›10 11, 2011

加圧トレーニング・ビジネスと自分でもできる加圧トレーニング

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「加圧トレーニング」の仕組みとは、腕と脚の付け根を専用のベルトにより、加圧(適切な圧力で締める)し、血流が適度に制限され、毛細血管が活性化され、乳酸が溜まりだし、成長ホルモンの分泌の促進が始まる。さらに、除圧後に成長ホルモンの分泌は通常の約290倍になるというデータがある。これにより体脂肪を分解し始め、筋肉合成が始まるとされる画期的な健康トレーニング方法だ。
加圧トレーニングは、佐藤義昭氏が長年の研究により考案した筋力トレーニングの方法であり、その関連製品やサービスは独占状態にあるが、2013年11月に特許が切れる。

加圧トレーニングの効果は、様々な芸能人、モデル、アスリートにより取り上げられており、人気も高まっている。経営戦略入門としては、そのビジネスモデルとマーケティング手法に非常に注目しているところである。

■「加圧トレーニング」のマーケティングの4P
マーケティングの観点から、「加圧トレーニング」は非常に成功している。

Product:特許に守られた製品であり、専用ベルトは高額商品である。また、ジムでの加圧トレーニングというサービスを専用トレーナー認定やフランチャイズに近いシステムを導入し、市場の拡大を図っている。加圧トレーニングを行うための器具は加圧インストラクターのみが扱えることとしているので、高額商品でありながら選択の余地の無い製品戦略をとっている。

Promotion:広告を打つよりも、より信頼性の高いパブリシティによる認知を図っている。芸能人、モデル、アスリートが採用し、テレビや雑誌で数多く取り上げられていることによって認知度が広まった。

Price:高額商品、高付加価値製品というポジショニングを取り、価格下落防止を図っている。

Place:単なる筋肉増強という市場から、ダイエットやアンチエイジング、神経麻痺患者の治療といった分野まで市場を拡大させている。

また、高額商品や健康器具・食品のような口コミによる認知度の拡大手法も興味深い。一部の芸能人がまだ無名であった「加圧トレーニング」を紹介したことから、芸能人の間でブームとなり、それが美容雑誌やテレビで紹介され人気が爆発した。これはプロダクトライフサイクルにおける、一部の先進的採用者であるイノベータが市場開発したともいえる。

ことの発端は、お笑い芸人の水道橋博士がベストセラーとなった「博士の異常な健康」で紹介し、芸能人や一般読者にも広がった。杉本彩、藤原紀香のトップ芸能人をはじめ、アスリートやモデルの相次いで採用したことから、圧倒的多数をすめる一般消費者の間でブームの火が付いたのである。

その後、「加圧トレーニング」を取り入れたジムが相次いで開業され、B21スペシャルのヒロミはジムの経営だけでなくトレーナーの資格までも取得した。

当初は、筋力トレーニングの手法に過ぎなかった「加圧トレーニング」は、その成長ホルモンの過剰分泌の効果から、整形外科の分野で取り入れられたり、神経切断で指が動かなかった人が血流が良くなり動くようになったり、うつ病患者の回復が見られたりと医療分野でも注目され、さらにはハゲが直ったとの報告まで出るほどで、高額医療商品や怪しい宗教のような神秘的な潜在能力のような注目度であった。


■「加圧トレーニング」の競争戦略
「加圧トレーニング」は特許であり、競争の存在しないブルーオーシャンに位置する。高額商品・サービスであるにもかかわらず、売り手の交渉力が買い手の交渉力を圧倒的に上回る。そのため、専用ウェア「カーツ」(上下で4万弱) は高額で売れ、専用のジムも基本的に高額である。

特許で守られていることから、「新規参入業者」の脅威というものが存在しない。しかしながら人気が向上するにつれ「代替品の脅威」に晒されつつあるのも事実だろう。


■自己流「加圧トレーニング」
手軽に試せないからこそ価値がある商品というのは沢山ある。しかし、それでも好奇心から一般消費者は手軽に代替品で済ませようと努力をするものである。
インターネットの掲示板には、自作の加圧トレーニングの器具(腕や脚を縛るロープ)を試した事例が沢山見つけることができる。

100円ショップで売られている本を縛ったりする多機能ロープや、より本格的には駆血帯と呼ばれる専用の腕や脚を縛るゴム製の帯を使って、独自に加圧トレーニングに取り組むユーザーが多く存在する。

縛り具合が、トレーナーがいないため自分で調整する必要があるのと、自己責任である点があるが、きつく縛って血管が若干浮き出る程度で腕や脚が軽く痺れる程度に調整して取り組んでいる人が多いようだ。

このように、自分でもできるということがわかれば、高額の商品やトレーナーの指導を受ける必要が無く、簡単にできてしまうのも加圧トレーニングの特徴だ。
成長ホルモンの効果というのはなかなか実感できないが、トレーニング後の血流の開放と共に感じられる恍惚感や筋肉の付き方は効果がありと思える。

また、加圧トレーニングを行う時間は5分程度と極めて短時間ではあるが、その後の成長ホルモンの分泌から体の新陳代謝の増大は1~2時間でピークを迎えるという。この時間における有酸素運動はダイエットに効果があるとのことだ。

現在も加圧トレーニングの人気は衰えを見せず、近所のスポーツジムでも加圧トレーニングが取り入れられたり、リハビリ施設でも取り入れられたりしている。
なかなか画期的なアイデアであるが、その後のビジネス展開と経営戦略がとても優れていると感心している。


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