›10 26, 2009

東京ゴールド・ラッシュ

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バブル崩壊後の日本で荒稼ぎをした外資系投資銀行、ヘッジファンドの実話をもとにした物語だ。
当時の日本は金融ビックバン以前で、金融市場全般にたくさんの問題を抱えていたことがわかる。本書にはシンガポールで日経先物で大儲けをしてその後破産したベアリング銀行のニック・リーソンも登場する。リーソンが稼いだのも株式市場にあるアービトラージを利用したものだった。そのような抜け穴が沢山あり、ヘッジファンドでも稼げるアービトラージをいかに見つけるかというのがエリート大学出身の金融マンの仕事であることがわかる。そんなことで数億円の給料が貰えるというのも驚くが。

そこにはビジネスモデルなんて存在しない。ブラックジャックでカウンティングすれば統計的に期待値が1以上になったのと同じ理論で、金融システムの欠陥を見つけて投資するというだけだ。だが、同時に100%確信的に儲けられる訳ではなく、1つの取引に数十億円をつぎ込むシーンは手に汗握る。トレーダーも精神的に相当タフでないとやってられないだろう。
ただし、投資のゲームに使う金は自腹ではない。様々なブラックマネーがヘッジファンドに流れていることが示唆されている。その金で増やした利益の20%と数パーセントの手数料が彼らの会社の利益で、そこから賃金とボーナスが支払われる。

当時からハゲタカと外資金融機関は言われていたが、とてつもない儲け方とカネの使い方をするので驚いた。

また、日本で働く外国人からみた日本というのも面白い。彼らはガイジンであり決して日本には溶け込めない存在なのだ。本書には歌舞伎町のソープランド、イメクラ、デリヘルから六本木のキャバクラ、高級クラブまでたくさんの風俗が登場するが、日本の風俗は「Japanese Only」だ。それでもヤクザと結びつきが強いのは日本の銀行だけでなく、外資投資銀行も同じらしく、そのコネなのかソープやイメクラに入るシーンが何度も登場する。

外資投資銀行の連中を見て、エンロンを思い出した。刺激を求め、リスクを恐れないのは重要な資質であることがわかる。彼らもエンロンの幹部と同じように未知なるゾーンを求める。歌舞伎町のソープに行くのも、バイクで峠を高速で攻めるのも適正テストだ。毎週140時間の勤務をこなし昼飯も10分程度、夜はガイジンバーで呑んで情報交換というのを平然とこなしているのも驚異的だ。一流大学出身者を取るのは忍耐力という理由もあるだろう。

外国人から日本の文化や風俗というのがどのように見られているているのかも興味深かった。原書名はUgly Americans(醜い米国人)。下品で日本の女を性の対象にしか見ていなかったり、日本の金融を金を貪る所くらいしか思っていない本音が良く表れている。


東京ゴールド・ラッシュ

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