›2 09, 2011

ベンチャーキャピタルの買取請求条項

ベンチャーキャピタル(VC)は直接金融であり、銀行と融資と違い返済義務を通常負わないと思われている。
だが、現実にはVCは投資先がファンドの期限内に上場できない場合必死で回収を試みる。

VCはリスクマネーで株式投資を行うのだから、上場できない場合は評価損を出すだけで終わりなのが本来の役割のはずだが、
回収できない場合は、損失を出さないために契約書を武器に経営者に買取を迫ってくる。

ベンチャー起業家にとって気をつけないといけないのが、投資契約書の内容だ。VCのファンドの期限、買取請求権(買い戻し条項だとか償還請求権とも呼ばれる)だ。そしてもし経営者の個人補償まであったら銀行融資と変わらなくなってしまう。会社が倒産した場合でも債務を背負ってしまう。

近年のVCの業界はIPO数の減少と新興市場の株価の低迷からこれまでのビジネスモデルが成り立たなくなってきている。
投資先が破たんする件数も急激に増加し、仮にIPOしても投資金額以下でしか売却できないといったケースがざらである。
このような状況下で、VCも生き残りをかけ必死になっている。ファンド資金は潤沢にあっても、投資してもなかなか回収できないからだ。

現状でVCが行っている貸し剥がしにも似た投資剥がしとも言える買取請求は2パターンのケースがあるようだ。

まずは、金融危機前の好景気の金余り時期に投資したが、投資先の上場ができず塩漬けになっているパターン。VCは塩漬け企業をリビングデッドと呼ぶ。
ファンドの満期が近付き、それまでには投資先の株をなんとか処分したいが、当然処分する先が無い。
最終的には株券をただ同然でバルクセールでセカンダリーに売って処分しないといけないが、その前に経営者になんとか買い取ってもらおうとする。


他のパターンとしては、最初からIPOではほとんど回収できないと知りながら、損をしない厳しい投資契約書でベンチャー企業に投資するパターンだ。
これは近年増加しているようだ。上場計画どおり進まなかったら真っ先に回収できるような、とてつもない投資契約書になっているだろう。
それでも投資しなければ運用益が入ってこないので、VC側も必死なのだろう。

どちらにしても投資金額での買取請求は事実上困難である。ベンチャー経営者に買い戻す金が無いからだ。無いところからは取れない。もしあったとしても、業績が悪い状態では経営者側からしてみれば投資金額と同じ額で買い戻したら損をしてしまう。通常VCによる投資は株価算定方法(純資産方式等)よりも高い株価設定になっているため、他の算定方法で株価を算出したほうが安い。

中には無茶な買取請求条項を投資契約に盛り込んでいるVCもあるという。しかし、株式には譲渡制限もあり取締役会での承認も必要なため、出資比率の低いVCは本来は経営者に買取請求することは困難なのだ。(シェアが高く、取締役もいるパターンで乗っ取られてしまえば別だが。)
また、無理に買い取りを迫ったり、外国人投資家やもっとひどければフロント企業に売るなどと脅して買い取りを迫れば脅迫になる。

最終的には交渉だが、金の無い経営者は1円で買い取ることになるだろう。0円だと配分できないためだ。

VCは結局は投資回収が難しい状況というのが現実だが、ベンチャー企業にとってもVCからの調達というのは更に厳しくなり、リスクも高くなるということを覚悟しないといけない。VCはもはや日本ではそのビジネスモデルを成り立たせるのが困難であり、緩い条件で投資をすると回収できない。
本来VCは投資家の金を集め運用するので、投資をすれば手数料が入るというビジネスモデルのはずだが、日本のVCの多くが自己投資も行っているために大きな損失を出した。
投資家にとってもリスクマネー(ハイリスク・ハイリターン投資)としてVCへの投資を考えなおしている時期にもきているのだろう。

VCから投資を受けた経営者、これから受けようとしている経営者は投資契約書をよく読み、最新の注意を払う必要がある。このような資金繰りや折衝で本来の事業に集中できない状態になってしまうというのはなんともバカバカしいと思う。


VCから投資を受けるまでのステップもまたバカらしいものがある。本書はITバブルに沸いた日本のVC業界に振り回された怨念の書だ。
投資を受けれないのは自己責任だが、VCは事業をまともに評価できない、投資には業界のブームやタイミングもある。
むしろ投資を受けてからもまたVCに振り回されるのだが。

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