›8 26, 2011

フランチャイズで借金地獄

Category: アントレ(起業) / 0 Comments: Post / View

サラリーマン社会から脱出しての一国一城の主を夢見る人々は多い。現在のような不況下では、リストラされたり脱サラして商売でもやろうかという中高年のサラリーマンが増加している。先日もフランチャイズ(FC)本部の多数集まる展示会を見学した。
今や、FCは1万以上もの本部があり、コンビニ、飲食店、ビデオレンタル屋、不動産屋、介護デイサービスまで幅広く存在する。

FC本部にすれば、事業拡大のために運転資金が必要無いというメリットと、オーナー(フランチャイジー)の独立起業して商売人になりたいという双方のニーズが合致しているように思える。
展示会でのFCのアピールはいかに儲かるか、成功者のインタビューなどを交えて積極的にアピールしていた。

ところが、フランチャイズで失敗している人の話題がそのような展示会の場で出ることはもちろんないし、あまり情報が入ってこない。
実は、ここにFC経営の大きな落とし穴があるのである。

まずは、FCの仕組みを説明しよう。FC本部とオーナーが契約し、FC本部がオーナーに 商売のノウハウ と自社の看板(のれん)を与え、見返りにオーナーはFC本部にロイヤリティ名目のテラ銭を支払うというのがビジネスモデルだ。
契約時には数百万円もの自己資金もしくは借金をつぎ込むのが一般的だ。その資金の回収には長い年月がかかるか、もしくは回収できずに借金が膨れ上がるかだ。

オーナーは多額の資金、場合によっては全財産だけではなく借金をしてまでもそのFCビジネスに投資をするのである。
これは見方によっては宗教のお布施と似ている。出家する信者は全財産をお布施する。もう後には引けない状況なのだ。そのような境遇に陥ると、あとはひたすら信仰を深め信じ続けるのが救われる唯一の道である。

FCのオーナーも後に引けない人が大勢いる。全財産がそのビジネスにかかっていれば辞めることはできない。借金が残る。FCを信じて突き進むしか無いのである。
実際に経営不振の大手コンビニのオーナーを何人か知っている。地域には複数のコンビニが乱立し、売上不振のためオーナー夫婦は24時間体制で交代で経営に当たっている。収益はロイヤリティとしてFC本部に上納金として巻き上げられ、そのコンビニではオーナー夫婦の時給を換算すると、アルバイトを下回っているという笑い話が出るほどだった。

また、最近増加している塾経営のFCについても言及しておこう。月謝が2万円として、600万円の年収を得るには、70~80人の生徒が必要とうい計算になる。ところが、全日本私塾教育ネットワークによると、「FC塾の生徒は平均して16~20名」とのことだ。これでは、塾講師のアルバイトを雇えないどころか、教室の賃金やチラシといった固定費を支払うとほとんど何も残らない。

自分が大学生の頃、最も長続きしたアルバイトが塾講師だった。時給で2500円程度だったと記憶している。夕方の大学生にとって遊びたい時間を拘束されるという欠点を覗いては家庭教師と並ぶ良い時給であった。そこでは50人程度の生徒と大学生アルバイトが5人程度で回し、アルバイトが急に休んだ時にオーナーが代わりに教えていた。オーナーは脱サラして塾経営をしていると話していたが、今考えると生活はとても厳しかったのではないだろうか。

FC以外にも独立起業として人気があるのが、マンション経営、アパート経営だ。ワンルームマンションを購入し、「リスクは無いから」「住宅ローンは入ってくる賃料で払えますよ」とうまいことを言われるのが常套文句であるようだが、空室が発生すると当然住宅ローンの返済に生き詰まる。また、販売業者や管理会社が倒産して、予定の賃料が入ってこなくなるとういリスクも多い。

FCというのは本部は通常多くの人員で構成されており、契約や法務にもたけている。それを脱サラしたFCビジネスを何も知らない中高年が契約するというのは非常に無謀なことだと思う。会社に就職して嫌だったら辞めればよいが、FCオーナーになるとほぼ辞めることはできないのだ。よほどの覚悟が無い限りこのような世界に足を踏み入れてはいけないと思う。

世の中では退職金の積み増しによるリストラで多くの人員が職を失っている。それでも彼らは残りの長い人生を稼ぎながら生きてい中ければならない。彼らの退職金はフランチャイズ本部にとってはおいしいマーケットと映っているのではないだろうか。


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