›11 29, 2014

臆病者のための裁判入門 |橘玲(著)

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「裁判は弁護士にとって金儲けのビジネスである」、「保険会社は保険金を支払わないことで儲ける」
資本主義経済でビジネスの視点で考えれば当たり前のことが本書を読むと実感できる。

本書は外国人である知人の保険金不払い問題に巻き込まれた筆者が裁判に参加することによって、日本の司法の問題と一般市民が裁判沙汰に巻き込まれた時にどのように対応すれば良いのかについての体験談と指南書である。
筆者の知人の乗ったバイクが高級車との接触事故を起こした。その知人は日本語があまり話せないことをいいことに、保険会社は保険支払を行わず事故の当事者が保険請求をせず自腹で処理するというでっち上げを行ったのだ。保険の支払はたかだか12万円程度だが、筆者と知人は本人訴訟による裁判を起こすこととなる。

読み進めると保険会社の理不尽さに対する憤りが増すことだろう。
そして、誰もが当事者になりかねない。

そもそも自動車保険に対する不信感がある。
ちょっとした自損の修理を保険を使って修理などすると、自動車保険の等級が下がり保険料が値上がりしてしまう。
保険は万が一のための商品ではあるが、その万が一怒った時にもし支払われなかったとしたら、何のための保険だろうか。

保険はギャンブルと同じだ。違うのは運が悪く事故を起こした時に貰えるという点だ。

本書のケースでは、少額請求であり、当事者が外国人であることを保険会社が巧妙に利用した保険金不払い問題であり、金融監督庁が介入すべき重大な問題だと思われる。
しかし自体はそんなにうまく進まない。

筆者が法テラスで相談したヤミ金ウシジマ君の登場人物そっくりの弁護士は、裁判は弁護士にとってビジネスであり、保険会社が保険金を払いたくないのもまたビジネスであると身も蓋もない正論を言う。
弁護士は儲からない裁判など相手にしない。

裁判には正義など無いのではないかと思ってしまう。

そして一般市民は少額であれば裁判など起こさず泣き寝入りしてしまうのだ。
しかし、筆者らは、たかだか12万円の請求に対し、それを遥かに上回るコスト(時間を含めた経費)を使い裁判を進めていくことになる。

結果として、虚偽の説明と処理をした保険会社の社員がその後社内でどのような処罰を受けたのか、受けていないのか、この酷い保険会社名が分からないのが残念であり、また裁判結果に対しても読むものは納得しないだろう。
それでもそれが現実であり、しかも画期的な裁判結果であるという事実を知ることが、起こりうる一般市民の民事裁判を考える上で重要な意味があった。

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