›1 03, 2015

30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由|杉本宏之

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杉本宏之氏といえば、かつてエスグランドというワンルームマンション販売を経営し、一世を風靡したやんちゃな若き起業家というイメージがこびりついている。
川崎の不良チーマーで悪さをしていた高校生が、卒業後不動産会社に入りのし上がっていく。不動産会社を設立後、時流に乗り上場、そして無謀な経営拡大の末、破産してしまうのだ。
彼の父もまた、不動産会社を経営したものの倒産し、金持ちから生活保護にまで転落してしまう。

まるで父子同じ人生を歩んだかと思っていた。

本書では、上場後の贅沢三昧な生活から一転し、リーマンショック以降の崩れ落ちるような経営不振から債権者による追い込み、自己破産から借金をして会社設立し、再起するまでの壮絶なストーリーが繰り広げられる。

杉本宏之氏に対する怒り、怨念、妬みを抱えている多くの人がいるだろう。何しろワンルームマンションの販売に嫌な思いをした人や大損した人は大勢いるだろう。
投資用ということで頻繁に電話を受けたことがある。投資ローンが降りやすい上場企業社員や公務員へ徹底した売り込み電話を行う販売手法だ。
借金させ投資不動産を買わせるのだが、投資は自己責任だ。購入した多くの人が逆ざやや借金やメンテナンス費用の重さに耐えられない。

不動産デベロッパーは、少ない自己資本から過剰流動だった銀行融資でレバレッジを掛け物件開発し販売し、大きな収益を得ていた。
エスグラントでは業績を更に拡大させるため、ひたすら拡大路線を進めた。リーマンショックで融資が降りず、前期史上最高益をあげていた不動産デベロッパーが次々と破綻していく。

窮地に陥ったエスグラントは、貸し剥がしと債権者からの取り立てに苦しむこととなる。下請けの建設会社は、どうしても金が必要だ。しかし払う金が無い。下請け会社の社長は「おまえを殺して、俺も死ぬ」などと詰め寄る。
上場会社で無い中小企業の社長は、個人保証や連帯保証人付きで銀行借入をしているのだろう。会社が潰れることは、自分や家族の破産だけでなく、他人まで破産させるかもしれないのだ。必死で回収しようとするだろう。

それでも払わない。払えない。

このような状況でも杉本宏之氏は僅かな希望を失わず、苦しみながらも前に進む。
しかし、客からの預り金まで銀行に回収されたのを期に、とうとう諦め破産するのだ。

400億もの借金だ。多くの人を苦しめたことだろう。
倒産し、自己破産した後も、因縁を付けられ、絡まれることも多々あったようだ。

自己破産後も免責されない税金を支払うため、知人に借金をし、妻と子供には逃げられても、生き続け、更には多くの人の協力を得ながら復活へ動き出す。

過去の部下、経営者仲間、友人達の協力を得ながら前へ進む。
窮地に陥った時に、どれだけの仲間から支えられるのかが人間力だと痛感した。

恨みを持つ者も多いが、慕い、助け舟を出す者達がいることは素晴らしい。
起業家には怪しい組織や人物も近づくが、彼の周りは新興企業の経営者から、著名な政治家、経営者まで多くの人脈があった。
ホリエモン、サイバーエージェント、グリーなどから老舗企業の年配の創業者までの人脈。起業家はサラリーマンとは決定的に違うものを感じる。

事業を失敗し、もう表舞台に上がれず細々と生き続ける者がいる一方、こうして多くの仲間に助けられ再起する者がいるということを多くの人に知ってもらいたい。そして、再起できる日本社会は捨てたものじゃないと痛感させられた。

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