›2 21, 2011

逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録、市橋達也

Category: 書評 / 0 Comments: Post / View

リンゼイさん殺人容疑で2年7カ月も逃亡した市橋容疑者の書籍だ。
事件当時と逮捕時に大きく報道された大事件だったが、不思議だったのが何も持たずにこれほどの長期間をどうやって逃亡し続けたのかということだった。
警官に追われながらも靴を履かずに逃げ切り、そのまま行方をくらました。結果として住所なし、身分証明書なし、銀行口座なしという裸同然、浮浪者以下の逃亡者が日雇い仕事などで金を稼ぎ、費用のかかる整形手術や沖縄への長距離逃亡も行い、さらには100万もの貯蓄を得たという事実がある。

このような殺人犯罪容疑者の本を買うことをためらいはしたものの、印税はリンゼイさんのご遺族への賠償金に使われるとうのが本書を手にさせた。

世の中で経済的に最も貧困だと思われるのは金の無い逃亡者だと思っていた。ホームレス生活をし、残飯を漁りながらも、犯罪者が身元を隠しながら貯蓄までできるという事実に驚愕した。
事業に失敗した者、リストラにあった者、住宅ローンなど借金を抱えて破産した者など、人生に絶望する者は路上のホームレス生活を思い浮かべることがあるとよく聞く。
それでも犯罪者では無い。貧困という恥ずかしさはあっても、なんら社会的には追われたりする立場ではない。

しかし、市橋達也は犯罪者(まだ容疑者だけど)という逃げる立場でありながら、生活費どころか貯蓄や多額の整形費用まで稼いでいたという事実は、犯罪者ではない貧困者にとっては胸を張って生きていける希望が日本にはあるということだ。

不謹慎ながらも逃亡生活が冒険生活のように感じられてしまった。


Comments