›6 12, 2006

非時価総額経営(会社の価値と時価総額は一致するのか?)

Category: 経営戦略 / 0 Comments: Post / View

時価総額経営とは、株価を最大限に上げることを経営目標とする経営スタイルのことである。顕著なのが、ソフトバンクや楽天、ライブドアであり、上場しているITベンチャーの多くが時価総額経営と言われている。米国では時価総額を最大限に高めるこの時価総額経営が当たり前のように言われている。

さらに言うと、株主の利益を最優先させている経営とも言える。

時価総額経営の特徴としては、利益が得られていなくても将来の利益を期待して高株価が得られる。利益や資産に対する株価の割合(PERやPBR)が高い。この高い株価を利用して株式交換によるM&A(つまり金は無くても企業が買える)により将来性の高い企業を買収し、さらに株価を上げるということだ。
配当は当然行わず、将来への投資(資本へ組み込み)を行い、さらなる株価の上昇により株主へ利益を還元する。

将来への期待というものが市場から失われた場合、株価は当然下落する。
株価が低くなった場合、もともと利益が株価に対して少ないので、資金繰りに苦しむことになる。

将来の利益を現在価値に直しているのが株価だが、その将来への展望というのは非常に不確定である。だが、その不確定を見越して投資家はその企業に投資する。

時価総額経営を行う経営者は、将来への明確なビジョンとその実行可能性を持つことが必要である。

他方、非時価総額経営の企業は多数ある。明確に時価総額の増大を狙わないと決めている企業である。

はっきりと時価総額の増大を目指さないなどと当然投資家には説明しないが、そう感じる企業はある。多くが駄目な経営者であるが、優れていると思う企業もある。

例えば、キーエンス。この会社の利益率の高さは群を抜いていると以前説明した。=>無借金経営キーエンス

この会社の製品開発プロセスや、ファブレスによる合理化は素晴らしいものを感じるが、時価総額経営とは思えない行動を取っている。

無借金経営
営業利益率50%以上
従業員平均年齢31歳で平均年収1300万円
顧客1社における割合は1%以内に留め、それ以上になる場合は受注を拒否する。
利益率20%に満たない事業は売却
ゴールデンウィークは全社員に10万円を支給し、休ませる。
年3回の連続休暇は7日以上
(慶応ビジネススクールケースより)

例えば、無借金経営であるが、これは会社の利益を実は圧迫させる。株主の求めるリターン(配当)の方が有利子負債(銀行)や社債よりも遥かに高いからだ。株主から見たら利益はどんどん上がってきて、内部留保は増えるがその金(キャッシュ)の使い方が見えてこない。金がじゃぶじゃぶ余っているように見える。キャッシュを眠らせていることは、利子も付かないので最低な経営者と見られる。

利益率が高いから気にしていないだけかもしれないが、このような高いコストによる資金調達、キャッシュを有効活用していない経営は、例えば村上ファンドのようなもの言う株主の絶好のターゲットになってしまう。

その他、業界内で高すぎる従業員の給料、待遇は経営を圧迫させる材料になるので、物言う株主だったら下げるよう言うだろう。

キャッシュで自社ビルは買っても、他事業で利益を出そうとしない点も詰められるだろう。

将来への大きな展望(他分野M&Aなど)も特に無い。アピールしていないだけか?
自社内でのIR情報の扱いも非常に小さい。単に過去の利益の推移があるだけ。

これほどの収益力があるのであれば、新分野進出による更なる付加価値製品を創出することで社会的地位向上だとか、競合と住み分けしていないでシェアを取るという戦略があっても良いかと思う。(競合のオムロンは利益率はキーエンスに比べるとだいぶ低いが売上高、社会的名声は遥かに高い)

こうしてみると、キーエンスは自社内、社員に利益を還元させることを目的としていると見れる。株主への還元を目標にしているとは感じられない。

社員に利益還元といっても金銭面での還元だ。

これは時価総額経営の企業とは大きな違いだと言える。

ただし、キーエンスはもし物言う株主がいたとしても、それを黙らせるほどの大きな営業利益率(製品開発プロセス、合理的な製造プロセス、顧客フォローが超優れているから)を維持している。

でもなんで上場している意味あるんだろうか?
する必要があるのだろうか?していないのだったら、株主からつつかれるようなことは一切無く最高なんだけどなぁと思う。

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