›8 30, 2011

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来

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本書は年功序列制度のかかえる日本企業の問題を分析したベストセラーである。
3年以内に会社を辞める者は今や35%を超えた。若者の忍耐力が無くなったなどと中高年は揶揄するが、辞めるには合理的な理由があると説明する。

その問題の核心はやはり年功序列制度にある。年功序列制度はねずみ講と同じで、中高年が若年層から搾取する構図となってしまった。これは年金制度と根本的には同じ問題である。
かつての高度成長期につくられた年功序列制度の前提には企業の業績拡大、人員増加があるのだが、もはやこれは時代にそぐわなくなってしまった。
逆に、企業が苦しめられているのは、中高年の高賃金、ポスト、そして解雇が出来ないということにある。そのしわ寄せが若年層に覆いかぶさってしまっているのだ。

もはや若者は大企業では課長にさえもなれない。賃金は平均すると中高年の生涯賃金の7割以下になってしまう。

現在の日本では、高齢者を支える社会福祉のために、生まれてきた子供は産まれながら1億5千万円もの借金を背負うと聞く。これと同じ構図が年功序列制度の企業に就職したときから若者は背負うという光景にみられるのだ。

3年以内に辞める若者は、その企業で生涯働くことの意義を考えたであろう。そして企業内でどのような人生を送るのか見えた時に辞めるという選択肢を合理的に選んだのだ。

3年で辞めなかった者、具体的には年功序列制度の下で30代になったものにとって最も読みごたえがあるだろう。それは30代になって年功序列制度の被害が直接的に受けるからだ。
賃金が上がらず、役職ポストも期待できない。上には団塊の世代からバブル期入社組の無能な管理職が大勢いる。
そんな中、結婚し、子供が生まれ、マイホームを住宅ローンで買った者たちは、完全に夢を失ってしまうのではないだろうか。

35歳を超えると転職が難しくなるという。40歳を超えるての転職はろくなところがないという。
これは、転職市場ができてまだ20年と新しく、ちょうどその年代が就職してからの年月と同じであると読んでいて気付いた。

もちろん年齢が上がるほど、体力は低下し、高い職務能力は要求される。それ以上に年功序列制度の解雇が出来ない企業においては40歳以上の中途採用ポストなど存在しないのだ。ところが、彼らは会社にしがみついて残っても今後はメリットは無くなるだろう。何しろ彼らはポストも無く、彼らの賃金上昇を支えるべき若年層も90年代末からの不景気による採用激減のためいないのだ。

今後テーマとなるのは、35歳過ぎの転職になってくるだろう。


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