›11 18, 2008

エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?

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エンロンのまやかしの成長と崩壊までを描いた作品。元CEOジェフ・スキリングの映像がふんだんに使われており、また当時の社員、ジャーナリストのインタビューもあり虚構のビジネスモデルがわかるだけでなく、ジェフ・スキリングというカリスマに従業員も株主も銀行もメディアも踊らされたということが良く分かり非常に参考になる。

ジェフ・スキリング自身のキャラクターは非常に魅力的であり、カリスマ性も高いと思った。
従業員も憧れ、ジェフ・スキリングの話に株主も魅了されている姿がよく表現されている。ジェフ・スキリングを批判する者はバカではないかとさえ当時は思われたのではないだろうか。

歴史上は悪党で終わった人物も多々あるが、きっとジェフ・スキリングのような魅力に惑わされ支持を集めたのではないかと思う。

ジェフ・スキリングの魅力は、まず卓越したプレゼンテーション能力と話し方にある。エンロンのビジネスモデルは誰も理解できなかったというか存在しなかったのだが、あたかもエンロンが金融工学を駆使して電力卸でしっかりと利益を出しているかのような実体の無いものをすばらしいものだと思わせるような詐欺師的能力。

話も面白い。カリフォルニア州を破たんさせるのではないかというほど電力価格を操作してカリフォルニアからボッタくったのだが、あたかも電力販売規制をしているカリフォルニアが悪いかのように世論をコントロールしてしまう話術。
ジェフ・スキリングが公の場ではこう話していた。
「タイタニックは沈む時に電気がついていたが、カリフォルニアは電気がつかないで沈んでいく」
会場は大爆笑だ。
こんな彼の話術がたくさん映像として残っている。

ジェフ・スキリングの過激さを求める性格も、上昇志向が強く成功を夢見る者を魅了する。
エンロンの役員が過酷な冒険をする映像が紹介されている。砂漠の中をバイクで永遠と何日も走る。大けがをする者も出るが、冒険心、探究心、危険な領域へあえて挑戦する姿勢というのは起業家に必要なことであるという信念からだ。

エンロンの社員も非常に過酷な競争に置かれ、多くが退職させられる。

ジェフ・スキリングは結局犯罪者なのだが、そのクレイジーで非常識な行動はやっぱり魅了させられた。


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