›7 19, 2010

インドへ馬鹿がやって来た

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久し振りに感動したマンガだ。 山松ゆうきちという筆者は初めて知ったのだが、とんでもない発想を持っている漫画家だ。最初はインドを貧乏旅行する話かと思って、手に取ったのだが全然違う。異国での無謀な起業の話だった。
金が無い漫画家が金儲けを考える。
そこで思いついたのが、かつて商社マンが電気も通らない発展途上国の村に電気炊飯器を売る話だった。
マンガ大国の日本だが、日本のマンガを発展途上国に売ろうと思いつき、無謀にもインドに売り込みに行く。そこで売り込むのが数十年前に部落を取り扱ったために激しい糾弾を受けた発禁マンガ(劇画)の「血だるま剣法」だった。
この作品はその後伏字でつい最近また発売されることになって読んでみたが確かに衝撃的な作品だ。

自分もインドに行った経験からそこはカースト制度があり、部落差別の本を売るというのは無謀だが面白いと単純に思った。

ただし、インドはヒンディー語があるものも、それ以外の多くの言語で構成されており、識字率も極めて低く、マンガや本なんか読める人がいるのかも怪しい。
当然、山松氏は知り合い、友人、家族からまったく理解されない。

それでもインドで出版するために悪戦苦闘するというストーリーだ。
感動的なのはその姿勢だ。山松氏も語っている。「勝算なんか無い」
自分はこの言葉が心に響いた。

常々思うのだが、夢と目標は違う。目標は達成できることが前提であり、そのための道筋を立てて努力することだ。企業活動も日常の生活もそんな目標の積み重ねだ。
しかし、夢は違う。もっと漠然としたものであり、どうやって達成したらよいのか検討もつかないこと、勝算なんて無いことが夢なんだと思う。

あまりにも無謀なことを行う姿勢というのは、夢のあることだと思った。夢を追いかけるのが、やっぱり人間の価値なんじゃないかなと感じたのだ。

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