›10 25, 2012

生産性向上が世界的な失業時代をつくる

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過去100年間で人類はこれまでにない進歩を遂げ、豊かになった。それは産業革命と情報通信のもたらした恩恵だ。
日本の農業の従事者は10分の1に減ったが、生産量はそれほどまで減っていない。生産量が増えても人員増加しない製造業も沢山ある。
それこそが生産性の向上だ。

農業などは昔は人手で畑を耕していた。それが馬などを使い、やがてトラクターなどに変わり、人手の作業の何十倍もの効率で仕事ができるようになった。
10人必要だった人が1人で同じ作業ができるのであれば、その1人が利益を独占して残り9人分の利益を得ることができる。残りの9人もそれぞれまた仕事をすれば良いのだ。
このようにして人類の供給能力は劇的に高くなった。またその供給力を満たすだけの潜在的な需要が膨らんでいったのだ。

製造業においてもこの考え方は同じで、ロボットによる自動化が進み、安い人件費の他国での生産というグローバル化によって生産性を高めてきた。
今ある生活は高度に分業化されているがこれもまた生産性向上という効率を劇的に高めた結果である。

生活に必要な製品をつくれば売れ、娯楽や満足を得る製品をつくれば売れ、といったように需要は無限にあるように思えたのだ。しかし、現在は需要が限られている。新しい需要をつくりだすようなイノベーションがなかなか登場しなくなってきたのだ。

先ほどの農業の例でいえば、1人で10人分の作業ができるトラクターを納入して9人が仕事を失ったら、その9人は新しい土地が無いため次の仕事ができない状態、もしくは新しい土地で生産を同じように始めても、そもそも需要が増えないため倍の生産量になてっても元の生産量しか必要ないと言われてしまったような状態だ。

半導体や電機メーカは相次ぎ巨額の赤字決算で大量のリストラを断行中である。これまでは生産性を高めた分だけ新しい仕事があったのに対して、今はもう新しい仕事が無いのだ。スペインやギリシャの失業率は20%を超え、若者の失業率は50%を超える。

生産性の向上で利益を得た人は利益を独占するが配分はしない。現代社会ではこれは政府が税金で徴収し、失業者に配分する仕組みで誰もが飢え死にしないで生きられるようにしている。

日本が20年もの長い年月不況に陥っているのは需要不足によるデフレだ。企業は利益を出し続けなければ存在できない。だからリストラやコストダウンによる生産性向上を行う。新しい需要を生み出さなければ、ますます失業者は増えていくだろう。

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