›12 13, 2011

運転資金回収期間と売上債権

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「モノを仕入れて販売してお金をもらう」というのが商売の基本であるが、業界や商慣行や販売する企業と購入する企業の力関係によって支払いの条件は大きく異なる。
売上債権とは製品を販売・納入・検収したのちに売掛金であり、残り顧客から支払われない期間が長ければ、その間の運転資金を確保しなければならず、また借入の金利負担、資本コストの負担が発生する。

売上債権回収期間が長ければキャッシュフローに大きな影響を与え、場合によっては倒産することにもなる。

半導体装置メーカのエス・イー・エスは売上債権回収期間が2000年時点で200日と他の半導体装置メーカと比べて著しく長かった。海外の半導体装置メーカの売上債権回収期間が100日以下と比べると資金繰りが非常に悪かった。同社はその後倒産している。

エス・イー・エスの倒産の原因はリーマンショックによる急激な受注の落ち込みから資金繰りがつかなくなったことにあった。それ以前に、エス・イー・エスの事業である半導体製造プロセスにおける前洗浄(ウェット・ステーション)は大日本スクリーン製造と東京エレクトロンで市場の8割以上を占有していたため、業界3位以降は規模の経済に勝てず収益が悪かったという点も挙げられる。同業界で4位であったカイジョーはこの市場からその後撤退している。

さて、売上債権に関しては、日本の企業は海外の企業に比べて支払条件が極めて悪いことで有名である。例えば半導体業界では、検収後6カ月~9か月などという売掛金の支払条件がまかり通っている。ただし、海外の装置メーカは半導体業界では寡占や独占するプロセスを持っている企業は前金90%、検収後10%という支払条件で取引を行うなど、企業の力関係が大きく影響している。

運転資金は(売上債権+在庫-仕入債務)である。
運転資金回収期間(年)は、増加した運転資金÷当期未処分利益によって求められる。

半導体装置メーカの例でいえば、企業の成長は売上債権の回収期間に多大な影響を与えていたことが分かる。

キャッシュ・イン=当期純利益+原価償却費累計
キャッシュ・アウト=運転資金増減+設備投資累計

欧米企業の多くが、日本企業の半分以下の債権回収期間であり、さらに日本と比べ低い実効税率、無配当といった企業のキャッシュフロー政策が設備投資による事業拡大に多大な影響を与えたのだった。


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