›6 27, 2006

WACC (Weighted Average Cost of Capital

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バリュエーションでやったWACCやEVAを書いたがWACC自体がファイナンスで非常に重要なので説明しておこう。

会計上の財務指標である売上高や経常利益、経常利益率といった指標があまり役に立たないことは散々書いてきた。理由は大きく2つある。

まず、会計上の利益は設備投資に要したキャッシュが減価償却費に変換されてしまっている。その他にも損益計算書が信用できない点が多々ある。

2つ目が重要なのだが、損益計算書の売上高、経常利益、営業利益だけの指標は結果論であり、初期投資のコストが考慮されていない。

例えばパチンコでも株でも100万円稼ぐのには元手がいるでしょう。その元手のコストです。

企業においても同様でその元手のコストのことが簡単に言えばWACC(ワックと読む)である。

企業における元手のコストは何かというと、有利子負債(銀行からの借入、社債)のコストと株主資本(投資家の出資)のコストの2つにわけられる。その2つを同時に見て、加重平均したものがWACCである。

WACC=(D/V)Rd(1-T)+(E/V)Re
(V=D+E)

ここでReは株主資本のコストで、これは言い換えると株主の求めるリターンであり、期待収益率と呼ばれる。求め方はCAPM参照

Re=Rf+β(Rm-Rf)

ここでRfとはリスクフリー・レート(リスクの無い債権の利回り)
β(ベータ)とは株式のリスクである。
(Rm-Rf)はマーケット・リスクプレミアムである。

とβという統計のヒストリカルデータを用い、1のとき、その企業の株価はマーケットと同じ動きをするためリスクが無いと考えられ、1以下のときは、マーケットより価格変動が少ない、1以上のときは、マーケット平均より価格変動リスクが高い。

このβに対する批判は多いのだが、多くの批判がトンチンカンである。投資家それぞれで期待収益率は違うでしょうという批判は、α(アルファ)という指標で投資家それぞれの期待収益率を計るという非現実的な理論がある。ちなみにαはインデックスに対しての利回りの高さの差というファンドを構成するときのリターン測定では使われる。

有利子負債のコストは、金利なのだが、税控除されるため税引後に換算する。

さて、WACCが小さいほうが、小さいコストで資金を調達しているということになる。現実的には株主資本コストの方が有利子負債コストより高い。そのため有利子負債を多く活用しようとする(DE比率を高くする)と今度は、会社の格付けが下がってしまう。

DE比率が高くなると株主の期待収益率が高くなるという記述があったが、βではDE比率は無関係である。現実的には会社の格付けの影響を株主も考慮するということはある。

βでは、会社はマーケットに対して株価の変動が小さいほうがコストが小さいとする。この考えが理解できない人はβを批判する。コストとはあくまでもマーケット平均に対する変動の差ということが理解できないのであろう。

さて、WACCの概念について理解できたかと思う。
WACCつまり調達資金のコストと比較して初めて売上高、利益といった数値が尺度として測れるのである。(利益の信憑性は置いておいて)

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