›8 24, 2010

モチベーション3.0 ダニエル・ピンク

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働き方、仕事に対する考え方は大きく変化している。マズローの欲求段階説にもあるとおり、人は生存するための労働から、より高い意識と自己実現を求めるようになってきている。現在のような不況でも、少なくとも社会保障により飢え死にすることはないし、生きがいややりがいを求めるというのは納得のいくところであろう。
モチベーションをコントロールする「アメとムチ」〈モチベーション2・0〉は通用しなくなりつつある。

ダニエル・ピンクのインタビューや記事を以前から見ていたが、革新的な事例の紹介がとても面白い。会社や組織に属さないフリーランスの増加や、報酬以外のものを求めて働く人たちなど、これからも増加していくだろう。
フリーランスだけでなく、非正規社員やアルバイトも増加しており、そのような立場で満足している人も多くいることに驚かされる。成果が出せなければ収入が無い世界であり、自分の体(脳みそや体力)が資本である。それ以上に、精神力が要求される世界である。

報酬以外のモチベーションについては、21世紀に入ってからの概念になるだろう。OSのLinuxの開発やWeb百貨辞典のWikipediaなんかは多くの無報酬の人たちによってささえられ、莫大な費用と携わる人に対する報酬でつくられた製品を凌駕する存在となった。
そして、多くの人がそのようなモチベーションに対して未だに理解が及んでいない現状である。

しかし、そのようなモチベーション概念は大きく、確実に波及している。

先日もあるベンチャー企業の社長と話したのだが、彼は社員をmixiのコミュニティで集めたそうだ。しかも起業で金が無いので当面は無報酬の成功報酬だが逆にモチベーションの高い人たちが集まるそうだ。

また、ある人は自給自足のコミュニティづくりに精を出しているのだが、土地の開拓から住居建設など手間のかかる労働を無報酬のボランティアが集まってくるそうだ。

BlogやTwitterなんかをやる人の多くも無報酬でやっている。中にはアフィリエイトなんかで稼ぎまくる人もいるが。

逆に、どんなに報酬が高くてもそれを捨てる人もいる。ある会社の役員は30代で地位を築いたが、それを捨てて農業の世界に行ってしまった。誰もが反対し、信じられないという雰囲気だった。

日本では10年位前にもネット関連や外食などで独立・企業ブームがあったのだが、様子がずいぶんと違った。フリーランスにせよ起業にせよ、始める前のモチベーションは良いのだが、実際にはほとんどのケースがうまくいかず、生活に困ったり、借金の返済に追われて大変で、焦りと不安で精神を病む人を多く見てきた。
健康でエネルギッシュな人が、胃潰瘍を持ったり、鬱になるケースも見た。それくらい大変なものなのだと思ったのだが。

もしかしたら日本人は不安症で、米国人は楽観的という違いがずいぶんあるのかもしれない。それから日米の違いとして米国企業は簡単にレイオフ、解雇を行うのに対して日本では雇用が保障されるという社会風土がある。米国企業にあるEmployment-at-willという契約で、理由に関わらず解雇できてしまうのだ。企業に属していおきながらいつ解雇されるのかわからないのであれば、フリーランスが良いという選択も当然あるかと思う。

日本ではSOHOのようなフリーランスが相互扶助で仕事を助けあったり仕事を回しあうようなコミュニティが発展しつつある。やりたい仕事ができるというのはモチベーションが高くなるのは当たり前だが、同時に生活保障が無いと不安でモチベーションどころでは無くなるのではないだろうか。そして仕事が無くなれば、やりたくない仕事もやって稼がざるを得なくなる。

それでもやはり時代の変化は感じる。日本企業は大企業でもリストラをするし、潰れる企業も増えている。最悪でも命は取られないのだからと開き直れば、思いっきりやりたいことはできる環境がそろってきていると思う。

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