も有力なのが有機ELテレビであり、こちらにも対抗できなくなってしまった。
キャノンは昨年有機EL製造装置メーカーのトッキを買収し、その後の状況を注視していたのだがキャノン自体が有機ELデバイス(パネル)を生産するようではなく、どうやらキャノン本業との関連は薄いようで何故買収したのか今は分からない段階だ。
さて、キャノンは増収増益を今世紀続けてきたが、今期は減収減益になる。これまで収益を支えてきたトナー等の消耗品で稼ぐビジネスモデルが問われるところだ。デジカメ、プリンタといった家庭用品もこれまでは製造が難しかったのがコモデティ化している。
テレビには頻繁に変える消耗品が無いけれども。SEDは登場することなく中止になるのだろうか。
小室哲哉の逮捕で衝撃的なのは、あれほど稼いだ人間が借金が引き金にこんな犯罪に手を染めてしまったことだ。
犯行当時、クレジットカードの支払いも滞るなど金に困り、借金は十数億円あったそうである。
90年代から年収で20億以上を稼いだ人間がここまでの借金地獄になるというところに恐ろしさを感じる。
プロ野球選手でも年棒数億稼いでいた人間が引退したらガソリンスタンドでバイトという例があったが、貯金と倹約という言葉をしっていたらこうはならなかったろう。
稼ぐ金より使う金が多かったら赤字で、借金につながるのだ。
当たり前だが、使う金は稼ぐ金の中から貯金を引いて、そこから使うべきである。
最初の頃はとても夢中になったワインの漫画。他にもワインの漫画はいろいろあるのだが、この漫画が違うのはワインの香りや味わいの表現が大袈裟なことだ。
ワインは香りにせよ味にせよ、プロは訳がわからないような表現を使う。わかりやすいのは果実(苺、カシス等)、煙草の香りといったものから、猫の小便や馬の汗とかまであるのだが、この漫画ではワインを嗅いだり、飲んだりすると別世界にワープするかのような表現である。
それが哀愁溢れる戦後の町だったり、森の中の湖畔だったり、演奏会だったり。
最初の方(1巻~3巻位まで)は面白い。しかし、主人公を始め登場人物の背景や性格の描写が甘く、深みが無いため感情移入できない。ワインに対する表現も飽きがくる。そしてストーリーである謎解き(父が残した財産をワインの謎を解いたものに相続するというもの)もパターンがわかり、つまらなくなる。
しかし、そのような先のことを考えても1巻は読んでみると、ワインに対する知識も得られるし、ワインを深く知ろうというきっかけになるかと思う。ハマればそのまま読み続けても良いのだし。
自分は最初の方は買って今でも読み返すが、あとは雑誌で読むのみ。特に韓国でこの漫画がブームになってからは、韓国人に迎合してかキムチに合うワインなどという話が結構長くてイラついた。一生懸命キムチに合うワインを探したかもしれないが、それでもキムチにワインは合わないだろ。
キムチのような辛い食べ物はやっぱりビールがマリアージュだ。
ジョージ・ソロスによる最新のバブル崩壊の理論とその後の世界経済の予測、そしてソロスの投資哲学について書かれた本である。興味深いのが2008年3月までサブプライムローン問題のあとのポジションと戦略について日記風に書いているところ。
まず最初に松藤 民輔という投資家が序文にある。松藤 民輔については以前NHKで見たが、米国で金鉱を買い発掘している元投資家だ。インタビューで金鉱発掘にビジネスモデルなんか無いといっていたところが興味深かった。単純に儲かるかどうかというよりシンプルな理論で動いているように思えた。
さて、松藤 民輔の書いていることはよくわからない。投資にソロスのような哲学が必要だとか、哲学、歴史が無いと相手にされないとか。ただ、読み進めるうちにわかった気がしたのは、一部の人間によって世界の金融市場は支配されているのではないかということである。
さて、ソロスの哲学もまたよくわからない。これはさまざまな書評を読んでもわからない人がいるようだ。再帰性という理論ですべて説明しており、バブルになって経済が膨らんでもやがてマイナスに暴落し、均衡点に達するという説明のようだが、それがどうもわかりずらいし、そのような理解で好いかもよくわからない。日々の裁定取引、スイング理論に近いのではないかと思った。
ソロスの過去の手法を自己分析しているのも非常に面白かった。イギリスのポンド空売りで1日で数千億円儲けたことやアジア通貨危機でもボロ儲けしたことは有名である。ただ、これも金融ビジネスに深く携わっているからこそ入る情報とソロスならではの独自の理論に基づいたかなりリスクを取った投資であったと感じた。最も自分であればソロスのような投資をするといかに多くの人に迷惑がかかるかを考えてしまうが、ソロスの投資哲学の中で倫理感はさほど感じられなかった。
ソロスも書いているように金融市場というのは米国に都合が良いようにできている。米国はドルを刷れば良いし、米国の利益が最大になるように動いていることについても言及されている。未開発国(債務国家)が損をする仕組みであるとはっきりと言及しており、資本主義世界において、公正な競争原理が無いことを問題ともしている。
他方、サブプライムローン問題以降は米国の株、ドルを空売りし、中国、インドといった新興国のポジションを増やしていることを言及している。これについては自分もソロスがこの本を書いていた昨年末から今年の春にかけては同じ気持ちであった。
ただし、ソロスが先に書いたように米国が引き起こした金融恐慌であるにもかかわらず米国の被害が相対的に少ない。中国、インド、そして新興国の通貨は悲惨な結果となっている。最もソロスはもっと長期的視点から言及しているだけにすぎないかもしれないが。
さて、3月までの日記風ではソロスは日々デイトレーダーのように売買し損失を出していることを公開している。リーマンブラザーズが過小評価されているので買ったなど。
自分なりに解釈すると、ソロスのすごさは手に入った情報を自己哲学に照らし合わせ、リスクを取って行動することである。ソロスの日々の投資の日記を見て、ただのデイトレーダーとあまり変わらないような姿も見れた気がして、自分の行動に自信を持とうと思った。
これまでのマクロ経済学の理論からはじき出す為替で考えると、日本は1ドル50円以上の大幅な円高になる。
マクロ経済学上の為替理論として、購買力平価 と金利平価理論 があるわけだが、数式を用いずに説明すると以下の2点になる。
・デフレが続くと円高になる
・低金利によって円高になる
このどちらも日本の経済環境は満たしていながら、米ドルとは1ドルあたり115円プラスマイナス10円で長い間落ち着いていた。
この存在の裏にミセス・ワタナベがいた。これは日本の個人投資家で取り分けファンダメンタルズに詳しくない主婦層の総称なのだが、上記の経済学の理論に従わずに高いレバレッジをかけてFXによって円売りをしているのだが、レバレッジの高さと参加者が多いことから大きく円売りに動いていた。
FXの参加者でドル売りはいない。アイスランドなど金利の高い国家でも住宅ローンを円で組んでいたことも経済学理論と反対の結果に繋がった。
その間アービトレイジを取りに行ったプロの投資家はことごとくミセス・ワタナベに敗退した。ミセス・ワタナベは円高が進んでもポジションを解消しないどころか、さらに円売りドル買いを進めるのだ。為替レートは関係なく、金利差(スワップ・ポイント)の大きさしか見ていないようである。
さて、そのようにファンダメンタルズとは違う一般投資家のレバレッジを掛けた大軍による介入は以下の理論に基づいていると思われる。
・金利差が大きくなると円を売る
・円高になると円を売る
この経済学理論と矛盾するが、均衡点に円は落ち着くというのが新しい為替予想の理論になるのであろう。