›5 02, 2011

ズッコケ中年3人組

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成人になると性格・人格は揺るぎないものとなり、なかなか変えることは難しい。
心理学などの研究結果においても幼少期から思春期に受けた経験や影響が、その後の人格形成をつくることは明らかになっている。
思考や判断などの性格の基盤はもちろん学習によって構築されるものであるが、生き方や人生観といったものは実際の体験や小説や映画による疑似体験が大きな影響を与えていると自身の体験からも実感する。

自分の今の性格と人格の多くが、冒険小説に多大な影響を受けたと中年になりつつある今思う。
小中学生の頃、両親が共働きで兄弟もいなかったことから、遊び相手は自分自身であり、今考えると冒険小説の中の世界に深く入っていた。
子供向けの伝記小説や歴史小説も読んだが、それは知識にはなったが、自分の人格形成に大きな影響を与えたとは思えない。

ちなみに、幼少期にひとりっ子など遊び相手がいない子供の中には、もうひとりの自分の人格が遊び相手となる「イマジナリー・フレンド」を持つ子供もいる。

大人になって小説を読んでも、感情移入はできても子供の頃のような小説の世界に入り込むほどの経験は得られたことは無い。
今となって考えると、子供の頃に読んだ冒険小説はとても貴重な体験であった。受験勉強には役立たないが、自分の子供にもぜひ経験させてあげたいことだ。

最近たまたま子供の頃むさぼるように読んだ「ズッコケ3人組シリーズ」を手にした。
子供の頃いくつも読んだ冒険小説なのだが、大人になった今でも新しいシリーズが出ていて懐かしくて手にしたのだ。
昔は読むのに一苦労した小説だったが、大人になった今では2時間もかからずに読めてしまう。
それでも子供の頃のような想像力を失った今では、あの頃のように鮮明な世界観と映像が読んでも再現できないのが残念だ。

思い起こすと、自分の人生は常に刺激を求めていた。
それは小説で次の展開をハラハラしながら読むのと同じで、何か新しいことを人生の中で見つけたい心の奥底からの欲求だ。
どんな困難や苦境でも、冒険小説の主人公のように切り抜けられる、スリルを楽しめるというのは生きる上できっと大切なことを読書で学んだのだ。

そんな思い入れのすごい強い「ズッコケ3人組」のシリーズは、実は当時小学生だった主人公が平凡な40歳の中年のシリーズが出ていて、またまた懐かしくて手にとった。
「ズッコケ3人組」のシリーズは、多くの男子にとってかけがえのない思い出のある作品であり、今読んでもとても懐かしい気持ちにさせてくれる作品だ。
等身大の子供たちだった小学生の主人公が、今度はまたしても等身大の中年として感情移入できる作品となっている。また、男というのはいつまでたっても子供なのだということとをとても実感させられた。

変化の無い日常、夢を見失った将来を漠然と過ごしている中で、何にでもなれた子供の頃に戻れる小説だ。

ちなみに、幼少期から思春期の楽しかった思い出を回想するのは、「幸福感」を得る脳内物質セロトニンを分泌させ、うつ病や認知症の治療にも実際に行われている。


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