›7 28, 2010

中小企業のM&Aの現実

Category: アントレ(起業) / 0 Comments: Post / View

中小企業のM&Aが増加している。その原因はさまざまあるだろうが、売却側(売り手)には以下の理由があるだろう。

・事業承継の問題
利益を出していて事業が順調であっても会社を継続できないことが多い。
中小企業では株主が社長というケースが多いが、利益が出ていると株の評価額が高く株を後継者に引き継ぐことができないパターンだ。
また、社長の借入に対する個人補償という問題がある。後継者が自分が作った借金でも無いのに、会社の債務に対する個人補償を引き継ぐことができないことが多い。引き継ぐには資産と担保も銀行に要求されるだろう。
また、事業を承継する人がそもそもいないパターンだ。親族で承継するパターンが減っており、社員も上記の理由で引き継げない場合が多い。

・事業の成長性の問題
日本は長引く不況が続くことが予想される。少子高齢化、円高、海外への製造業移転などの理由でビジネスモデルが成り立たなくなる業種が増えている。
純資産があり債務超過に陥る前に会社を清算するか、売却するかという判断に迫られる。
生産よりも売却のほうがメリットが多く、税金面などの金銭的な問題以外にも社員の雇用継続といったことがあげられる。

・不採算事業の売却
他の会社が運営したほうがその事業の価値が向上するパターンがある。限られた経営資源を特定の分野に集中させるための非関連事業の売却だ。


買収側(買い手)には以下の理由があるだろう。
・事業の拡大
企業というのは規模の経済(スケールメリット)が存在する。事業規模が大きくなれば効率化し利益率が向上するという考え方だ。シナジー効果もある。

・時間を買える
技術開発や新規顧客獲得のための時間を短縮し、即時に手に入れることができる。

・節税
赤字の企業を買い節税するという考え方だ。


■ファイナンシャル・アドバイザリー(FA)
M&Aで売り手と買い手を新しく見つけるためには仲介機関が必要になる。これは税理士、弁護士のネットワークを通じたり、証券会社、仲介専門業者(ブティックと呼ばれる)などがある。また、それらの組織や人脈が複雑にネットワーク化されているのも中小企業M&A業界の特徴である。
そして、仲介業者がファイナンシャル・アドバイザリー(FA)になって交渉が行われるのだが、中小企業のM&Aでは買い手のFAと売り手のFAが同じ業者ということが多いようだ。これには利益相反の問題がある。報酬を両社からもらうことに加えて、どちらの立場を優先させるかという問題である。
また仲介業者によってまちまちであるが、着手金、リテーナーフィー(毎月決まった額を払う)、出張費用、成功報酬と結構な費用が発生する。
仲介業者が非常に増えているようで、検索エンジンでは数えきれないほどの企業がヒットして、広告も満載だ。
仲介だけであれば制約が少なく、参入費用もほとんどかからないということか。成功報酬だけの企業が出てきたり、今後価格競争になるのかもしれない。

■M&Aの方法
企業価値の算出方法であるが、DCFや純資産+営業権だったり、類似会社比準だったりと色々あるが、結局は交渉によって決まるのが現実だ。
売り手に対して多数の買い手があれば、高い価格を選んだり交渉の材料にすることができる。
実際の売却方法は、基本的には株式の現金買取が多いだろうが、株式交換であったり、増資を引き受けてもらうなど多様な方法がある。

■現実の中小企業のM&Aの実態

中小企業のM&Aが増加しているといっても、現実に売却できるのはほんの一部に限られる。多くの中小企業が赤字であり、実は存続価値が無い会社がほとんどであるという現実がある。M&Aには費用がかかり、その費用を捻出することができない企業も多い。最低金額を見ても仲介料(資産移動時の費用)で500万円程度はかかるし、活動費用も発生する。またデューデリジェンス(買収監査)を第3者の監査法人に行ってもらう費用も発生する。面談や資料準備にも多くの時間が取られる。そんな訳で売却できる中小企業はほんの一握りだろう。仲介業者を通さず知っている会社に買ってもらうという方法になってくる。

また、買い手で買収余力があるのは比較的規模の大きな中小企業か大企業というのが現実だ。上場企業の場合は、株主への責任が発生するため慎重であったり、社内稟議の問題などで進まないケースもある。上場企業が一定規模以上の買収する際には、適時開示義務が発生し、買い手の財務情報など開示しなければならないケースが発生する。
逆のパターンになるが売却価格が高かったり、規模が大きい会社というのは買える会社が限られてくるという問題が出てくる。

このように中小企業のM&Aは現実は結構ハードルが高いのだ。経営者のハッピーリタイヤの事例なんかはかなり特殊だろう。そもそも高く売れるタイミングは企業が儲かっている時で、企業に愛着と生活の拠り所にしている中小企業の社長が手放したいと思わないことも大きな理由かと思う。
M&Aで売却できない場合は、清算・廃業だったり再生方法を検討することになるだろう。再生方法は第二会社方式(別会社をつくって資産や事業を移管してしまい負債とわける方法)など注目される方法も出てきている。

会社というのは始めるのより終わらせることのほうが遥かに難しい。M&Aは終わらせる方法として非常に良い選択肢ではあるが、結構ハードルが高い。費用だけがかかり、更には情報漏洩で損害が被るケースもあるので十分な配慮が必要である。

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