›11 24, 2010

映画 お受験

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お受験とは有名私立小学校、中学校へ入学させるための親の努力や塾の対策などのことだが、子供の年齢が低いため子供の意思と関わりなく親の希望による受験対策と言えるだろう。
最近は日経新聞でも学習塾、教育産業の特集が行われており、それを読んで思うのだが少子高齢化社会では受験対策というのは衰退産業である。学校が入学希望者という需要よりも入学学生枠の方が多いという供給過剰な状態である。そのため、一部の有名名門学校への入学対策という供給量が小さい市場への需要の喚起と、受験対策とは違う人格形成教育など新しい産業、市場の開拓が行われているようである。

人口構造からいうと衰退市場ではあるが、教育費にかける費用というのは収入の割合からはずいぶん増えているようで、日経新聞記事によると「小学生以上の子供を持つ家庭の教育費(在学費用)が2010年度は平均で198万2千円となる見込みで、年収の37.6%に達することが20日、分かった。」とのことである。

これまで教育費にかける年収の比率というのは10%程度であったと認識している。約200万円の教育費というのは、逆算すると平均年収は540万円となり、一般サラリーマンの年収を大きく超えるが、実際は年収別の負担割合は「400万円以上600万円未満」が37・7%とのことらしい。また、学習塾やその他習い事で教育費が約200万円というのは尋常では無い数字にも感じる。私立小・中学校に通わせるのに、学費ともろもろの雑費で約100万円位と思われるので、公立学校に通わせる家庭ではどれほど教育費を過剰にかけているのか、受験の無い一貫校に通わせた方が安上がりではないかと思ってしまう。

このようなことから受験産業に興味を持っているのであるが、10年以上前と大きく異なっている現在の状況を知りたくて99年の作品である映画「お受験」を見てみた。小学校受験を控えた子を持つ矢沢永吉は、突然リストラで職を失ってしまう。そんな状況でも、母親は変わりに仕事をし、6歳の子供を名門私立小学校へ入学させるための努力を怠らない。子の希望など関係無しに親が子に一方的に注ぐ愛情や希望というのが印象的で、その献身的な親ごころには感動させられる。しかし、一家の大黒柱が失業してお受験どころでは無いだろう。

この映画では、教育が完全に受験のための対策に過ぎない点が挙げられる。この点がいかにもおかしくコメディ映画だ。現在の教育現場では、受験対策を中心として、躾やスポーツ、音楽などの芸術などより多彩になってきている。義務教育の質の低下のため、本来の教育の目的であるところの「自立」までもが民間教育産業に流れていくようになるのではないか。学校教育だけでなく、親や地域コミュニティによる教育というのが無くなったのも問題だ。

また、経済格差=教育格差という問題も浮き彫りになってくるのではないか。教育費にかける金額の増加というのは教育費という投資に対するリターンが将来賃金で期待できるからとも考えられる。


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