›12 16, 2014

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ

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振り返ってみると、自分は社会人になって間もなく橘玲の書籍に影響を受け続けてきた。
約15年前、「ゴミ投資家のための人生設計入門」という本書と内容が同じ書籍を見つけ、貪るようにシリーズを読み進めた。
そこには社会人として当たり前の目標であったり、人生設計の根底である住宅ローンと生命保険を否定していたのだ。

思えば、社会人になって当たり前の前提が崩れていた時期でもあった。
山一證券が倒産し、大企業が当たり前のように潰れ、終身雇用が崩壊し、IT革命によって産業が大きく変わる期待があった。女性は一般職で男性が総合職という括りも無くなり、専業主婦も減っていくだろうなと思った。

「ゴミ投資家シリーズ」を読んでいたからか、同僚や同じ職場で働く人たちを斜に構えて見ていた気がする(笑)。
書籍「ゴミ投資家シリーズ」の案内からだったか、海外銀行や海外証券会社をつくるセミナにも参加した。ちょっとした小金持ちよりも自分と同じような若くて貧乏そうな人達も多く参加していたのが記憶に残っている。

数年経って「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」が出版されて読んだが、「ゴミ投資家のための人生設計入門」をちょっと直しただけだったので、最初に読んだようなインパクトは無かった。

その後、海外の銀行も証券会社の口座もつくったが、当時とは情報量も違うし、自分の英語能力や海外での交渉能力も全く違うから大きく成長したと思う。
しかし、未だに自分の同年代(アラフォー)は90年代からさほど変わらない価値観で生きているし、橘玲の書籍でも出てくる金銭的な自立であるとか、政府に頼らず生きていくリバタリアン的イデオロギーは未だに普及していない。

むしろ20代から30代前半には、独立や転職を息巻いていた連中も、すっかり会社の居心地が良いからか、年齢と共にもう市場価値が無くなってしまったことを自覚したからか、おとなしくなってしまった。

家族が出来て、マイホームのローンや生命保険や教育費の支払いに必死で、働いて借金を返すだけの生きる奴隷のようになってしまった者も多い(笑)。

今回、大幅に改訂された「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ」を読んで、まず驚いた。
これまで語られることの無かった橘玲氏が脱サラして作家になるエピソードが詳細に書かれているのだ。

彼もまた、ごくありふれた家庭持ちの中年サラリーマンだった。出版社で働いていたこともあり、90年台半ばから出版業界の将来を危惧していたのが独立の根底のようだ。出版業界にいたとは思えない高度な金融知識を習得していったのは、何とマイクロソフトの株を買うためだったのだ。

もちろんバブル崩壊から間もない頃から出版業界の構造を見破り、爆発的にWindows95が売れていたとはいえ、その米国株を買おうと思ったからには特別な才能の持ち主だっただろう。それは、その後の作家として金融業界の知識から政治、イデオロギー、人種、マッドサインエンスまで幅広くカバーしていることからも分かる。

原書を読んでも気づかなかった社会的な関連や、読者に訴えるものは、元々ただのサラリーマンだったからだろう。

「ゴミ投資家シリーズ」から海外への金融機関への投資が広く知られることとなったが、実はそれ以前から、金持ちは節税のために利用していたのだ。そこにはブローカーが多くいて、筆者も脅されたり勧誘されたり、様々なことがあったようだ。

橘玲氏は作家になるよりも速く、確実に大金持ちになることが出来ただろう。社会の歪みと、情報の格差を利用して。
それでも、1冊2000円もしない書籍によって日本人を啓蒙してくれたことに大きな敬意を払いたい。


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