›12 05, 2011

寡占市場における競争力(半導体装置産業の例)

Category: 経営戦略 / 0 Comments: Post / View

資本主義経済において企業は陣取り合戦のように市場のシェアを取ろうと努力する。成長市場においては多くの企業がひしめきあっているものの、市場が成熟するに従い、企業の多くが淘汰され、M&Aによる買収、合併により市場は少数の企業により寡占化されることとなる。

自動車業界においては、米国も半世紀前には100社以上がひしめいていたものの、米国企業はほぼBIG3と呼ばれる3社に集約された。中国においては尚も100社以上の自動車メーカが存在するのはその市場の成長性ゆえである。自動車産業も世界的には成熟期に達しており、世界的にM&Aが行われ、少数の企業に集約されることとなるだろう。

家電メーカにおいては、国内では成熟市場どころか衰退産業になっているにもかかわらず、今だに電機メーカが過酷な競争を繰り広げている。日本国内でのM&Aが遅れているためである。

さて、半導体業界におけるとりわけ半導体装置市場は過去急速に成長し、成熟した産業である。半導体装置メーカは日本における主にNTTの設備投資に支えられ、世界的なシェアを取っていった。「日の丸半導体」だとか、「半導体は産業のコメ」と80年代には呼ばれたものである。

その後、日本的経営の保守性や機密の外部流出から、海外勢の猛攻撃を受け、積極的にM&Aを行った海外企業の台頭などの市場環境にさらされることとなった。

半導体装置メーカは前工程と後工程に分けられる。ダイシングというシリコンウエハーを切る工程によって前後工程が分けられるのだが、前工程は完全な寡占市場である。前工程の半導体装置メーカには、米国AMATという巨人を筆頭に、オランダASML、東京エレクトロン、米国Lam Research、米国KLA-Tencor、大日本スクリーン製造、オランダASM International、日立ハイテクノロジーズ、ニコン、米国Novellus Systemsがある。

半導体製造工程には、設計、マスク製作、ウェーハ製作、ウェーハプロセスから成り、洗浄・乾燥、フォトリソグラフィー(レジスト処理、露光)、真空蒸着、スパッタリング、CVD、エッチング、ダイシング後は、ダイボンディング、ワイヤーボンディング、モールディング、欠陥検査・修正といった半導体装置メーカがいる。

半導体装置メーカの巨人AMATはエッチング装置、スパッタリング装置、CVD装置、CMP装置、Cuめっき製造装置、エピタキシャル成長装置に特化してそれぞれの装置で市場シェア1位を取るような企業である。半導体装置メーカ2位のASMLに関してもセグメント化された市場に特化しており、ステッパー、スキャナ装置で市場シェア1位である。

このように半導体装置メーカというのは、半導体の工程の一部に特化して、その工程の装置において圧倒的なシェアを取ることが競争力となっている。実際、半導体製造前工程においてほとんどの各工程の1位企業が市場の半分以上のシェアを取得している。

「徹底解析 半導体製造装置産業」等によると、半導体装置メーカは各工程で市場シェアが60%を超えると限界利益率が60%を超え、シリコンサイクルの底辺においても10%の営業利益を獲得できている。またトップ企業の市場シェアが40%未満であると限界利益率40%を切り過当競争に陥りやすくなっている。

このように資本市場において市場というものは寡占化される傾向にあり、市場において1位かつ圧倒的なシェアを取ることが競争上重要である。まさに規模の経済(スケールメリット)の働く世界だ。
企業の競争も戦国時代の陣取り合戦もまた似たようなものに見える。



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