›2 18, 2009

TOKYO AIM(東証プロ向け新興市場)

Posted by skillstorage at 20:17 / Category: VC(ベンチャーキャピタル) / 0 Comments

以前から注目してきた東証のプロ向け新興市場が今春(2009年)春より開催される予定だ。
過去にも取り上げてきたが、趣旨は大きく違わない。
東証プロ向け新市場(J-AIM)

HPもできている。
http://www.tokyo-aim.com/

TOKYO AIMは東証がロンドンのAIM市場と提携してつくられる新市場である。2008年12月末現在のロンドンAIM上場会社数は1,550社。特徴は機関投資家や証券会社などのプロ限定であり、上場コストが安く、米国ナスダック等と比べてベンチャー企業にとって敷居が低いことがあげられる。

また、ロンドンAIMは「Nomad」制度があり、指定アドバイザー(日本の証券会社の主幹事のようなもの)が上場後も責任を負うという特徴がある。日本では、J-Nomadと称される。
J-Nomadは、上場申請会社の上場適格性を評価するとともに、上場までの過程で助言・指導を行う。
上場後も、上場企業はJ-Nomadとの契約維持が義務付けられる。
J-Nomadは上場企業が市場のルール(特に開示に関する義務)を継続的に遵守するよう指導する。

J-Nomadは日本では証券会社がなると思われるが、かなりのリスクを負うことを考えると引受費用は高額になるのではないかと懸念されるのだが。

上場を目指すベンチャー企業にとってみたら期待感があると思う。既存の新興市場(ジャスダック、マザース、ヘラクレス、セントレックス、NEO、Q-Bord、アンビシャス)はかなり問題を抱えている。
大手監査法人の厳格監査と規制強化により審査が緩かった時代に上場した企業は、現在軒並み苦労している。内部監査も義務付けられ、四半期決算にIR対応と多額のコストが必要になってきている。最も大きな問題は株安である。
ジャスダック、マザース、ヘラクレス以外の新興市場は投資家の参加者数も少なく、存続が危ぶまれているようである。最も新しい新興市場のNEOも上場要件は厳しい。

TOKYO AIMは、まず上場審査が緩いというのが最も魅力的であろう。資金が必要なベンチャー企業が上場のために2年間も監査と対応で莫大な費用が必要という現在の新興市場の仕組みは大きな問題である。
過去のベンチャーブームの時は、監査法人は緩い監査で、バックデート監査が有効で、費用も上場後に監査を引き受けるのを目的とした成功報酬に近いモデルであった。

TOKYO AIMはそこまで緩くはないが、監査法人による(直前期のみ)監査報告書等(無限定適正意見)という要件は魅力的である。J-SOXや四半期決算にも縛られない。

また、個人投資家による糾弾(掲示板での書き込みや株主総会)という問題も自己責任意識の強いプロに限定されれば少ないのではないか?

問題は、TOKYO AIMが成り立つかという不安である。プロである機関投資家のポートフォリオにこれまでも新興市場への投資という選択肢は非常に少なかった。さらにこのご時世である。新興市場がこれだけある中で、あえてプロがTOKYO AIMに投資をするのだろうか?

この点が非常に気になるところである。


›2 13, 2009

景気の波支持者、構造転換期支持者|Cyclists versus Structuralists

Posted by skillstorage at 18:50 / Category: 日々雑感 / 0 Comments

今回の100年に一度とも言われる不況に対し、景気の波が底に来ているだけという考え方と資本主義社会の構造的な問題という考え方がある。
マスコミの論調も両方があり、日本では比較的後者について多く議論されている気がする。

景気の波支持者(Cyclists)と構造転換期支持者(Structuralists)という形でワシントンポストに記事が出ていたので、改めて両方の立場で考え込んだ次第である。

景気は確かに周期があるのは過去の歴史の通りである。今回の不況に対しても底まで下がったらまた上がる。しかし長期的には資本主義の構造的な問題が多くあるため資本主義経済の前提である、長期的発展というのはもはや望めないかもしれない。

景気が波であるというは需要と供給のバランスでかつては決まっていた。その要因が原材料高であったり戦争であったり気象的な問題であったりと様々ではあるが。

需要が増えれば生産量を上げ、やがて生産量が上回る。そうなると生産物の価格が下がるため消費が上がるのだが、消費者は貯蓄という選択も行う。
つまり生産 = 消費では無い!

ケインズ経済学において、不景気になると景気刺激策を打ち出し財政出動するのは生産量を満たす消費をつくりだす必要があると見ることができる。

このようにして現在の経済学では不景気に対しては景気刺激策という手法で対策を取るのだが、問題はインフレや赤字の将来の世代への先送りという問題がある。
本来は好景気の時には、税金を増やして不景気時の対策費用を徴収しないといけないのだが、グローバル経済においては税収を増やすと他の国に生産も消費者も逃げるという問題がある。

さて、今回の不況の対策としてはやはり景気刺激策によるインフレと財政赤字の拡大が懸念される。また保護主義も台頭し、さらには米国主導の規制(例えば環境問題)が何らかの形で行われるのではないか?

構造的な問題は過去の不景気の際にも問題になっているようであるが、何度も世界はその後経済成長を遂げた。今回も人間の英知によって解決できるのかもしれない。

›2 12, 2009

さらばアメリカ|大前研一

Posted by skillstorage at 20:00 / Category: 書評 / 0 Comments

大前研一の新書「さらばアメリカ」はすごいタイトルである。
もうアメリカは世界の主導者でも目標でも無い。

若い人にとってみればアメリカに対してそれほど憧れは無いが、大前氏のような戦後団塊の世代の人たちにとってみたらアメリカは憧れの対象であった。自分の年代から見ると戦争で民間人に対して皆殺しにするような空爆や原爆投下をしている国に対してよくそんなに羨望できるなと思うのだが。

戦後アメリカから流れてくる商品、そしてテレビの映像というのはすごいインパクトだったのだろう。敗戦国で貧民だった日本国民にとって、アメリカの大きい家に車に家電にアメリカンドリームや自由恋愛というか、労働よりも遊び中心のようなライフスタイルがテレビドラマで大量に流されたら、やはりそうなるのだろう。

実際には、テレビドラマや映画の世界というのは現実の世界では無くて、やはりアメリカ人にとっても憧れの世界なのだが。

このように世界を魅了する戦略というは、移民を集めるためにも、マネーを集めるためにも重要な役割だったのだと思う。現にアメリカのパワーはそこに集約されている気がする。

それが経済においても企業経営においても戦争においても破綻に至りつつある。オバマ政権で変わるか?オバマのスピーチは他の国のトップではできない夢があり、魅了させられたことは事実だ。

もう破綻寸前のアメリカだが、まだ日本よりは夢が残っているようにも感じるのだが。


さらばアメリカ

›2 09, 2009

トヨタ衰退の時代は来るのか?

Posted by skillstorage at 19:46 / Category: イノベーション / 0 Comments

トヨタ自動車が営業赤字、最終赤字になる見通しだが、イノベーションの視点から今後の自動車業界について考えてみたい。
トヨタ自動車はPBRが1倍を切っており、市場からは解散価値より低い、すなわち今後は減益で資産を食いつぶしてしまう可能性があることを示唆されていると感じる。
世界で最も販売台数が多く、自動車業界リーダーであるトヨタがこのような状況であることは様々な視点から論じられている。

経済状況、サブプライムローン問題を発端とする消費減少、割賦販売の減少などが多いが、技術的にはどうなのかの情報を色々なところで聞いてきた。

その中で最も興味深いのは自動車のコア技術の転換期に来ているという話である。
石油という有限資源に頼った動力源、排気ガスは環境にも悪影響という問題を抱えている。

その中でトヨタのプリウスはハイブリッドカーで環境にやさしく燃費も良いエコカーとして独り勝ちに至った。

しかし、プリウスは既存の自動車の延長に過ぎないという意見が多く聞かれる。プリウスは既存車と同じくエンジンを積み、バッテリーはエンジンを補うためについてる。
電気自動車は、エンジンではなく、モーターとバッテリーで駆動する。ガソリンは基本的に積まず、プラグイン方式で充電して走る。現状では50km程度しか走らないのとリチウムイオン電池が車載用に量産されていないコストが問題となっている。

電気自動車のハイブリッドという概念はGMが開発している、モーターとバッテリー、そして発電機を積んだものの方が定義として適切ではないかと思う。

実際、電気自動車の方が2倍以上の電気の利用率が高く、環境にやさしい。

オバマ政権の打ち出す「グリーン・ニューディール政策」で環境を考慮した車に対する優遇政策というのが出てくるとすると、もしかしたらプリウスは既存自動車とみなされる可能性がある。

もっとも電気自動車を自動車メーカーがつくることは非常に難しい。電気自動車は全く別物であり、むしろ電化製品に近いからだ。
電池、モーターがコア技術となってしまう。もしかしたらコア技術は不要でパソコンのように買ってくれば作れてしまう(組み立てるだけ)かもしれない。

現に日本を含め世界中で少人数のベンチャー企業が、電気自動車のコンセプト、試作車を発表している。

電池は重要な要素であるが、現状では市場が無いので日本の電機メーカーは量産体制を取れない。またそのような体力も無い。

その他方で、中国のBYD(比亜迪)は電池メーカーから電気自動車に参入した。昨年はバフェットも投資している。

車が変わるというのは産業の構造転換だけでなく、環境に対する考え、社会インフラの転換も必要となる。非常に大きな課題が多く、オバマのような世界を主導するほどのリーダーシップが必要となると感じる。同時に非常に夢のあることである。

電気自動車への転換のスムーズなシナリオでは、2010年以降に電気自動車への補助政策が大国から出てくるだろう。既存のガソリンスタンドや家庭では充電設備が少しづつ出てくるだろう。
強引な政策を推し進める結果、既存のガソリン・エンジン車は環境破壊車として扱われ、電気自動車の開発が進み、関連産業も大きく育つ。

もちろん全く進まず、既存の車から切り替わらない可能性も大きい。

しかし、世の中にはBYDのような大企業からベンチャー企業までその夢にかけて開発を進めている企業が出てきている。
過去の遺産(レガシー)に捉われている自動車業界のトップ企業ほど、構造転換が難しいと思われる。