›5 09, 2008

官製不況とリバタリアン

Posted by skillstorage at 10:17 / Category: 政治経済(Political Economy) / 0 Comments

官製不況とは、法律や行政規制等の作為または不作為が、特定の業種または国全体の経済に悪影響を及ぼし、企業の業績の悪化や景気低迷、不況を生じさせることである。(Wkipediaより)

小泉前首相の進めた規制緩和、構造改革の結果、企業の不祥事により弱者、消費者が損害を受ける事件が多発したため、弱者保護、消費者保護、コンプライアンス強化といった一連の法改定が進められ、その結果として需要減退、経済低迷、倒産増加等の官製不況になった。

官製不況の具体的項目は多数有る。

・金融取引法によるファンド、金融商品に関する監視強化(ライブドア・ショックが原因)
・上場企業のコンプライアンス強化(J-Sox)(ライブドア・ショックが原因)
・貸金業法改定(サラ金被害者救済)
・建築基準法改定(耐震偽装が原因)
・上場企業の買収防衛策(スティールパートナーズ等外資系ファンドの敵対的買収が原因)
・派遣・請負の規制強化(ワーキングプア現象が原因)
・食品偽装から食品規制強化(産地偽装、フジヤ等が原因)
・モザイクを薄くしたビデ倫の摘発(猥褻映像の拡大が原因)
・携帯コンテンツフィルタリング(出会い系での事件多発が原因)
・著作権保護強化(Winny、偽物対策)
・煙草購入成人識別カードtaspo(未成年者の喫煙防止)

□リバタリアン

リバタリアンとは自由主義思想者のことであり、他者の権利を侵害しない限り、各個人の自由を最大限尊重すべきだとする思想を持つ。

他方同じ自由主義者でリベラルがある。

リバタリアンとリベラルの決定的な違いは、自由を獲得するための政府や企業等権力の存在に対する見解である。リバタリアンは自由を絶対的な価値におくのに対して、リベラルは自由を獲得するためには権力の関与に影響されること(つまり公正な社会)を前提にしている。

例を見てみよう。

・搾取する企業
安い賃金を求めて海外に製造拠点を企業は確立する。東南アジアの子供の労働者を朝から晩まで低賃金で働かせる企業を想定しよう。

リバータリアンはそのような企業でも労働者と企業はあくまでもお互いに納得しあった条件で契約しているのであり、全く問題が無いとする。
このような企業が悪徳と見なされたり、規制が入る事によって企業は撤退し、労働者は仕事を失い、さらに条件の悪い仕事をするか、飢死するしかなくなる。
労働者が条件が悪いと思ったら、そのような企業に自らの意思で入らなくなるだけだ。

リベラルは逆である。労働者の人権の観点からそのような企業の労働条件を改善させるべきだとする。企業のオーナーの取り分が減り、その分が労働者に還元されると考える。

・銃
リバータリアンが米国で保守と間違えられるのは、銃の所持を求めるところにある。銃を持つのは個人の自己防衛であり、使うかは意思の問題とする。

リベラルは銃によって弱者が虐げられると考え反対する。

そして「官製不況」についての考え方である。
先日大前研一ライブを見ていて、大前氏はリバタリアンの立場を取り、徹底して政府による規制に反対していた。

規制によって企業は国内での商売をやめたり、国内での労働者獲得をやめたりすることに繋がる。その結果、守られるべきはず弱者はますます仕事につく機会を失うと考えるのだ。

大前氏の主張では企業の不祥事は規制緩和、小泉改革が原因ではなく、真の原因は官の肥大、怠慢、癒着、またそれを許す国民、社会にこそあるとしている。また現在の規制強化は真の解決策にはならなず負の影響の方が大きいとしていた。

消費者保護は、高コスト化となり消費者に跳ね返り、投資家保護は企業のコスト負担、外国人投資家の日本離れ、労働者保護は企業の人件費アップ、青少年保護は数多くある裏口、違法へ流れるだけとしている。

さて、保守(コンサバ)、リベラルの立場から官製不況を見てみると、
保守は、国内の弱者を守ることが国益に繋がると考えるだろう。革新的保守、グローバル主義者は他国の規制が緩い地域に企業は移ると考えるだろう。

リベラルは、弱者保護の観点から規制強化とするだろう。但し、リベラルはグローバル主義史観が強く、世界中の規制強化を進めないと効果が無いと考えるだろう。

マスコミの報道は概ねリベラル路線が中心で、保守路線も同じ意見として政府の意向に合致し弱者保護、公正の確保に重きを置いている。

リバタリアンの考えでは、このような最も知的で世界で主流なグローバル主義的リベラルの考えとも対立する。
世界中で規制を強めるのさえも効果が無く、規制が経済発展の妨げになる、規制を緩めた地域に企業が集まり、労働者も集まると考える。


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売春婦、シャブ中、悪徳警察官、ホリエモン、女性差別主義者、闇金融など一般的に悪の存在と思われる連中を擁護し、何故擁護されるべき存在かを解説。
リベラルでは絶対的に悪とみなされる対象がリバタリアンにとっては英雄的存在になってしまうところがすごい。

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›5 02, 2008

ユナイテッド・テクノロジーとグッドウィル紛争に

Posted by skillstorage at 09:52 / Category: 日々雑感 / 0 Comments

各社のIRを見てみて欲しい。特にグッドウィルは感情的とも言えるIRで笑える。ユナイテッドによるGW不祥事の株価低迷時に株式の大量取得、その後の業務提携の提案というのはGWにしてみれば乗っ取りにしか思えないのだろう。本来買われてしまえば良いとも思え割れるのだが、GWも折口が筆頭のオーナー企業で思い入れが強いだろうし、ユナイテッドに買われるのが相当嫌なのだろう。

グッドウィルはまあ報道で散々叩かれたが、今でも本質的なことはそんなに変わっていないのではないかと思う。経営陣は折口の傀儡に思える。

しかしGWもIRに警視に相談などと出すとこれは紛争に発展するのではないかと思う。

ユナイテッド・テクノロジー・ホールディングスについてはあまり知らなかったが、設立10年強で派遣業でここまでの巨大勢力となり、グッドウィルを飲み込もうとしているので興味深く調べさせてもらった。
社長の若山 陽一氏は高校卒業後パソナで働いている時に、製造業向けの人材派遣業の将来性を見出したようだ。

当時の日本の不況の中、製造業が積極的に人件費の流動化を模索していたブームに乗って、その後の製造業の復活とともに市場拡大にも乗った感じだ。

このように急拡大したビジネスというのは何かあると普通は思うだろう。

今となってみたら、過去の派遣や請負という仕事は社会保険未払いの問題や偽装請負など業界全体に構造的な問題を抱えていたということがわかるのだが。

泥沼の争いに発展しつつあるので傍観し近づかないでおこうと思う。
派遣や請負は社会問題にもなっており、ますます印象が悪くなるかもしれないと感じる。

昔だったら人身売買とか言われたのだろうけど、もはやこういった業界無しでは製造業が生存できない事こそ問題なのかもしれない。

製造業が米国のように自由に労働者をレイオフできる環境や派遣・請負に頼らず流動化できるようにする仕組みこそが本来必要なはずなのだが。