›11 12, 2008

今は円高なのか?

Category: 日々雑感 / 0 Comments: Post / View

円高かどうかを見るに当たり、何を基準に見るかが問題である。
世界の全ての通貨と比較しなければならない。

ここ数カ月の為替変動ではでは、日本円が強くなっているが、ドルが弱くなっているわけでもない。ドルも他の通貨と比べると高いのだ。ユーロ、新興国通貨はドルに対して弱くなっている。

このようにドルと比べるだけでなく、全体での円を比べるのが実行円レートとなる。
さて、その次に名目実効円レートと実質実効円レートで比べる必要がある。

円の価値は名目実効レートで見ると、この10年間でほとんど変化が無いことがわかる。
だが、インフレ(対物価)で見る実質実効円レートで見ると、円はこの10年間安くなっている。

日本銀行のHPで見ることができる。
http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/exrate.htm

この10年間は実質的に円安が進んだ。これによって日本の製造業は大きな利益を得たのである。この10年間は日本の製造業を中心とした経営努力により経済が回復したかの印象が大きかったが、90年代半ばと比べると、現在のほうが同じ為替でも利益がはるかに出る仕組みになっているのである。

それは、海外が物価が相対的に高くなり、国内物価が下がったからである。

マスコミでは円高が進めば不況になるという論調が多くあるが、それは間違いである。
外務省の「外国貿易概況」によると、外貨建て輸出よりも外貨建て輸入が大きくなっている。
全体で日本は輸出が大きくても、為替を外貨で立てているのは輸入が大きいのであるから、円高では全体的に得をする。
貿易以外で考えても円の強さは国の経済の強さと言っても良いのであるから、円が高いのが望ましい。

かつては、日本は全てが高いと言われていた時代から、今は先進国の中では日本は安い国になってしまったのだ。

何故、円高では不況と言われるか?それは声が大きい人が円高で困るからというだけで、日本人全員の声を反映していないからだと思われる。
つまり、日本の大企業の多くが製造業で海外に輸出している。例えば、キヤノン、トヨタ、ソニーである。上場企業の構成も偏っているので、日本の上場企業の時価総額も影響され、円高で時価総額が下がり、不況になるというイメージがある点もあげられる。
しかし、円高で一般庶民は得をする。食料品をはじめ、石油、日用品の多くも海外からの輸入品でありその恩恵を受ける。

しかし、ひとりひとりの声は小さい。大企業の輸出企業は経団連を通じたロビー活動も行うし、声が大きいということとなんだろうと思う。

さて、先の実質実効円レートで見ると、まだまだ日本の円は安い。しかしそれがどこまで是正されるかわからない。金利が安く、円キャリートレードも存在する。しかし、海外通貨の金利が安くなることと、海外の物価が相対的に日本よりも安いことを考えると、円安に進む要因は少ないと思われる。

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