›12 06, 2010

君がオヤジになる前に

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ホリエモンの35歳くらいまでの若者へ向けた人生の指南書だ。かなり評価が高いようで読んで見たのだが、これまでのホリエモンの本とは異質で若者に語りかける口調といい、熱い思いといい、新鮮さを感じた。
かといって、過去のホリエモンの発言からブレが無く、首尾一貫としている。思想的には、超リベラルというかラジカル・リベラル(新しい自由主義)、個人主義、非道徳的、 超合理的といったところが感じられる。

スタイルとしては若者からのツイッターの投げかけから若者の人物象をいくつかにグループ分けして、彼らに対する熱いアドバイスを与えるような本だ。
若者の多くが、平均的ではあるが、何かに情熱を注ぐことも無く、将来に対する不安ばかりが先行し、安定的な守りに入っている。不景気などの時代背景もありしょうがないと思っていたのだが、ホリエモンの意見は違う。

若いうちに突き抜けるような体験をせよ、やりたいことをいくつも、とことんヤレと説く。読んでいると、大企業で平凡に働くような人生が馬鹿らしくなるような内容だ。
起業したり、自分の好きなことをやるのは1度しか無い人生を悔いなく生きるのに大切なことだと改めて感じさせられる。何を恐れていたのか、不安はどこから来てたのか。そう思う読者は多いのではないか。
日本では、起業して失敗しても飢え死にしたり、路頭に迷うことは無い。社会福祉が行き届いている。

若者が生命保険なんかに入る姿にもホリエモンは呆れている感じだ。生命保険はギャンブルじゃないかという。そもそも保険の歴史はギャンブルから始まったという豆知識も披露していて面白かった。そのとおり生命保険は宝くじなんかと同じギャンブルである。運が悪く死ねばギャンブルに勝てるという点が違い、しかも受け取りは自分以外の人だ。社会保障の整った日本で生命保険が必要なのか、そんなに将来を不安視して生き続けるのかと説く。

驚いたのは、ホリエモンは緊張もしないし、不安に感じることも無いという。彼が唯一恐れるのが「死」だと。一連の書物やインタビューなどを読んでいて思ったのだが、ホリエモンは特別な能力を持つとか、努力家では無いということだ。拘留されてもめげない精神力であるとか、何に対しても不安を持たずに生きることができる姿勢、考え方が一般人とはあまりにも違うといった点が、現代社会のとりわけビジネスの世界で突出した成果を発揮しているのではないか。
技術、食事、新しいモノに関しては、情報を人一倍収集して影響を受けているのがわかるが、社会との関わりであるとか、生き方、ビジネスの仕方というものに対しては影響を受けず、持論を徹底して貫いていることがわかる。
このような人格や性格が形成されたのは、大人になる前の環境によるのかもしれない。

本書で、ひときわ驚いた箇所がある。既婚者に「パンツぐらい自分で選べ」という話から、「結婚後も恋愛は続けろ」という社会概念からは非道徳的に思える主張をしているところだ。それが、また納得できてしまうのだが(笑)。確かに、恋愛を辞め、家庭を守ることだけになり、自意識や欲望を表現しなくなったら、それがどんな姿かと改めて想像したらゾッとする。多くの若者が嫌うオヤジだ。家庭を守るという言い訳に自己犠牲をしていいのか。子供が可愛いというのも小学校以降は生意気になり、さらに大きくなるとだんだんと嫌われる存在になる。思い起こすと自分もそうだ(笑)。

この本がホリエモンのこれまでの著書と違うと特に感じたのは、過去の辛い時期の思いとそれをいかにして乗り越えたのかについて結構ページを割いているところだ。ホリエモンは離婚し妻子が去った後の孤独と、ライブドア事件での拘束と付き合っていた女性との別れという厳しい時期を孤独に過ごしている。さらっと書いているが普通の人にとっては想像を絶する苦悩があったはずだ。さすがに修羅場をくぐってきた起業家だけあって、その苦しみからの立ち直りも見事だ。

その他にも読んでいて再認識したのは、環境や不景気のせいにして逃げ腰、守りに入っているだけで、そういった連中ばっかりなんでチャンスは多いし、失敗しても死ぬわけじゃないんで、好きなように生きることが本当に大切なんだということだ。
漠然とした不安なんか吹き飛ばし、やる気が起こってくる本である。

本には自分も好きな漫画「カイジ」の作者の福本氏との対談も入っている。

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