›11 27, 2008

金融恐慌で失われたカネはどこへ消えたのか?

Category: 日々雑感 / 0 Comments: Post / View

世界中の株式市場の時価総額の大暴落、ユーロ、新興国通貨の下落、コモデティ価格の下落と想像を絶するカネがこの1年で消えてしまった。この金はどこにいったのか?

2002年以降続いた世界規模の経済成長と過剰流動性(カネ余り)からひっくり返したような、バブル崩壊、銀行が貸し渋りまでするような状況である。

カネが忽然と消えたわけでは無い。信用乗数で膨れ上がった過剰流動性が収縮した結果である。

そもそもどのようにしてカネが膨れ上がったのか?
サブプライムローンで家を買った人達が中心となる。彼らは収入が低いにもかかわらず家の価値が上昇することを前提に金を借り、クレジットカードで消費をした。自己資本が著しく低く、有利子負債でレバレッジをかけて消費をしていたということだ。
同様にアメリカ国民の大多数がレバレッジをかけて消費と投資をしていた。消費が企業業績の向上につながり株価が上昇、融資の金利の利回りよりも株式投資の方が利回りが高いため借金を返済せずにその金を投資に向けた。そのように集まる金が株価を上げていった。

個人と同様に企業もまた高いレバレッジで投資を行い、銀行は担保を取らず価格上昇を前提にサブプライムローンの層にも金を貸した。ローンを証券化したCDOやCDFの算定も好業績の過去履歴が前提としてつくられ、格付もいい加減で最高クラスがつけられていた。

そのようなことから借りる利回りより投資に向けた方が遥かに高い利回りが出るため、その差(スプレッド)を拡大させるためにレバレッジ(融資比率)が高くなったということだ。

さて、米国自体は貿易赤字国家である。企業に例えると、自国で利益を上げることができないということであるが、運転資金さえあれば売上は上昇することはでき、潰れることは無いというネットベンチャーと同じような仕組み。
バランスシートで見ると、ひたすら資金調達のみ。増資同様にドルを印刷し、負債調達としては米国債を日本・中国・中東諸国に買わせ調達し、赤字を集めた資金で賄っていたというのが真の姿だ。

どこへカネは消えたのか?
各種ローンで浪費していた消費者が支払えなくなった。彼らは自己破産するか、資産を現金化してローン返済に回る。企業の業績が悪化しはじめ株式投資利回りが銀行借入・ローン利回りより悪化しはじめたため、売却し現金化し返済へ回る。レバレッジが高いほど、マイナスが大きい。
企業も同様に本業のビジネス以外での金融利回りが低下し始めたために現金化し、ローン返済へ回す。
返済しきれない人、企業が増加、金貸し側は不良債権が積み重なり、金利収入が低下。貸し渋りへと進むこととなる。

米国自体も集めていた金は国民のために使うことはできず、金融機関の救済へと大量に資金を投下することとなる。

このようにしてカネが消えていったということになる。使ったのは、利益を先食いしたサブプライムローンを組むような低所得者、そして多くの収入以上の浪費をした米国市民が使ってしまったということになる。企業も同様である。
莫大な将来の収益を米国市民は一般には使ってしまったのが大きいのではないかと思う。

欧州でも同様のことが起こっていた。

ジョージ・ソロスは「ドル、米国の株式は下落する。新興国は影響が小さい」と書籍「ソロスは警告する」に書いたことを大きな誤りだったと書いた。(日経ビジネス)

新興国株式への投資は、実際は外国人投資家のポートフォリオ上のリスクマネーとして投資されておりそれが新興国の時価総額を大きくしていたのではないかと思う。そしてポートフォリオから組み外すのは真っ先に高リスク商品である。

その結果が新興国株式、通貨の米国以上の下落なんではないかと思う。
ファンダメンタルズでは新興国はそれでも経済成長を続ける。先進国は経済成長は止まり不況入りしている。

現在の新興国のほうが大きな被害を受けている状況は、とばっちりであり、やがて米国のような貿易赤字国、経済成長が止まった国の方が被害が大きくなるのではないかと思うのだが。

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