›9 29, 2009

モラトリアル(元本返済猶予)の影響

Posted by skillstorage at 23:24 / Category: 日々雑感 / 0 Comments

中小企業向け融資などの返済猶予(モラトリアム)を亀井静香金融・郵政担当相が提唱したことを受けすでに中小企業に影響が出ているのを感じる。
中小企業を救うための施策のつもりが逆に中小企業を苦しめているのだ。
モラトリアムが実施されると銀行はとりっぱぐれることになる。だから今のうちから貸さない、貸したものを返させるという貸し渋り、貸し剥がし現象がモラトリアム実施前から起こりつつあるのだ。

返せる見込みのないところに銀行は貸したりしない。ビジネスとして成り立たないからだ。
返さなくて良いのであらば、まじめに事業をやらなくなる中小企業もいるだろうし、そもそも返つもりなどさらさらなく悪用しようという者もあらわれる。

結局モラトリアルで困っているのはまじめに事業を行っていて融資で長期的に成長できるような中小企業であり、彼らの融資機会を奪ってしまうことになるのではないだろうか。

›9 24, 2009

グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業

Posted by skillstorage at 19:17 / Category: 書評 / 0 Comments

元NTTドコモの夏野氏の書籍だ。彼はiモードを企画したチームの1人であるが、彼に対する評価は様々だ。
書籍「iモード事件」はiモードができるまでの物語で、ドコモに集められた異色のメンバーが、同じくiモードを立ち上げるためにドコモが雇ったコンサルティング会社マッキンゼーとの対立が描かれている。
夏野氏はドコモに入るまでインターネットベンチャーで倒産したハイパーネットの役員をやっていた。
ところが倒産間際に辞めてしまい、iモード企画会議でもマッキンゼー社員から散々バカにされたことが「iモード事件」には書かれていた。

読んだとき、日本では潰れた会社の人間はたとえMBA取得者だろうが評価が地に落ちるのだなと思ったものだ。

そんな夏野氏もiモード成功の立役者として以前はかなり注目され、「iモード・ストラテジー」という書籍も売れ評価も高かったのだがあっという間に他のキャリアも同じサービスをして今ではiモードなんて死後のようになってしまっている。その後、夏野氏はドコモを退職しネットベンチャーのドワンゴ(一部上場だからベンチャーではないか?)の常勤顧問に就任した。

そんな彼が今度はネットベンチャーのグリーの社外役員になるという。

彼の最新書「グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 」はタイトルのとおり、現在のネットベンチャー企業のあり方やネット以前の世代(ビジネスにネットが無かった時代の世代)を批判している。

確かに現在の日本のネットベンチャーはグーグルに依存している。グーグルの広告代理システムによる広告収入がほとんどの会社が実に多い。
ネットで集客し広告収入に頼っているビジネスモデルだ。
最近では小売・流通業界もようやく販売チャネルとしてネットを活用しだしてきているが、新規性が無い。
思えば日本でネットで新規性のあるビジネスモデルを打ち出した会社は皆無ではなかろうか。

しかし夏野氏にしても、iモードの発想はビル・ゲイツの書物にある携帯型端末がサイフや情報端末になるというアイデアを参考にしているし、その後のドワンゴはニワンゴのニコニコ動画はYoutubeの日本型応用だし、グリーにいたっては米国で流行ったSNSを真似、その後DeNAのモバゲーのような無料ゲームサービスとして高収益企業となったという点で新規性はどうかと思う。

タイトルにバカ企業とまで書いているが、日本の企業はイノベーション型では無くトヨタのようなカイゼン型、改良型なのだからそれはそれで良いのかなと思う。



売国者たちの末路

Posted by skillstorage at 19:15 / Category: 書評 / 0 Comments

陰謀論者のようであり反政府主義やリバータリアニズムを主張する副島 隆彦と、かつては人気エコノミストであったが痴漢行為により犯罪者となってしまった植草 一秀による小泉政権がいかに売国的であり米国の手先のようなやり方で金融規制の緩和や改革を進めていったか、植草氏が犯罪者とさせられたかを語る衝撃の書だ。

小泉政権に痛烈な批判をしたため、冤罪として痴漢教授となってしまったという。
テレビに出ることが無くなったせいで、既に世間からは忘れられた存在になってしまった。
エコノミストであり大学教授だったのが、当時のワイドショーでは「手鏡の教授」だとか、「ミラーマン」だとか騒ぎ立てた。それが2度の痴漢で社会的にはほとんど復活不能なほどのダメージを受けた。現在実刑判決を受け収監中とのことである。

小泉政権の行った施策がいかに国益を損ねたか。このような議論が盛り上がりつつも政権交代により、その検証が下火になってしまうのではないかと危惧される。


›9 12, 2009

経常利益率35%超を37年続ける 町工場強さの理由

Posted by skillstorage at 23:12 / Category: 書評 / 0 Comments

エーワン精密という工作機械につかう部品(コレットチャック)を製造する中小企業の創業者の話だ。
売上高20億足らずだが、経常利益は40%という会社だ。これが町工場だと創業者が主張するので衝撃的数字に思えるかもしれないが、読み進めると町工場では無いのではないかと思った。
いわゆる町工場というのは競争力が無く、価格交渉力も無く、仕事は親会社と呼ばれる資本関係の無い大企業からもらう会社をイメージする。
しかし、エーワン精密は、競争力のある技術力があり、市場シェア6割も占め、取引先も多く、価格は自社が決めている。
見たくれは工作機械で加工をしている町工場でも、これはちゃんとした会社だということがすぐにわかる。

それにしても製造業で利益率が常に40%以上というのはキーエンスやコーニングのようであり、小学校しか出ていない(実際には二十歳から夜間中学に働きながら通った)のにすごいと思った。思えば松下幸之助なんかもちゃんと教育を受けた訳では無いのだが。

その筆者が経営の知識なんか何もなく、ただ自身がやったことを書いているのだが経営のプロの書いた本なんかよりもよっぽど役に立つということは断言できる。

良い技術を他社よりも早く手にいれ競争力を持ち、客の要望にどこよりも迅速に応え、価格は自身が決める。景気には波があるのだから、どんなに好景気でも浮かれずにコスト低減に努める。

経営を勉強したものでも、なかなかこれが忠実にできてないのだということを改めて認識させられた。

そしてジャスダックに上場するのだが、エーワン精密のような会社が上場するのが不思議でならなかった。上場する必要が無いからだ。
つまり中小企業の上場の大きな目的である社長の借金の個人補償から外れることというのは無借金だから関係無いし、株の売却による創業者利得というのも興味が無さそうだ。事実、株式公開時から自身の持ち株を売却していない。

その他にも、信用力の向上というのも市場シェア1位で既に信用力があって必要なかったというし、知名度の向上も必要なかったという。

筆者が言うには、町工場でも上場できるということを知らしめたかったという意地だったのだということがわかる。
実際に上場した直後は後悔したようでもある。上場して間接業務が増え、監査法人にも多額の報酬を支払う必要があるからだ。利益率が高いことが公開企業のため取引先に見られることによって値下げ要求が来るのではないかという心配も当然ながらしていた。(驚くことに値下げ要求は1件もなかったそうだ!)

良いこともあったということがわかるが、上場したメリットは果たして大きいのだろうか?良い会社だとは思うが、投資家の立場からすると高い自己資本比率は株主資本を有効に活用していない点が不満に思えるし、利益率はそもそも関係無い。投下資本利益率があくまでも大切だ。成長性の観点から考えても不満が残る。

さて、本のタイトルもそうだが町工場というやたらこだわっているなと思った。町工場と比べるからすぐれて見えるだけなのではないか。町工場だったら潰さない経営をしているだけで褒められるのだから。

これから起業しようと持っている者、経営者にはとても良い本である。しかし町工場でもう存続するのも大変だとか、借金は金利も払うのも大変だとか、存続意義が無くなってしまったところとは別次元で考えないといけないと思う。


›9 03, 2009

借金の底なし沼で知ったお金の味 25歳フリーター、借金1億2千万円、利息24%からの生還記

Posted by skillstorage at 02:52 / Category: 書評 / 0 Comments

悲惨、惨め、哀れ。筆者の金森氏の過去はそう思ってしまう。
田舎から大学入学のため上京してすぐに騙されてしまう。東大入学後も田舎モンのため同級生と馴染めず、卒業後はフリーター。先物取引で騙され多額の借金を背負ってしまう。借金の金利だけでサラリーマンの年収ほどの額に達する。

そんな絶望的な状況からの再起の物語だ。

精神的にも金銭的にも追い詰められた状況から地道に自己啓発に努め、資格をしこしこ取り行政書士として起業。稼げないのが当たり前の業種にもかかわらず自己啓発で学習した中小企業診断士などの知識を活かし大ヒットする。
さらに不動産投資などで成功し、借金返済をしてしまう。

深く考えさせられた書物だ。東大法学部に入学するほどの学校教育を受けているにもかかわらず簡単に騙され、金融知識が無いため先物投機で大失敗をするというのはいかに学校で学ぶ知識が金儲けや生きる上で役に立たないことがわかる。

社会人になってからのビジネスに関連した資格試験や自己啓発というものの重要性もわかる。

簡単に借金地獄にもなるし金持ちにもなれるんだ。

また、ヤクザのような借金取りに追い詰められ精神が疲弊していく状況も普通じゃ味わえない。そのような状況から脱出しようと地道な努力をする意思も参考になる。

平凡な人生では無い。アップダウンの連続だが豊かな人生だと思った。

›9 01, 2009

闇金ウシジマくん 10 |普通のサラリーマンの絶望

Posted by skillstorage at 23:36 / Category: 書評 / 0 Comments

闇金ウシジマくん10巻から始まる新たなストーリーの主人公は闇金とは無縁のサラリーマンだ。結局最後まで闇金とは直接係ることは無かったのだが、家庭持ちサラリーマンの鬱積した日常にやや共感が持てる。

大卒でそこそこの企業に入り営業マンとなった主人公だが、幸せとは程遠い。営業成績が落ちたことで上司に叱責を受け、後輩からは陰でこそこそ言われる。仕事は終電まで帰れない。嫁は2人の子育てで疲弊しストレスが溜まっていて、2人とも自由な時間なんか持てないのだ。
こんな家庭はどこにでもある一般的な日常じゃないだろうか?

満員電車に持っていても、サラリーマンは我慢の日常、景気も悪くて不安も多く崖っぷちの気分の人も案外多いと思う。ちょっと背中を押したらもう崖から落ちてしまうような状態だ。

何が楽しくて生きているの?

子供の成長のための義務と家庭を守る責任感。主人公も毎日自分に言い聞かせて行きたくない会社に行くのだ。

そこから脱落したもの、ストレス発散のための遊びからサラ金に手を出し人生が崩壊していくもの、不幸せな人が沢山出てくるが、自分の周りにもいるのではないだろうか。

会社を辞めたい?安直な気持ちの考えは、ずいぶん甘くないだろうか。

職場でも家庭でもやなことは沢山あるし、誰もが我慢して生活を取り繕っているだけなのかもしれない。

闇金ウシジマくんでは、かなり本質的なサラリーマンの気持ちを生々しく代弁している。また一歩道を外したサラリーマンがどれほど悲惨な人生になってしまうかも。

読後には深いため息をついたが、しばらくして頑張ろうという気持ちが湧いてきたから不思議だ。


2009年版中小企業白書

Posted by skillstorage at 09:51 / Category: 書評 / 0 Comments

2009年版中小企業白書は驚愕の内容だ。
2009年3月までの業況判断DIや生産指数、在庫指数などあらゆるデータ、グラフが急降下している。崖から落下するようなイメージだ。
2009年8月では世界的な財政出動や景気対策により大企業の生産が回復基調にある。ただし大企業の生産も未だに金融危機前の7割程度の回復しか無いのに利益が回復しているという点に注目したい。
中小企業白書では、下請取引企業の業況判断DIが下請でない中小企業より遥かに悪化していることが示されている。
つまり、大企業の生産調整により下請け中小企業が派遣社員と同じように調整弁の役割をしていることがわかる。
2002年から2007年まで続いた好景気は大企業が中心であったことがわかる。事実、中小企業の売上高経常利益率は大企業に比べると低く、さらに中小企業の4割が形状利益がマイナスとなっている。

また、重要な点として中小企業は良くも悪くも経営者の能力に依存してる。中小企業のイノベーションは経営者のチャレンジ精神、経営者の創意工夫、経営者の迅速な意思決定に依存している。大企業のように誰が経営者でも会社運営に支障が無い会社とは大違いである。

さらに製造業がサービス業に移行しつつあることもわかる。成熟した先進国において第二次産業の付加価値は薄れ、発展途上国にかなわない。第三次産業に移行していることがわかる。だが、現在の国の政策は雇用や開発の助成金の多くが製造業に注がれ延命処置になっているところも同時に問題な気がする。

製造業は市場が国内から海外に移っていることも注目したい。日本は少子高齢化社会かつ人口が減少していく経済的には衰退期に入っている。このような状況では海外の成長市場に商品を売らなければ生存ができないことを示しているのだと思う。輸出をしている中小企業は2002年以降業績が良かったが、リーマンショック以降は急降下している。だが長期的にはやはり輸出に頼らないといけない、たとえ円高になろうが。