›11 20, 2006

デスバレー(死の谷)

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デスバレーとは、ベンチャー企業が資金的なゴール(上場するか買収されるか)を迎えるまでに直面する倒産の危機のことを指す。

ハイテク業界におけるマーケティング上の死の谷(キャズム)とは意味合いが異なる。

そもそも倒産とは企業の資金が破綻し、弁済期における債務を弁済できないことである。2回目の不渡りがレッドカードとなる。具体的には銀行取引停止処分となるため、資金繰りが完全に絶たれて、企業の永続活動ができなくなる。

業界によってデスバレーは異なるが、ここでは急速な成長が期待できるがリスクも高い研究開発型ベンチャーのデスバレーを見てみよう。

デスバレーは研究開発期、製品開発期、成長初期の3回にそれぞれ違った意味合いで迎える。

研究開発期:売上はほとんどなく、製品開発のための資金が必要である。社歴が無いため銀行に対する信用は無く、公的機関やベンチャーキャピタル(VC)から資金調達できるかが焦点となる。
製品開発期:売上が少ない時期である。製品開発のスピードと顧客獲得が命である。
成長初期:量産の時期である。従業員の増大や経費の増大のため運転資金が必要となってくる。このステージでは、安定成長と銀行からの資金調達(ができるか)が重要である。
初期のステージにおいては、どんなに良い製品・サービスを開発していても売上が上がっていないため資金調達ができないと給料も払えないし、家賃などの固定費も払えない。

例えば「ナナロク世代」では、いち早くドリコム、ミクシィが死の谷を乗り越えた。それどころか上場によって必要以上の莫大な資金調達を行い、資金繰りで倒産することは無くなった。

ペーパーボーイはGMO傘下となり資金面での不安が無くなった。GreeはKDDIから第三者割当増資による資金調達を行った。

そして監査役を選任したことを考えると、来期は上場の計画を立てているのではないだろうか?

デスバレーにおいて、成長期に資金が必要になるのは、規模の拡大のためだけではない。上場する場合には莫大な資金が必要となるのだ。

人材面では、常勤監査役に非常勤監査役3名。内部監査室、上場準備室に加え監査法人への費用、主幹事証券への費用も発生する。VCから多額の資金調達が必要となってくるのである。売上・利益の実績が無ければ銀行からの資金調達も困難なため、資本コストの高い直接金融(出資者からの資金調達)に限られてくる。

しかも売上、利益ともに将来に渡り成長が確実視されないと、上場はできない。そのため経営者のみならず、上場できない限りほぼ資金回収が不可能なVCは必死である。なんとか協業などで売上、利益を確保しようとする。

だが、それでも多くの企業は上場できない。そうなった時は企業永続が不可能な企業になってしまう可能性が高い。VCから追加資金調達できない限り、上場準備のために膨れ上がった経費に、自社の製品・サービスの販売からの売上で耐えられる企業は少ないからだ。
最近では急速にIPO後の株価が低迷している。インターネット関連企業は値段が高くつくという神話も、メンバーズ上場の予定株価割れによって崩壊してしまった。

そう考えると、研究開発型企業でも上場が厳しいと判断された場合は、命取りになるのではないだろうか。


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