›4 05, 2011

起業と個人保証と景気対策

Category: アントレ(起業) / 0 Comments: Post / View

起業・開業の動機というと、一般的には脱サラして温めていた事業計画を元に行うイメージが強い。
しかし、実際の起業・開業の動機の多くは、「仕方なく」や「それしか選択肢が無く」という必要に迫られてのものなのだ。
特に長期化する不景気下にあって、失業やリストラに伴う解雇が行われ、転職もままならない人が多く、いっそのこと自分で事業を行うといった動機が実に多いようだ。
本来の起業は、サラリーマンという雇われた立場よりも儲かり、制約が無いという自由や自己実現を求める動機であるべきだ。

次に起業するにあたり、まずは資金が必要となる。貯蓄や親戚からの借入を元に始めることとなるが、自治体等による開業の資金を支援する制度融資が多く存在する。
通常では銀行借入は実績と信頼を積み重ねないと受けることができないが、これらの制度を利用することにより資金調達が可能となる。

このように起業して事業を開始しても、1年間も持たない企業が多数であり、3年間続く企業はさらに少数となってくる。
つまり、起業しても多くは倒産してしまうのである。これが不景気における創業のリスクと実態である。そして経済は新陳代謝により発展していく。

しかしながら起業は景気対策に大きく貢献するメカニズムである。新しい製品・サービスが登場し、雇用が創出される。
日本における90%以上の企業は中小企業であり、中小企業により雇われている従業員もまた7割以上なのである。

現在の日本においては開業率は廃業率を大きく下回る。この背景の大きな要因に起業のリスクがある。それは、起業をして失敗時のリスクであり、倒産した場合に企業と創業者の個人保証により、本来株式会社として出資した範囲の責任であるはずが、借金に対しても起業家は全責任を負うのである。
これにより起業家の失敗時のリスクは、個人の財産の没収を意味し、失業保険も出なく路頭に迷うほどのリスクに晒されることになる。

日本の銀行が個人保証を求めるのは、世界でも珍しいことであるが、これは回収手続きのコストを考えても実際には経済合理性に合わないという意見が多い。
会社の不動産等の担保のみならず、起業家の不動産をも担保に要求することもあり、また借金返済ができない場合の回収は、サービサーと呼ばれる回収専門会社を通じて行われるが、その手間の割には回収率が低いのだ。

開業率が廃業率を上回れば景気は一気に回復するだろう。
新しい産業、製品、サービスの登場とそれに伴う雇用の創出と経済の活性化だ。疑いの余地のない景気回復策だ。
それを実現するためには、経営者に対する個人保証という古い慣習を無くすことが必要だ。

Comments