›7 07, 2006

マネジメント日誌010「資本政策」

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会社は目の前にある危機を抱えつつも当面順調に受注が続いていた。従業員は製作に役3ヶ月かかる自社製品を変わらず同じやり方で生産を続けていた。
本来製作が難しいはずのハイテク機器であるにもかかわらず、何度も製作をしているうちに頭を使わずに生産が出来る体制になっていた。未だに誰もこの自社製品が売れなくなるなどという心配をしている気配は感じられなかった。

急激な需要過多であり、これは偶然とも単なるブームとも私は感じているのだが、一般社員がこのような心配などするはずもなかった。一時的なブームの恐ろしさは、将来すぐに財務面への負担としてのしかかってくることを危惧していた。

マーケットシェアが非常に高いが、かといってそれほど自社の競争優位は単なる先行者メリットしかなかったのだ。他社が追従してくれば、やがてシェアが奪われる。

社長の考えは、そのシェアが奪われては困ると考えていた。この自社製品は今までにない利益率を上げていたからだ。

そのために積極的に人材を採用し、設備投資を行った。だが、次の自社製品に対する投資は行える状況ではなかった。

当社の資本政策は銀行からの有利子負債にたよっていた。自社製品のブームのためキャッシュフローは潤沢であったが、かつて貸し渋りを経験していた社長は、業績の良い時期に必要でなくても銀行からの資金調達を行っていた。

自己資本比率は非常に低かった。それは利益を税金で取られた後の内部留保や役員賞与からの自己資本増加は社長は馬鹿らしく考えていたからだ。

それよりは、人材採用や設備投資に金を使ったほうが良いという考えであった。

私は、内部留保、自己資本比率の低さが気になっていた。この自社製品が売れなくなったときが恐ろしかった。会社を維持するコストが億を超えていたからだ。さらに一般的にこの業界での製品の売上高利益率が非常に低いこともある。客の仕様変更やちょっとした設計ミスですぐに赤字になってしまうのだ。

私はなんとかして直接金融を通じて資金を調達できないか模索していた。

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