›4 10, 2010

敗社復活

Category: 書評 / 0 Comments: Post / View

起業して順調に成長し年内に上場にするような絶好調の時期に恐るべき事態が起こった。創業社長の川端秀一氏はアイデアと経営力と行動力によって業界から注目され、上場前だが成功者として認知されていた。
当時はそうとう浮かれていたのかもしれない。信頼する社内の相談相手は高校時代の親友で卒業後十数年間連絡を取らなかったものの会社にとっても社長にとっても必要不可欠の人物だった。
ところが、その人物は私生活はとてつもなくだらしが無い。金と女に多くの問題を抱えていたが社長は黙認していた。しかし、やっぱりそんな男だから会社の金と銀行関係でとんでもないことをしでかして失踪してしまった。

突然訪れた窮地。追い込まれ相談した信頼できると思っていた男が、実は恨みを抱えていて復讐の時期を探っているタイミングだった。

更なる追い打ちを掛けられ、破産の道に進むこととなる。精神的に追い込まれ死を意識するが心のよりどころの筈の家族にもまた逃げられてしまうのだった。

これほどの人物だから、冷静であれば窮地を脱することはできたはずだ。しかし、追い込まれ人間不信に陥った状態では、普通の人間でもできることもできず、事態はさらに悪化してしまう。

建てたばかりでこれから住もうと思っていた家は乗っ取られ、財産も家族も会社もすべて失う。それがあっという間の出来事だ。

読んでいても、何故、もっと冷静に対処しないのかと思うがそんな精神状態では無い。
他にも「社長失格」など起業家が倒産に追い込まれた事例を見てきたが、有能なものでも追い込まれると非常に弱いということがわかる。

実際に体験はしたことがないし、したくもないが、同じような状況を想像してみると果たしてもっとまともに行動できただろうか、自殺しなかっただろうか、など色々考えてしまう。

川端秀一氏のすごさはどん底から這い上がるところにある。
裏切られ、全てを失い、金も無いのに復活するところにはこれまで築いてきた取引先や腹心の部下の救いの手があった。そしてローズネットを立ち上げ、またもや上場準備段階なほどに瞬く間に成長していく。
突っ走らなければ、失敗や失ったもののことで頭が一杯で気が狂いそうになる。誰だって日常の仕事や家庭で悩んで何も手につかなくなった経験はあるだろう。しかし川端秀一氏のどん底の経験はそんなレベルでは無い。不安や後悔を忘れて敢えて無理をしても仕事に没頭し、多くの人に助けられる姿を読みながら想像して涙が出てきた。


再起するのはさすが起業家だ。最悪の状況まで行った人間は強い。自分は「感動」と「勇気」をもらった。



Comments