›7 19, 2009

ウォルマート 悪の経営か

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ウォルマートは米国に住んでいるとよく利用する。日本のイオンのような感じだろうか。米国では日本よりもだいぶ早く地域の商店街が崩壊し、ウォルマートのような巨大スーパーでしかほぼ買い物ができない状況になってしまった。
ウォルマートかガソリンスタンドにあるコンビニエンスストア。他にも薬局がスーパー化したり、サプリメント屋がスーパー化したりして結局ウォルマートにどの会社も近付いているのだ。

ウォルマートは世界最大の売上高を誇る企業で世界の過半数が利用している。そんな巨大企業にもかかわらず企業としての歴史は浅い。つまり、短期間に歴史的な超高成長を遂げているのである。
通常の経営戦略や経済学上ではあり得ない成長と言われ、ウォルマートの企業戦略や創業者のサム・ウォルトンの経営手法は研究されている。

その成果は書籍にもなっているが、多くがウォルマートの広告のような感じの本だ。つまりウォルマート絶賛のおべんちゃら本だ。この点についてはトヨタのおべんちゃら本でも指摘したのと同様だ。

最近もウォルマートのおべんちゃら本が売れているようだが、今回紹介するのはウォルマートの悪徳商法を批評している作品だ。

その中で最高なのは、「Wal-Mart: The High Cost of Low Price 」だ。
AmazonでDVDが千円ちょっとで買えるのがすばらしい。(*リージョンに注意、PCで日本版を再生していなければ見れました)

米国で公開された映画だが、ウォルマートの取ってきた成長戦略の多くが、政治力を利用したものであり、企業が巨大化してからはその独占企業ともいえる巨大な力を利用した仕入れ先への強制的な購買力、交渉力であった。ウォルマートが利益を上げ巨大化していくのと同じだけかそれ以上の犠牲が存在している。
そのような内容をDVDにおいて証言とともに批評している。地域の小売経営者とその家族が出てくるが、ウォルマート進出で経営が成り立たなくなり、倒産していく。
現実にこのようなことが頻繁に起っており、悲しくなる。

ウォルマートが進出する地域は、例外なく町の商店街は経営できなくなる。そしてコミュニティが崩壊する。
ウォルマートは社員を低賃金で働かせ搾取している。フルタイムで働いても低所得者層のままである。しかも従業員はウォルマートの医療保険が高すぎて加入できないため、州の税金により別の医療保険に加入している。
ウォルマートは進出する際に雇用創出などの理由で地域(州だとか市だとか)から助成金をもらっているが、私的な利益拡大にそのような税金が使われている。地域への還元はほとんど行われていない。
仕入先をたどると発展途上国でものがつくられており、そこでは人権侵害にあたる労働環境、搾取が行われている。
ウォルマートの敷地内(駐車場)で犯罪が起っている。
環境破壊につながっている。

そのような事例が盛りだくさんである。モラル無しに徹底して企業の成長に利用していることがわかる。


他にもウォルマートの批判本はあるが、同時におべんちゃら本にも少し言及すると、内容は20年前に書かれたウォルマート宣伝本が元ネタになっているようである。操業期におけるサム・ウォルトンの努力と徹底した合理化は良い教科書になる。だがすでに巨大化したウォルマートにサム・ウォルトンの意思も理念も受け継がれていない。
しかしチェーン化してからの政治力の利用や負の側面が一切紹介されていない。

ウォルマートは小売の代表であり、企業の代表でもある。研究するのは非常に面白い。



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