›8 02, 2011

ウェルテル効果|1年間に3万人の自殺者

Category: 日々雑感 / 0 Comments: Post / View

日本は先進国の中で際立って高い自殺率となっている。97年まで2万人強だった自殺者数は98年からその後ほぼずっと3万人を超えており、身内や知人の中でも自殺した人がいるのではないか。なにしろ、年間3万人の自殺者という数字は、交通事故死者数の6倍以上である。

ウェルテル効果とは、メディア等による自殺の誘発する効果のことである。
ゲーテの「若きウェルテルの悩み」を読んだ若者が、主人公と同じ方法で自殺する事件が相次いだことから名づけられる。

日本では、かつて90年代前半に「完全自殺マニュアル」が発行され大ヒットとなったのと同時に、この本で書かれている方法で自殺する人が相次いだことがある。
また、有名人の自殺の直後は自殺率が上昇するというデータも見られている。

予断ではあるが、「完全自殺マニュアル」は自殺を勧める本ではなく、個人の自殺する自由を主張し、様々な自殺方法を紹介している本だ。倫理的に自殺はいけないという価値観を破壊し、生きるのも死ぬのも人間の権利としている点が学生時代に読んだ時に画期的に思えた。

1年間に3万人の自殺者の内訳として、病気を苦にする自殺者が1万5千人程、借金など金銭面での生活苦にする自殺者が1万人弱のようだ。
病気のうち鬱病が半分程度を占めている。鬱病の発症がリストラや失業が多いことも良く知られている。
実際、自殺者数と失業者の相関のデータもあり、深い関連性がある。なんと自殺者のうち無職者が60%も占めているのだ。

何故、98年から自殺者数が大幅に増加したのか。金融危機が発端という話や、住宅ローンの「ゆとりローン」というサブプライムローンのように数年後急上昇する返済額が支払えなくなってしまう商品のせいという話など色々がるが、全てに原因があるのだろう。

「ゆとりローン」はバブル崩壊後にも関わらず、景気回復を前提とした賃金の年齢に応じた上昇を前提に設計された。その後も景気刺激策として住宅ローンの優遇政策は継続的に行われてきた。
住宅ローンの返済に生き詰まって精神を病んでいる人は恐ろしく多いし、返済できずに自殺を選ぶ人もまた多いのであろう。

そもそも住宅を購入するという行為が無謀な者が多い。現在の賃金が維持されていることや、場合によっては賃金の上昇や残業やボーナスが支払われることを前提にローンを組んでいるような馬鹿もいるのだ。
現実には、住宅購入者の多くが身の丈に合っていない行為をしているのである。
まず、新築で購入するということは、多くの場合不動産取得時点で価値が劣化してしまい、その後に売却しても住宅ローンの借金が残るという状態に陥ってしまう。
また、住居は習得すると固定資産税もかかるし、将来のリフォームに備えた積立や維持費も必要なのである。その点を忘れて毎月の費用がかさんでいる人が多い。
そして、多くの人が結婚後子供との生活が前提で家を買うが、子育てが終わる20年後にはそのような広い家は不要なのである。

失業して収入が無い人もまた悲惨である。住宅ローンなど借金が無いとしても、養育費や生活費が必要だ。
それ以上に就職活動しても採用されないという社会に不要な人間という烙印を押されることがたまらなく辛いだろう。

これらの点で悩んで自殺を考えている人がいたらどうか冷静になって思いとどまってもらいたい。借金苦でも失業でも自殺する必要はないからだ。
借金苦に関しては、自己破産や住宅の任意売却などで借金をチャラにして人生をやり直すことはいくらでも可能だ。失業しても働かないで生活保護を受けることもできる。
仕事が無いからといって社会から認められていないということでは無い。無報酬でボランティアをやっている人の方がよほど社会に貢献しているとも思える。

将来に絶望してしまっている人も多いかもしれない。最近は、朝起きて新聞を読むと辛くなる。不景気は続き暗い記事ばかりだし、少子高齢化や財政破綻寸前の日本の将来が明るいとはどうしても思えないのだ。しかし、それさえも大したことは無いだろう。日本では飢え死にする人はいないし、平日仕事をして週末には休んで遊べるという環境なのだ。

辛いのが人生でもあるし、その中に楽しみや喜びもある。自分の不遇や環境をも笑い飛ばし、ひたすら前に進む楽観主義者が一番得をするのだ。


Comments