›3 30, 2011

社内失業

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日本経済の低迷の大きな原因としてデフレギャップがある。つまり需要に対して供給が過剰なのだ。
日本の労働人口はおよそ6,000万人おり、そのうち余剰人員が約600万人との試算がある。
企業においては業績の低迷、過剰人員の削減をこれまでもずいぶんと行ってきた。
希望退職による年収が高い中高年をリストラ、派遣切りによる非正規労働者の削減、内定取り消しは社会問題に発展した。
そでも尚残る余剰人員が社内失業者である。
この言葉は比較的最近知ったのだが、ネットの掲示板などで広く使われているため相当数の20~30代の若者が社内失業しているようである。上記の余剰人員が社内失業者とすると10人に1人の計算にもなる。

この本の著者である増田不三雄氏自身が社内失業中とのことで、社内失業の現状が良く分かる書籍である。
社内失業は社内ニートとも呼ばれ、給与は支払われるが業務が無い状態のことである。
仕事をしないで賃金が支払われるというのは非常に恵まれていると思われるかもしれないが、企業側にとっても解雇できない側面があり、また実際の社内失業者の抱える問題は大きい。

例えば、社内失業者は若年層に多く、就業経験やスキルが無いため、転職がうまくできない。また賃金も抑えられており上昇の見込みもない飼い殺しの状態なのだ。
おそらく企業にとっては自主的に退職を望んでいる存在だ。
かつても窓際族という言葉があった。窓際族は年功序列に伴なうポストの不足により生まれたが、希望退職などのリストラにより数が減っていった。

社内失業者は賃金が貰えるだけ失業者に比べると恵まれているが、それでも当事者にとっては相当な精神的苦痛を強いられる。人間とは目標が無かったり、行動が制限されたり、仕事が与えられないというだけで鬱病になるほど弱い存在なのかもしれない。

社内失業とは簡単に解雇できないできない制度に問題がある。やはり解雇規制が無くなることとより一層の人材市場の流動化が求められているのではないだろうか。

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