›10 25, 2015

三浦知良(キング・カズ)の父は(キング・ファーザー)

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三浦知良の生い立ちは冷酷なものだった。そしてマスコミには登場することのない犯罪者の父の熱狂的なサッカーへの思い入れが日本を代表するサッカープレイヤーであるカズをつくりあげたのだ。

マスコミの情報からカズのイメージは、貧しい母子家庭で母のお好み焼き店を手伝いながら兄と妹と切磋琢磨してサッカーに励み、ぱっとしない選手だったものの、ブラジルへの単身留学で孤独な環境の中、努力を積み上げてブラジルのプロサッカー選手になったというサクセス・ストーリーだった。

ところが、事実は違う。

三浦知良は狂信的なサッカーファンである父・納谷宣雄によって人工的につくられたサッカープレイヤーなのだ。

ブラジルの大都市サンパウロに日本人街リベルダージの一角に日本の歴史館がひっそりとあり、そこには過去の日本人移民の歴史とともに、三浦知良のブラジルでの成功を称えた展示が存在する。

30年以上前のブラジルの情報が入らない時代に、高校生のカズがどのような心境で留学したのだろうと、その展示をみて疑問に思った。

しかし、カズは単身で留学した訳ではない。父・納谷宣雄がブラジルにいて面倒を見続けたのだ。

納谷宣雄は日本サッカーを裏から支えた人物でもある。

狂信的なサッカーファンであり、天真爛漫な正確である納谷宣雄は、父親としても社会人としても失格者だった。
しかし、日本のサッカーを実は影で支えてきたのだ。

サッカーボールに麻薬を詰め込んで運んで捕まってからは犯罪者として日本に住めなくなり、離婚した。ブラジルで再起を考える中でいかがわしい商売を続けながらも、人生の中心はサッカーだった。

そしてブラジルに次男・三浦知良を留学させプロで、日本を代表するサッカープレイヤーに育て上げるのだ。

この本では、納谷宣雄の波乱万丈で、影でサッカー界を支配するまるで「ゴッドファーザー」のような人生をインタビューと現地訪問で克明に表現している。

「ドーハの悲劇」
ロスタイムでの失点で日本はワールドカップ出場の機会を逸し、三浦知良はサッカー人生でワールドカップ出場の機会を逸してしまった。
しかし、ワールドカップ予選で、審判の買収を納谷宣雄は目論んでいたのだ。結局それは実現しなかったが、審判を買収していたらロスタイムに延長することは無く試合終了の笛は吹かれていただろう。

スポーツ界に蠢く魑魅魍魎の人物の代表格である裏社会の人物であり、表社会のスーパー選手の実の父という存在に強烈に惹かれるものがあった。


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