›8 28, 2006

キーエンスの本業は? (有価証券報告書を読む)

Category: ファイナンス / 0 Comments: Post / View

キーエンスといえば、無借金会社であり、超高い利益率(経常利益率50%越)で有名であることを紹介した。


その際、筆者は個人的に投資対象として興味は無いとは書いたが、今回深く有価証券報告書を見て愕然とした点がある。ホームページ上には財務データ、IRデータが開示されていないが、EDINETで見ることができる。
何で開示しないだろうかと思っていたのだけど。。。

営業利益率、経常利益率が抜群に高いというだけでは、実はその企業が優良かどうかは判断できない。売上を上げる為には設備投資など即ち資金調達が必要だからだ。調達した資金に対してどれほどの利益率を上げているか(ROICなどの指標で計る)こそが重要なのだ。

キーエンスでは無借金経営で、有利子負債よりも調達コストの高い株主資本から資金を調達している。株主に対する配当は税引き後に対して、有利子負債の支払利息は税引前であるし、資本コストとしても株主資本は高い。
ところで、利益の後に税金を払い内部留保に回すことになるが、損益計算書では実際の現金(キャッシュ)を追うことができない。だが、キーエンスの場合は一般的な製造業と比べて著しく高い利益率から現金が潤沢であることは簡単に創造できる。

問題は税引き後にその利益から産まれた現金をどのように活用するかまで考えないといけないのだ。
内部留保された利益はもし、利益率が高く、現金としても大きく蓄積されるのであればバランスシート(資産)はどんどん膨らんでしまう。
そうなると調達資金に対する利益率は低下するし、使い道が無い現金を大きく抱えてしまうことになる。

儲かっている企業でありかつ拡大・成長方針が明確に定まらない企業特有の悩みであり、一般の製造業者からみたらうらやましいことなのかもしれないが。

キーエンスがまさにそのような状態だと見ることが出来る。例えば、売上高1360億に対して、1180億もの有価証券を保有している。しかも投資目的ではなく、国債といった投資に対するリターンが調達コストよりも低い有価証券である。現金を持つよりは良い(現金は持っていても増えないから)という考えにも見て取れる。

ここはどのように解釈するかは投資家判断になる。

キーエンスの有価証券に対する投資によって財務キャッシュフローを増加させ、営業キャッシュフローから入ってくる潤沢な現金をなんとか減少させようとしているのだと見ることができる。

結果として本業では高い利益率を得ながら、調達したカネに対するリターンを落としている。

次にどの分野へ向かうのか、将来の成長戦略を構築を既存事業以外に見出せない企業では、実はこのような財務戦略をとる企業は結構ある。他にも数社まったく同じことをしている企業を知っている。


Comments