›11 01, 2015

「日本の経営」を創る

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一橋大学を同年に創業し、ボストンコンサルティングから企業再生専門のコンサルタントとして活躍し、ミスミの経営を引き継いだ三枝 匡氏と経営学者である伊丹 敬之氏による対談だ。

実務をこなしてきたコンサルタントとしてミクロな視点から経営を語るのに対し、経営学者は企業で働いたことがないのでマクロな視点で語る。
咬み合わないようで、お互いに話を合わせようとする。
自己主張が強い2人であり、自己の信念と理論が完全に構築されているので、曖昧さはない。

2人が一致するのは、日本企業に共通する「戦略性の不足」だ。
日本企業ではマネジメント経験の不足であったり、経営理論を学んでいない者が経営者として普通に働いている。
それで企業間の競争に晒されているので、本来であったら恐ろしいことである。
しかし、それでも日本企業が強いのは、経営戦略の欠落を補う別のものが存在するからだと再認識した。

それは、例えば品質に対するこだわりであったり、同一民族性からの助け合い精神であったり、勤勉さであったりする。

「社内統制が緩い」にもかかわらず会社が回っているのだ。

三枝氏は、ミスミの経営を引き継ぎ、創業者が30年以上かかって売上高を500億にしたのを、わずか4年で倍の1000億にしたという。現在では2000億円の会社であり、この成長を持続させれば1兆円企業になることも夢ではないだろう。(ご高齢であり猶予は限られているが・・)

また、三枝氏はコンサルタント時代から著名で、実話をベースとした経営小説を書いており、多くのビジネスマンに読まれている。
中でも、『V字回復の経営』は増補改訂版では、実話の元となったコマツ産機の鈴木氏(現 アーク社長)との対談を巻末に挿入されており、経営者必読の書となっている。

さて、三枝氏が経営コンサルタント時代から一貫している経営手法は、組織を細かく細分化し、「創って、作って、売る」(バリューチェーン)を速く回すことだ。
ミスミではこれを「スモール・イズ・ビューティフル」と読んでいるようだ。
さらに、「時間と戦う」というコンセプトというか理念のもと、社員は行動規範としているようだ。何ともせわしないイメージだが。。

本書では、仕事にかける「熱き心」の重要性を説いている。
いくら戦略が優れても、リスクを負って成功のために追求しなければ意味が無い。

「戦略志向の論理性、計画性」、
「業務遂行能力」
「抽象化、理論化、敷衍化」

これらが無いと新しい競争環境で戦っていくことができない。

真剣に戦略と実行のプロセスを繰り返していけば、転職しても業界が変わっても通用する。

どんな会社にも同じような人間はいるし、大抵のことは「いつかどこかで見た光景」と思えるからだ。



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