›6 28, 2010

道は開ける|カーネギー

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「道は開ける」はデール・カーネギーの「人を動かす」と並ぶ代表的かつ古典的名著として世界中に圧倒的な支持を得ている。
原著タイトルは「How to stop worring and start living」で、直訳すると「悩むのをやめて生きる方法」、「心配事から解放される方法」とでもなるかと思う。
ストレスや悩みを解決する方法を提示し、時代にかかわらず読み継がれている名著だ。徹底した事例と取材に基づいており、単なる個人的な経験と方法論で無いことや、その効果が支持される所以だろう。

カーネギーが本書を執筆したのは、当時ストレスや悩みを解決する手段や方法論がニーズが高いにもかかわらずまったく書籍が出ていなかったことにある。昔からそのような領域は宗教や聖書が大きな役割を担っていたのかもしれない。
現在では、宗教は健在だが心理学から動機付け理論など様々な理論が展開されているが、本書ほどのロングセラー・ベストセラーはないだろう。

もちろん自分のこの本に多大な影響を受けているし、定期的に読み返す書籍なのだが、本書の性質上読む人と同じような状況の人の感想や絶望や悩みを克服した人の感想のほうがためになると思う。

Amazonのレビューの中でも1件だけ突出した感想があるので是非読んでもらいたい。「三菱」という名のペンネームの感想は”323 人中、319人の方が、「このレビューが参考になった」”ほどの支持を受けている。
詳しい状況はわからないのだが、拘置所に収監されていたというこの人物は、この本で救われたという。そのような状況下での心情を知るには経験しないかぎり無理だが、多くの人の置かれている状況よりも厳しかったものだろう。
「今日、一日の区切りで生きよ」「あすのことを思い悩むな」「賢者には毎日が新しい人生である」
そういった言葉と沢山の事例が、人生に対する視点を変え、大きな気づきとなったようだ。

他にも様々な人が、絶望的な状況から些細な心配事に本書は大きな影響を与えている。人生のどん底と思っていても、それは本人の主観に過ぎない。日々悪化する状況は恐怖だ。出口の見えない真っ暗なトンネルを走り続けなければならない。進めば進むほど後戻りはできなくなる。想像の及ばない領域というのは恐怖だ。

先の見えない不景気が長く続いているせいか、ストレスや悩みを抱えた人と話すことが多い。気持ちの持ちようなのかもしれないが、親身に聞くほど不幸な話や気持ちというのは伝染しやすくナイーブな気持ちになってしまうこともある。先日も日経新聞の「私の履歴書」の連載で取引先の社長と専務が自殺をした話が載っていた。昔の話だし、自分とは全く関係ないのだが、同じような境遇に置かれている人を知っているだけに感情移入してしまう。その話では、会社の経理状態が債務超過であることから自殺を選択したものの、実際の経理状態はそこまで悪くなかったという話だった。どんな状況であれ人生を断つという選択肢は最悪だ。他の選択肢もあることや、人生の中でそのような最悪の時期というのはわずかな時間で、残りの人生を決して悲観すること無く、より良くする可能性も十分あるということを是非知ってもらいたいと思う。

人生経験が豊富な人ほど対処方法を知っているだろう。しかし、経験が無い人も、本書によって多くの人に支持された対処法や多くの事例をもって知ることができるのではなかろうか。



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