人類にとって大きな変革期となった産業革命、インターネット革命に次いで、大きく産業を転換させる可能性があるのがMAKERSムーブメントだ。
イギリスで起こった産業革命では、大量生産が実現し、人類は生産性を向上させ大量消費の時代に突入した。近年ではインターネット革命により、コンピュータによるホワイトカラーの生産性の向上からネットワークでつながった消費スタイルの変革までもたらした。
製造業は大量生産から、個人の欲しいものだけを生産する嗜好性と多品種、少量生産の時代になりつつある。
大量生産では、工場のオートメーション化(FA)により長期に使われる自動化設備によって生産されたが、現在ではリードタイムが短く、多品種少量の組立のため東南アジアの安い賃金で段取り換えが容易な労働集約型の人的作業でモノが組み立てられることが多くなった。
この先にあるのは、個人が欲しいものを自分が考えて、それをそのまま作ってしまうようなムーブメントだ。
理想とも言える製造プロセスは、技術革新より可能となりつつある。
かつて写真は撮影したものを専門業者に現像と印刷を依頼していた。しかしコダックは破産し、デジカメで撮った写真は自宅のプリンタで誰でも印刷できる時代となった。
同じように、欲しいものは簡単に3DのCADで絵を書き、3Dプリンタや簡易工作機械やレーザーカッターで簡単につくれるものがでてきている。それも安価に。
かつてインクスという会社が注目された時代があった。この会社は3Dの試作を短納期で実現する会社だった。自動車業界に特化し、金型をつくらずに短時間で必要な戸数だけ生産する仕組みを構築していた。民事再生になったが、再生したという。
携帯電話やプリンタなどの家電もまた速いスピードでの試作が求められる。菊池製作所という会社は、小型の工作機械やレーザ切断機、レーザ溶接機を用いて試作をつくる会社で、最近上場した会社だ。このようなジョブショップは企業の製品投入を速くするための試作に特化しており、アジル・マニファクチャリング(迅速な製造)という言葉もある。IT分野ではRAD(Rapid Application Development)と呼ばれるプロトタイブ製造プロセスが重要視されている。
MAKERSムーブメントとはこれらとは異なる。むしろDIF(日曜大工)の延長と考えるべきだろう。3D製造技術の向上は、つくられたモノを買うのではなく、モノを自分でつくりだすイメージを実現する。
最近、電子工作がまた流行っているという。昔はガレージでモノを修理したり組み立てたりするのがアメリカ人の中産階級の夢のようなものだったが、その後IT化やモジュール化により学校の授業から家庭科や工作は消えた。車はコンピュータ制御になり、部品も分解できなくなった。しかし、部品の高機能化とは別に、専用化から汎用化という流れも同時の起こり、モジュールを組み合わせることによって、欲しいものは自分で作れる時代にもなったのだ。
近い将来、子供たちは学校で3D CADの使い方を学び、電子部品のモジュールに対する知識も得るだろう。欲しいものをつくるときは、プログラムのモジュールも集積され自由にだれもが使えるようになっている。家庭用のプリンタは3D製品をつくれるようにもなってきているのだ。
変革はもう、目先まで迫っている。
眼鏡といえば、近視や老眼を矯正するもので、日本には福井県の鯖江という場所が生産場所として有名だ。
しかし、近年は眼鏡の役目は終わって来たかと思っていた。コンタクトレンズは当たり前のように普及し、今ではレーシックというレーザ手術によって日帰りで簡単に視力が矯正できてしまう。デザインとして優れたチタンの高級メガネは鯖江は評価が高いが、近年では中国製の激安メガネが浸透している。
ところが、今度はGoogleがまた世界を変えるかもしれない製品を発表した。ファミコン、AppleのiPhoneの次に世界を変えるような製品はこのグーグル眼鏡なのかもしれない。新しいスタイルの眼鏡は、鯖江の眼鏡産業を救うかもしれない。
Google Glass は、3Gまたは4G回線に対応し、GPS 機能、加速度センサー、カメラを搭載している端末のようだ。搭載された加速度センサーを利用し、頭の動きによって Google Glassを操作する。Google Glassの機能のビデオなんかを見ると、空を見上げれば天気予報や気温が表示される。
金額は推定で150~600ドルとのことだ。しかし、チタン製のシームレスなフレームや機器を見ると安くは無い製品になるのではないだろうか。
まあ、iPhoneやスマートフォンでできることが、眼鏡をかけて意識せずにできるというのが特徴の製品なわけで、指で操作するわずらわしさからの解放というのがどれほど便利なものなのかは、使ってみなければわからないところだ。
また、発売するのがGoogleというのが気になる。Googleは広告代理店業者なのだ。アップされている動画はGoogle Glassの恐ろしい側面も示唆している。
例えば、コーヒーを注げばスターバックスの広告が表示され、ハンバーガーを食べればマクドナルドのマークが表示される。本屋や店に入れば、眼鏡から大量の広告が表示される。これはこれで、最安値情報がどんどん視界に入ってきて便利なのかもしれないが。。
ということで、このGoogle Glassは視力の矯正機能が無い新しい眼鏡だ。3Dテレビのメガネはかけるのが煩わしいし、こういったものを身につけるような時代になるのだろうか?
Googleが広告をどんどん出すのを見て思い出したのが、子供の頃読んだ星真一の小説だ。ショートストーリーなのだが、未来は家電などあらゆるものが無料になる。しかし、冷蔵庫を開けると常に広告が流れ、なんでもかんでも広告で埋め尽くされるという恐ろしい話だった。
「アベノミクス」は国内で高い評価を得ているだけでなく、ノーベル経済学賞受賞のクルーグマンにも好印象だ。
インフレターゲットを2%に設定し、そこに至るまで金融緩和を行う。マネタリーベースが増加し、じゃぶじゃぶに資金を供給するリフレ政策だ。それに加え、需要喚起のため、財政出動を行う。
株価は上昇を続け、円安が進んでいる。
このような政策に対し、ドイツなど日本と競合する輸出産業国からの反発を買っている。
アベノミクス政策により、主に為替レートから日本の製造業が盛り返しつつある。日本は輸出大国と言われたのは過去の話で、現在は貿易赤字国となっている。
輸入におけるエネルギーや材料の価格が上昇するが、それよりも円安による輸出増加による恩恵の方が大きいと、ゴールドマン・サックス等の金融機関がレポート発表している。
インフレには、コストプッシュ型インフレとディマンドプル型インフレがある。
コストプッシュ型インフレは、輸入物価の上昇によって引き起こされ、コストが増加するばかりで企業の販売量が増えないと給与や可処分所得の増加につながらない。
ディマンドプル型インフレは、需要が増加することによって企業の販売量も増えるので、給与や可処分所得の増加につながる望ましいインフレだ。
日本は需給ギャップが大きく苦しんでいる。つまり需要不足であり、企業の生産過剰である。「アベノミクス」により公共事業の投資が増加すると思うが、その他のグローバル競争に晒されている産業の需要増にはつながらない。円安で利益が回復する位であり、電機業界に見られるように国際的な競争力は低下しているので、円安で売り易くなったからといって需要がそう簡単には増えないのではないだろうか。
アベノミクスの負の点についてあまり議論されていないのではないか。一時的な景気回復により消費税の増税を行う可能性が高いが、そうなったとき国内の需要は一気に停滞する。増税を行わなければ、財政収支は改善されないかのような議論が多いが、むしろ増税により需要の収縮の方が恐ろしい。年金の削減、公務員削減など歳出を思いっきり下げなければならないときが来るのではないかと思う。
また、国債をいつまで発行し続けられるかも疑問が多い。日本国債は国内で買われているが、買っているのは生保、銀行、郵貯といった老人の資産を元に金融機関が日銀が買い取る保証付きで利幅を抜くために買っている。しかし、買い手の老人は死ぬ前に資産を解約し下ろしていくのが普通だ。
買い手がいなくなった国債は、暴落し日本の金融機関は評価損でバタバタと倒れ救済される運命にあるのではないか。