ジム・ロジャーズによる投資による中国攻略法の本である。ジム・ロジャーズというと最近では新聞などでもたまにインタビューが載っているが、中国に対して非常に楽観的なポジションを取っていることで有名である。本人も米国から中国に住まいを移し、娘には中国語の教育を徹底している。これからは中国語が必須であるとも言っている。
そんなことから、この「中国の時代」に関しては多くの書評で中国ひいきだと書かれていたのだが、読んでみると自分はそうは感じなかった。
むしろ、この本は中国の各企業、各市場、文化を徹底して洗い出したデータブックであると感じた。ところどころにあるジム・ロジャーズの主張も決して楽観的なだけではない。不動産、株のバブルについても言及している。
読者はこの本のデータである過去のトラッキングレコード(GDPの成長率、車の普及率など)があまりにも先進国と比べて優れているため、ジムが中国びいきだと感じたのかもしれない。
ジム・ロジャーズのこれまでの主張は最近になって非常に説得力を感じる。「商品の時代」でもあるように、コモディティの重要性は長期的には上昇するだろうし、金(ゴールド)についても注目している。逆に米国経済が復活するのは非常に怪しいと思う。
自分も米国経済が悪化するのは昨年から予期していたが、想定外であったのは、今回の金融恐慌の震源地である米国の株式市場よりも日本や新興国のほうが遥かに悪化していることである。単なるデカップリング理論が成り立たないことによる新興国への影響というのでは説明がつかず、各国の株式市場の厚さ(参加プレイヤー数、売買代金、時価総額)といったことの影響がここまで大きいのかということの驚きである。同時に市場は効率的でも無く、正常に機能さえもしないということが十分にわかった。また、通貨もドルが悪化するよりも、欧州やその他先進国、新興国の方が価値下落が激しい。円高というはドルも実は高いので相当円が強いのだと感じる。
さて、この本を読んでみて、日本や先進国の大企業には無い中国個別企業の急成長は十分にあり得ると思うし、中国市場の可能性も感じられた。同時にこれから中国を襲う不動産バブル、そして政治リスクにも十分な注意を払いながら、自分も新しいポートフォリオを構築して参戦しようかと思う。
このブログでも怪しい企業、魑魅魍魎の輩に乗っ取られている企業をちょこちょことお伝えしているが、最近はまた怪しい動きが活発化している。
何しろ新興市場の時価総額が低いので、経営者は資金繰りも厳しいし、自分の資産(持ち株)が急激な減少となっているので、外部資本で企業を存続させたい、もしくは売却して現金を作りたいという動きがあり、上場企業を乗っ取りたい、一般株主からぼったくりたいと思っているような連中と利害が一致していているような企業もあるのではと思われる。
さて、景気が悪い中でも業界平均をはるかに上回る業績であったプロデュースの循環取引が少しづつ情報が出てきているが、これは監査法人も粉飾決済にグルであったという報道である。
こうなるともう一般投資家は見抜けないし、騙されたと言っても良いだろう。
まだまだ循環取引に協力した企業も公表されていないので、早く当局が公開してくらないか待ち遠しいところである。ちなみに、上場前から取引先兼株主の大企業があり無関係なのか大有りなのか非常に気になる。
最近ではまた、モックの大量の希薄化を伴う増資、新株予約権。割当先企業の経営成績を見てびっくりでした。
後は、何故まだ存続できるのか不思議でしょうがない企業もたくさん存在する。存在するためには株主なり、銀行なり、子会社なり、協力会社なりを犠牲にする必要があるかと思う。要は運転資金さえあれば企業は存続できる。そのためにはどうやって金を集めるか、そこに注目している。
米国の投資銀行、金融機関が長期間に渡り多額の損失を計上しているが、日本の金融機関で何故まだ存在できているのか不思議なところも多い。
単なる会計基準の違いで飛ばしているのがバランスシートに反映されないのか、子会社を犠牲にして親会社は傷つかないようにしているのか。
2000年以降に急激に成長したような新興の金融系、不動産系、それからサラ金関係に注目しているところです。
LTVとはLoan To Valueのことで、総資産有利子負債比率のことである。LはLeverage(レバレッジ)かと思っていた(意味は同じだから)。
収益の成長が期待できる成長局面では、有利子の比率を上げレバレッジを効かせるのが常だが、現在のような不景気においてはREITで潰れるところも出てくるほどなので、LTV値が低くして堅実な経営をしているところが強い。
現にLTVが低いところが、調達金利が低いようだ。つまり有利子負債でレバレッジをかけているところほど今のような経済の悪い環境では信用が無くなる。損失はレバレッジの分だけ膨らむのだから。
さて、REITでも倒産企業が出ており、不動産関連においては流動化、デベロッパーと多数の倒産企業が出ており、その影響は不動産関連、建築関連、そして貸し手の金融機関へと広がった。
日本のメガバンクは比較的体力があり、また日本のバブル崩壊で大きな痛手を被ったため、今回のサブプライムローン問題の影響は浅いというのは理解できる。ただ、ファンドに運営されている新しい銀行や買収された銀行、それから比較的歴史の浅い新興金融企業、もともと体力の無い金融機関というのはこの数年間は米国の投資銀行のようなハイリスク案件に積極的に手を出している。本来ならデューデリジェンスの段階で通らないような案件も、審査が甘かったという話は多いようだ。
日本の金融機関でのサブプライム及びその影響における損失というのは、実は今後出てくるのではないかと思う。今はまだ生き延びているところも、バランスシートがどれだけ毀損されているかは、日本の会計基準ではまだ十分積極的に出されてはいない状況なのでは無いかと思う。
傷が浅かった日本と言われているが、まだ傷が見えていないだけという金融機関も多いのではなかろうか。
以前から注目している東証のプロ向け新興新市場について、創設試案が発表されている。
新市場はロンドンのAIMの日本版として、AIMの特徴であるNomad制度などが引き継がれ、厳しくなった日本の新興市場への上場への敷居を低くするのが目的なのかと思う。
特徴として、
・Nomadという主幹事証券会社に該当するアドバイザーが必要。
・会計基準は日本基準、国際会計基準、米国基準が認められる。
・上場前の公認会計士の監査は直前期のみ。
・内部統制報告書(J-Sox)が不要。
・決算開示に四半期報告は任意。
・業績予想の開示は取引所は要請しない。
こうしてみると、日本の新興市場ができた頃の基準、つまり監査期間が短い、J-Sox不要、開示も限定という甘い基準が公開を目指すベンチャー企業にとって魅力だと思う。現状、投資家保護のために厳しくなった基準、それに付随して莫大な費用がかかるようになった監査費用、内部人員費用のために上場を断念した企業が多い。そしてそれが新興市場の時価総額低迷へと悪い循環となっている。
更に追い打ちをかけるように、サブプライムローンを発端とした米国金融不安から実体経済への
影響も出ており、新興市場の業績不振が相次ぎ、不動産業界では資金繰りがつかない黒字倒産も出ている。時価総額が5億円を割っている企業も多くあり、上場廃止基準に引っかかってくるもののこのような状況では投資家も買うことができない状況だ。
J-AIMの企業の公開の敷居の低さは魅力ではあるであろうが、市場の参加して投資をするプレイヤーが出てくるのか。プロ向けとしているが、新興市場を買わないプロがさらに基準の甘い新市場の株を買うのかという疑問もある。
前回は、自分の勝手な想像ではあるが、「多品種少量生産は終わる。電子機器にボタンやスイッチは無くなる」と極論の予想を立てた。
iPod、iPhoneが象徴的な姿をしているのだが、アナログ的要素が極力排除されている。ボタンやスイッチは極力使わず、タッチパネルの中にはすごい機能がたくさん入っている。そして商品ラインナップがほぼ1種類である。
これまでのメーカーが複雑な機構、ボタン・スイッチが不必要なものまで付いていて、似たような製品が多品種にラインナップされている、という製品の投入だったが、そのような時代は終わりつつあるのではないかということだ。
さて、前回は携帯電話の話であったが、次はパソコン。こちらもすごいことになっている。パソコンには分類されないほどの安さを誇るEee PCの出現である。
Eee PCは台湾ASUSが販売するミニノートパソコンであるが、このサイズが今まで無かった市場として急成長している。つまり製品はシンプルで、安い。バリエーションを抑えて、その分開発費を抑えて低コストを実現している。
90年代の終わりから、自分もさんざん価値観の多様化と言ってきたし、製品は多品種少量生産が当たり前になった。だが、当たり前だが多品種少量生産はコスト高になる。その品種ごとに生産ラインが必要であり、調達もその品種ごとに必要である。
だが、量産は生産ラインを大量生産向けに自動化設備をつくるような設備投資さえもできるし、調達・生産・販売と良いのだ。
何故今頃になって大量生産の時代への回帰かと言うと、1つはデジタル化で差別化は外部機構では無く、内部に移ったこと、不必要な機能が増えてうんざりしてシンプル化への回帰が起こっていること、不景気で安くなければ消費者は買わないことなんかがあげられるのではないか。
Eee PCのように、パソコンは5万円位で十分ではないか。安いが2年位前の20万円位のパソコンのスペック以上だと思うが。あと、ノートパソコンでも不要な機能がどんどん増えたが、実はほとんど使われなかったのではないか。
最近はフェリカ(お財布携帯のチップ)とかまでついていたり、ワンセグが付いていたりするが、必要なのか?dvdは必要なのか?メモリーがこれだけ安くなっているので、これからはパソコンソフトも映像もメモリーになるのではないかと思う。いやオンラインが当たり前になるかと思う。
そのようなことから、他の電子機器においても多品種・少量生産は終わりを告げ、シンプルだが商品ライフサイクルは短い、ソフトは次から次に進化するという時代が到来するのではないかと思う。
日本でバブル崩壊したときには米国の金融理論でその原因を説明されたものである。不動産におけるバブルは明確に金融理論で説明された。日本においては、隣の不動産の価格に合わせて価格が決められた。また市場の需給関係で価格が決められた。
それに対する金融理論での説明は、Disconted Cash Flowであり、将来に渡って得られる賃貸料を現在価格に割り引くのが、理論価格ということであった。
今回サブプライムローン問題を発端とする金融の崩壊は不動産価格とそれに対する貸付が原因であるが、今考えなおすと米国の金融理論のこじ付けによってバブルが形成されたと思う。
様々なメディアや専門家がバブルの原因を報じてはいるが、根本的な問題として2つ重要なことがある。
まずは、利益と損失の非対称性がある。不動産の価格上昇が担保になったりするのも結局は同じ問題があるのかとは思うが、リターンは限りなく大きく、リスクは限られている。
例えば、投資銀行における社員においても、リターンに対しては成果報酬として一定のパーセンテージを報酬として受けることができるが、リスクは会社を解雇になることだけで、損失を被っても個人としては何の損失も受けない。
個人においてもこれは同様のことで、リターンは限りなく大きいもののリスクは破産(日本では自己破産)である。企業においても同様である。これが、損失を被った場合、社員、個人、企業が将来に渡って稼ぐ利益まで回収させられたり、破産が認められず連帯保証人に回収が及んだり、損失は死んだり内臓を売ってまで返さないといけない社会であれば、バブルにはならない。
もうひとつはトラッキングレコード(過去の利益・損失のデータ)を重要視してしまうことが問題だと思う。投資信託では騰落率は必ずデータとして重要視されるし、株を買うときにチャートを見る。
だが、CDSの仕組みで過去のデータから格付けが行われたが、過去のデータは実は何の価値も無いことがわかったのだと思う。
上海に数日間滞在した。そこで感じたのは消費は日本に比べて活発ではあるが、やはり以前のような毎回来る度に発展していたりするような感じはしなくなってしまっていた。
町並みは完全に世界の先進国の都市と同じになりつつあり、マクドナルド、サイゼリア、吉野家、IKEA、カルフールと食生活も買い物も困らない。上海の株価は米国を遙かに超える下落だが、不動産投資は相変わらずのようで、上海からちょっと離れた郊外にも超高級マンション、住宅がどんどんと建設されていた。ちなみに、それらの邸宅は外見は欧州風(とりわけスペイン風)であり、もう中国らしさなんて感じなかった。邸宅にはどれ位が実際に住むのであろうか?上海市内の住宅は夜になっても暗い建物が多いが、実際に人が住むのであれば、車は売れ、家電も売れるはずである。実際には車の販売台数は減少している。
ほんの今年の前半まではどこの工場(特に電子機器類)もフル生産であったが、急に稼働率は減少している。携帯電話などの販売台数の減少だけが問題では無いようだ。
実はiPhoneが画期的であるのは、これまでの携帯電話と機能が違うだけでは無いということが裾野の部品メーカーを訪問してようやく理解できた。
iPhoneは機能は普通の携帯電話よりも遥かに豊富だが、機構は逆に遥かにシンプルなのだ。
通常の携帯電話は、実は非常に複雑な機構でできてる。2つに折りたためるが、その折りたたみの機構だけでも力加減が閉まる寸前と開ける寸前は不要であることがわかる。
2つに折りたため、さらにテレビを見るように曲げることができる機構はつなぎの中に、情報と電気を伝送するための細いケーブルがある。ボタンやスイッチも多く使用されている。
それが、iPhoneではほぼ皆無になってしまっていることに気付いてはっとさせられた。もしかたらこれが家電においても起こりうるのでは無いかと。今のテレビやエアコンなどの家電は本体にもリモコンにもスイッチやボタンがある。リモコンは非常に複雑だ。
これもiPhoneのようにボタンもスイッチも無く、タッチパネルだけにならないのか。
アナログからデジタルへのイノベーション。日系製造業の多くは部品メーカー(それも単機能の電子部品だ)で、中国には労働集約作業を求めて工場をつくって展開した。電子機器は複雑なアナログ電子部品のかたまりになり、多品種、少量生産、短期製造というのが当たり前になっていった。
しかし、もしかしたらこれからは違うのではないかと思う。いくつかの決められたサイズのタッチパネルに最終製品は集約され、GPSや加速度センサー、ソフト面も海外携帯電話メーカーが採用する台湾製のデバイスのように、多品種、少量から、小品種、大量生産、アナログは終わりデジタルでほんのわずかな最終利用用途へのソフトの変更だけに変わるのではないか。
上海を探索していると、iPhoneの偽物に出くわす。いくつか種類もあるのかもしれない。アップルではなくて良く見たらオレンジのものもあった。使わせてもらったが、機能は問題が無いようである。加速度センサーもタッチパネルも、中に入っている音楽、動画のソフトも問題無く動いた。
アナログからデジタルへのイノベーションとは、同時に誰でも調達もでき、つくることもできるということでもあるようだ。
アップルの創業者スティーブ・ジョブスの偉大な業績について書かれた書物は多い。読むたびに、その洞察力と神秘的な人間性に惹かれた。だが、神秘めいた点や偉大さばかりが強調されているとも感じていた。
無謀な売り込みで大勝利した逸話や、インドにバックパッカーとして放浪した逸話とか色々あるが、この本では大胆なだけでなく、横柄であったり、時には狡猾な交渉場面の紹介があり、勝利のためには手段を選ばない姿や、マスコミを利用した容赦ない攻撃の姿があって、これまで知らなかったスティーブ・ジョブスの一面が見れた。
勝利のためには、キレイ事だけではいかない。突出したアイデアだけで成功できるわけではない。泥臭い地道な努力、執着心というものが大切というのはよくわかっているはずだ。
ビル・ゲイツに関しても様々な悪どいビジネス手法、政治力を徹底して利用したことが紹介されている書物が売れた。
スティーブ・ジョブスの場合は、決して敵には回したくないような恐ろしさを感じたが、同時に成功者、世界を変える人間というのはこういうものなのだという偉大さにますます惚れた。
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このところ上場企業を含め大型倒産が増加している。その多くが民事再生法の申請による倒産だ。先日では超大型倒産としてリーマンブラザーズがあり、上場企業では不動産関連が目立ち、じわりじわりと他分野の事業会社が倒産し始めている。
民事再生手続きをするのは、基本的には債務カットをすれば事業が存続できることが前提である。多くが運転資金が賄えないためであったり、利息の負担が大きくて会社が存続できないための申請となる。資産はあるが、営業赤字つまり存続すればするだけ資産が減ってしまうような存続価値の無い会社では民事再生の対象とはならない。破産したほうが債権者にとって得だからだ。
民事再生法は、再建型の倒産手続きであり、会社更生法もあるが違いとして、債務者自身がそのまま財産管理や事業を続けながら事業などの再建を行なえることが大きい。
「担保権の実行制限」という制約があるため、工場や製品が差し押さえられることなく再建活動を行いやすい。
□スポンサー
自力再建が難しい場合、スポンサーに資金援助と支援を受け再建を図る。100%減資してスポンサーが株主となり経営権を委譲するケースがある。また、営業の一部または全部を受け皿会社に移管した上で清算することもある。
□プレパッケージ型再建
民事再生法を申し立てる以前より、スポンサーを定めておく手法をプレパッケージ型の再建という。債務者がスポンサーへ営業譲渡し、債務者は譲渡代金をもって債権者へ一括して再生債権の弁済を行うケースがある。債権者は短期間に再生債権の弁済が受けられるメリットがある。
□民事再生法の手続き
会社の所在地の地方裁判所に再生手続き開始の申し立てを行う。申立て後すぐに保全処分の発令が出されるため、強制執行や差し押さえなど、債権者が個別に債権回収するようなことが禁止される。
同時にこれは債務者も一部の債権者だけに債務弁済することはできなくなる。
民事再生手続き開始が決定したら、裁判所が監督委員(一般的には弁護士)を選任し、資産状況(不動産の処分、金銭の借入れなど財務内容に影響を与えそうな行為)の監督が行われる。
債務者は債権者に連絡をして債権説明会を開き、それまでの経過報告や今後の協力要請を行う。
□簡易再生
届け出された再生再建の評価額5分の3以上を持つ債権者の同意があれば、債権の調査・確定を省いて再生計画案決議の債権者集会の開催決定ができる。
□同意再生
全ての債権者の同意があれば、債権の調査・確定、再生計画案決議を省いて再生計画の認可ができる。
再生計画案は債権者集会の出席者の多数決で同意が必要である。同意後、裁判所でも確認された後に認可される。そして認可された再生計画案に従って事業を行ないつつ、債務の弁済を進めていく。