›7 25, 2009

SFCG元社長の大島健伸が健在らしい

Posted by skillstorage at 20:28 / Category: 日々雑感 / 0 Comments

破たんして個人でも自己破産して、もういい加減人生潮時だろうと思っていた大島健伸が健在らしい。金貸しでのし上がってきた男の迫力というものを感じる。

権力を今でも振るっているのが、長男が社長をしているMAGネットHDだ。ちなみに長男の大島嘉仁も大島健伸と同じ慶応大学を卒業し同じく三井物産に入り、その後リーマンブラザーズの後、SFCG系列に入っている。

SFCG破たんでは資産隠や違法取り立てなど様々な犯罪行為でてっきり雲隠れしているかと思ったら積極営業なのでさすがに仰天した。記事を見ていこう。

破綻(はたん)した商工ローン「SFCG」(旧商工ファンド)系列だった業界最大手の家賃保証会社が、賃貸アパートやマンションの滞納家賃を回収するため、全国の支店を通じて家賃の支払いが遅れた入居者らに生活保護を申請させていたことがわかった。生活保護費で過去の債務を返すことは制度上認められておらず、厚生労働省は「生活保護制度を悪用する行為だ」と指摘している。
(中略)
生活保護の申請は6月ごろから、SFCG元社長の大島健伸氏の指示で組織的に行われていたとみられる。
(中略)
MAG社はSFCGの系列企業だったが、同社が2月に破綻する直前、グループを離れた。しかし、MAG社関係者によると、系列離脱後も役員でない大島氏がMAG社の会議に出て、生活保護を申請させ債権を回収するよう指示していたという。
http://www.asahi.com/national/update/0723/TKY200907220489.html


ターゲットは低所得者。中小事業者を相手に急成長した商工ローン「SFCG」の経営戦略が重なる。大島氏は自ら創業したSFCGが金融不況で破綻、個人としても破産開始決定を受けた。表向き経営の一線から退場させられたはずなのに、実際には親族らを通じてMAG社などに強い影響力を維持し続けている。

 6月初旬からは、朝の電話会議に出席し、全国の社員らに指示を出すようになった。

 業績の悪い支店に「閉店しろ。話にならん。おれは、お前らのためにまた破産させられるわけだ」。突然の人事異動を命じることも。「駄目なら配(置)転(換)する。いらないよ」。「国庫の援助でもうけようじゃないか。助成金を徹底的に調べろ」とも指示していた。MAG社関係者は「大島元社長が指示する回収ノルマはかなり厳しい。滞納者はかなりのしわ寄せを受けている」と明かす。
朝日新聞 朝刊 2009年07月23日

サラ金、金貸しという仕事で大成した男たちをかつて溝口敦が取材して本にしているが迫力があった。誰もが貧困や差別など劣等感を克服するためにとてつもない人格が形成され努力してのし上がってきたことがわかる。



›7 21, 2009

内側から見た富士通「成果主義」の崩壊

Posted by skillstorage at 21:39 / Category: HR(人事) / 0 Comments

富士通の元人事部の城氏による富士通衰退を報告した衝撃の書だった。成果主義が日本の雇用関係に合わないことから、強引に推し進めた結果内部から崩壊が始まり、やがて電機業界へと伝染していった経緯がわかる。

しかし、それにしても電機業界の衰退は酷いと思う。既に死に体の巨大総合電機メーカーが10年以上も改革無しにそもまま延命している。

富士通もかつては世界を代表する企業であったが、今や落ちぶれまくっている。そして世界主義を取り入れたことにより、無理が生じて工場で自殺者が出るわ、優秀な社員から同業他社に転職して中途採用は下請けや大卒以下レベルしか入ってこないなどさんざんな内容が綴られている。

就職ランキングで少しでも順位を上げるため、採用外のレベルの低い大学にまで会社説明会を開くありさまである。

本業ではさっぱり利益が出ないため、必殺技は子会社の株売却だ。富士通は優良企業ファナックの親会社にあたる。

読むと確かに雇用の問題が衰退している側面はある。年功序列は規模拡大と収益拡大が前提の仕組みだ。しかし、それ以上に電機業界衰退の原因があると思う。グローバル化とメカトロ(電気と機械の融合技術)からデジタルへの移行、リストラ不足などだ。

雇用の問題は電機業界以外でも当てはまる。これまで人切りをしてこなかったトヨタ、バブル期の大量採用を抱えたまま規模が拡大していない業界、例えば大手総合商社、広告、都市銀行、生保、規制で守られているテレビ局といった突出して賃金が高い企業も対応を迫られるだろう。

電機業界にある富士通のライバルNECや世界的ブランドだが低迷しているソニー、日立製作所、東芝、パナソニックは迅速な対応が必要なので見物だ。

›7 20, 2009

キーエンスが日立の時価総額を上回った

Posted by skillstorage at 12:26 / Category: イノベーション / 0 Comments

10兆円の売上高を誇る日立製作所がたかだか2000億円にも満たない売上高のキーエンスに時価総額が抜かれてしまったのはある意味象徴的でき事であった。

キーエンスはほとんど一般消費者は直接買うことは無い製品をつくっている。具体的には製造業のものづくりの自動化を支援する製品(FA:Factory Automationと呼ばれる部類)をつくっている会社だ。

電機業界が過去10年においてトータルで投下資本に対して利益が上げられなかったのに対して何故、キーエンスはとてつもなく高い利益率を毎年上げることができるのか。

まず、キーエンスの売上高の比率は圧倒的に日本国内が多いことが挙げられる。(ちなみにキーエンスはHPでほとんどIRデータを公開していない(非上場企業並みだ)ので、有価証券報告書のセグメント情報などを参照)

日本国内において、まず生産設備の部品や製品をつくっている大企業は比較的高収益である。これは日本国内の製造会社が設備として日本製しかほとんど採用しないためである。
そして、キーエンスの製品群はFAにおいてもかなり寡占化されておりセンサー、画像センサー(画像検査装置)、レーザーマーカーといった製品は中国などの安い製品は日本ではほとんど採用されず、国内メーカーも数が多くない。センサー、シーケンサーのみならず画像センサー、レーザーマーカー、マイクロスコープといった周辺分野を攻略しようとするのは他国メーカーが参入できないため、営業上の強みを製品の多角化で拡大させようとする日本独特の環境である。

FA分野でも海外メーカは画像検査もレーザーマーカーも専門メーカーが開発しているが、では事情が違う。キーエンス以外でもパナソニックの子会社のSUNXも同じ形態でレーザーを扱っており、オムロンも三菱も幅広い製品を扱っている。通常のメーカーであれば専業でなければ研究開発も製品開発も十分に行えないのを専門メーカーからのOEMや委託開発生産に頼り、ビジネス上の強みを営業網羅力に頼る構図になりつつある。

日本の電機業界は低収益を克服するために高品質製品を作る努力をしたため、ますます日本製FAが採用された事情がある。海外製品はそもそも品質に問題があったり、何よりも生産設備においては24時間体制のサポートが重要なためやはり国内メーカーが採用される。今や日本の工場は生産を止めることができないほど合理化された中でも利益を上げられないのだ。

他方、消費者に最も近いセットメーカーである電機各社はグローバルに他国の企業と熾烈な競争を強いられているのである。さらに国内電機メーカーだけでも多数存在しており国内の競争でさえ熾烈である。

ようするに現状はキーエンスと日立では戦っている土俵が違っている。

さて、電機各社は今後も厳しい状況が続くと何度も指摘している。生産においては垂直統合から水平分散に変わり、コストを大幅に下げないといけない。国内にもメーカー数が多すぎる。三洋とパイオニアが買収されたり、TVから撤退ぐらいでは済まない。総合電機も競争力のある専門分野に絞らないといけない。三洋が電池に絞って良くなったように。

さて、そのような変化はあまり見られないのと、さらに電機業界が弱くなると必然的にキーエンスの属するFA分野も国内では市場が小さくなってしまうのではないか。

電機も自動車も国内の市場が小さく、人件費も高いため海外での工場化は避けられない。そうしなければ海外企業と競争できない。

さて、海外でキーエンスのような日系FAメーカーの競争力はどうだろうか?例えば成長がもっとも期待されるのは中国である。中国は世界の工場になっているだけでなく、これから人件費が上昇するためこれまでのような労働集約型(ロボットを使わず人力でものをつくる)から自動化は進んでいくだろう。

多軸ロボット分野は日本が強いだろう。高度な製品をつくるためには高度な工作機械やベアリングも日本の品質は高い。しかし、生産設備において低品質なものをつくるには高品質なFAは必要ないというそもそもの問題があるのと、キーエンスの高収益の源泉のセンサー類は高度技術とは言い難い。
キーエンス自身もファブレス企業として生産を丸投げしているのである。

中国では電子部品なども最近では偽物が出回っている。単純な製品(部品点数が少なく製造が容易)なものは中国製でも良いとなってくるかもしれない。

そのようなことから高い株価のキーエンスであっても前途多難であり、更なる成長のキーポイントは海外展開であり、新たな領域を開拓するか、生産に必要かつ高付加価値な製品をつくり続ける必要があるのではないだろうか。


›7 19, 2009

成功の法則92ヶ条|三木谷の真実

Posted by skillstorage at 16:51 / Category: 書評 / 0 Comments

楽天の三木谷によるビジネス本である。これまで楽天については様々な書物が出ているが、やはり創業者であり経営者である三木谷本人によって書かれた本を読むことによって楽天の経営について深く知ることができる。

米国シリコンバレーのような企業家、例えばアップルのスティーブ・ジョブスやグーグルをはじめとするベンチャー企業経営者のイメージと三木谷はまったく異なることがわかる。

楽天はソフトの会社でもITの会社でも無いのだと思う。それなのにネットベンチャーのカテゴリーに入れられるが、よりリアルに例えるならば大阪商人がネットの世界で活躍してビジネスを展開しているといった感じに思える。

楽天はこれまでITをベースに革新的なことを最初にやったことは無い。ECショップにしても後発で、それがビジネス力でITオタク(マニア)の会社を駆逐していった。

そのようなところが三木谷の強さであり、楽天の強さであると言える。また、楽天を企業に例えるならトヨタと光通信を足して10で割った感じだろうか。トヨタもまた米国車や欧州車の良いところをひたすら真似て、改善を繰り返して品質の良い車をつくり、生産性を上げてきた。そして光通信は徹底した営業力がある。
もちろん楽天には両者のそれぞれの強みほどは無いが、ネット企業の中で群を抜いてそれらの強みがある。

三木谷自身の本により、メディアでの知的なイメージよりも商売人としての泥臭く地道な努力を重要視していることがわかる。そんなことからか、楽天に入社するITオタクはイメージとの違いに驚くのかもしれないが。

ところで、この本で三木谷は日本の新聞に対して批判しており、Financial Timesを読んでいるというのに驚いた。ちなみに日本のサラリーマンは誰でも読んでいる日経新聞は読まないとしょうがないが、それは他に代替品が無いからだと思う。
日経新聞の企業ニュースの半分以上は企業のIRをそのまま載せているだけで、今の時代は日経新聞より早くTDNETで読むことができる。
残りのわずかにリーク情報があり、以外にこれが重要だから困る。
企業はIR以外にリークを流すのはコンプライアインス違反だしインサイダー情報だからだ。

話が逸れたが、三木谷に対して好き嫌いが非常に激しく分かれるが、時代の寵児であることは間違いない。最近は三木谷バッシングも多いようで大変そうだなぁと思う。



ウォルマート 悪の経営か

Posted by skillstorage at 11:08 / Category: 書評 / 0 Comments

ウォルマートは米国に住んでいるとよく利用する。日本のイオンのような感じだろうか。米国では日本よりもだいぶ早く地域の商店街が崩壊し、ウォルマートのような巨大スーパーでしかほぼ買い物ができない状況になってしまった。
ウォルマートかガソリンスタンドにあるコンビニエンスストア。他にも薬局がスーパー化したり、サプリメント屋がスーパー化したりして結局ウォルマートにどの会社も近付いているのだ。

ウォルマートは世界最大の売上高を誇る企業で世界の過半数が利用している。そんな巨大企業にもかかわらず企業としての歴史は浅い。つまり、短期間に歴史的な超高成長を遂げているのである。
通常の経営戦略や経済学上ではあり得ない成長と言われ、ウォルマートの企業戦略や創業者のサム・ウォルトンの経営手法は研究されている。

その成果は書籍にもなっているが、多くがウォルマートの広告のような感じの本だ。つまりウォルマート絶賛のおべんちゃら本だ。この点についてはトヨタのおべんちゃら本でも指摘したのと同様だ。

最近もウォルマートのおべんちゃら本が売れているようだが、今回紹介するのはウォルマートの悪徳商法を批評している作品だ。

その中で最高なのは、「Wal-Mart: The High Cost of Low Price 」だ。
AmazonでDVDが千円ちょっとで買えるのがすばらしい。(*リージョンに注意、PCで日本版を再生していなければ見れました)

米国で公開された映画だが、ウォルマートの取ってきた成長戦略の多くが、政治力を利用したものであり、企業が巨大化してからはその独占企業ともいえる巨大な力を利用した仕入れ先への強制的な購買力、交渉力であった。ウォルマートが利益を上げ巨大化していくのと同じだけかそれ以上の犠牲が存在している。
そのような内容をDVDにおいて証言とともに批評している。地域の小売経営者とその家族が出てくるが、ウォルマート進出で経営が成り立たなくなり、倒産していく。
現実にこのようなことが頻繁に起っており、悲しくなる。

ウォルマートが進出する地域は、例外なく町の商店街は経営できなくなる。そしてコミュニティが崩壊する。
ウォルマートは社員を低賃金で働かせ搾取している。フルタイムで働いても低所得者層のままである。しかも従業員はウォルマートの医療保険が高すぎて加入できないため、州の税金により別の医療保険に加入している。
ウォルマートは進出する際に雇用創出などの理由で地域(州だとか市だとか)から助成金をもらっているが、私的な利益拡大にそのような税金が使われている。地域への還元はほとんど行われていない。
仕入先をたどると発展途上国でものがつくられており、そこでは人権侵害にあたる労働環境、搾取が行われている。
ウォルマートの敷地内(駐車場)で犯罪が起っている。
環境破壊につながっている。

そのような事例が盛りだくさんである。モラル無しに徹底して企業の成長に利用していることがわかる。


他にもウォルマートの批判本はあるが、同時におべんちゃら本にも少し言及すると、内容は20年前に書かれたウォルマート宣伝本が元ネタになっているようである。操業期におけるサム・ウォルトンの努力と徹底した合理化は良い教科書になる。だがすでに巨大化したウォルマートにサム・ウォルトンの意思も理念も受け継がれていない。
しかしチェーン化してからの政治力の利用や負の側面が一切紹介されていない。

ウォルマートは小売の代表であり、企業の代表でもある。研究するのは非常に面白い。