›4 06, 2010

藤巻健史の「金融情報」はこう読め!

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藤巻氏の金融危機後の資産運用の指南書だ。基本的には資産運用戦略として金融危機前と方針は変わっていない。日本の国債発行の多さから長期金利の上昇、インフレ、そして米国株のさらなる上昇。日本国内においても株、不動産といった資産インフレも想定している。
よりテクニカルには新聞記事の読み方といった点に着目している。金融機関から発表される予想だとかはポジションとークとして客観的に読まないといけない。
金利や個別企業の上昇に対する言及は、その企業がそうありたいと願っていることが多い。つまり発表どおりに多くの投資家が動けば儲かるポジションを持っていると考えるべきということだ。
これは大物投資家(ソロスとかジム・ロジャースとか)になればより発言の影響が大きく、ポジショントークの可能性が高いと日々思っていたことだが、金融機関の発言もやはり気を付けるべきと思った。

藤巻氏は金融危機で大損した人とよく言われるらしい。これまでの書物でかなり具体的に投資戦略を書いていたためかと思う。

本書では企業の株価の上昇の可能性を業績だけではなく、置かれている状況から見る手法についても述べられている。
例えばトヨタは創業家の社長に変わることによってこれまでの膿を出すはずだから、交代後は期待できるとか、米国の自動車販売台数の落ち込みは自動車保有者数とその買い替えから考えても、金融危機後は異常でまた販売台数は上がるとか。

本書の書かれたあと、残念ながらトヨタはリコール問題で創業家社長が米国議会の証人喚問まで呼ばれたり男泣きしたり、世界的なバッシングでさんざんなのだが。

長期金利の上昇に関しては、一貫して主張されているが、そのタイミングがわからない。ただ、長期金利の上昇による国債価格の下落を個人投資家でも利益を出す商品や金融機関についても書かれていて、新しい投資方法を加えられるのは良いかと思う。金利の変動で儲ける手段はあまり個人投資家にはなじみが無いので。

しかし長期金利の上昇も、国内金融機関の国債買いがとてつもない額に積み重なっている。そのため市中に金が回らない。企業も負債での資金ニーズが無い。なんだかいつ爆発してもおかしくないような状況に日本はなってしまいつつあると思う。


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