›10 22, 2009

シルクロードの滑走路

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シルクロードにある旧共産圏の小国相手に商社マンが旅客機を売る物語だ。総合商社のビジネス現場を深く知ることができる。国際的な金融機関を利用したシンジゲートローンの組成、保険、受け渡し、そしてビジネスの最前線で行われている交渉を知ることができる。もちろん内容もとても面白い。
キリギスタンにボーイング機を売るまでの地道な交渉が続くのだが、旧共産圏国家特有の汚職、政治の腐敗、進まない議論、官僚主義のためなかなかビジネスが進まずいらつく30代前半の商社マン。貧しい国から高い金利をぼったくろうとしていると相手から言われ(事実商社は口銭を抜いてアレンジすることが仕事だ)、交渉が逆転したりする。
また、日本育ちのおぼっちゃん商社マンだからやはり頼りない。平和ボケしている特有の日本人だ。まず、日本人商社マンには交渉力が無い。
結局は、ずば抜けた交渉力を持つ正体不明、国籍不明のブローカーに頼ってしまう。日本企業はコンプライアンスがうるさいので、賄賂だとか交渉の最重要なところをこういった素性の知れない怪しい奴に依存してしまうというのも恐ろしい。しかし実際の総合商社の大きいビジネスはそんなもんなんだろう。
育った環境が違いすぎて、日本人には難しいか。

重要なのは、過酷な環境で育った者は教育を受けていなくてもビジネスで能力が発揮できるということだ。
圧倒的な交渉力を持つ、この素性の知れない男のすごさは、過酷な人生の積み重ねだ。

ところで、30代の日本人商社マンでは タクシーの運転手に30ドルという1カ月分の給料に値するチップをあげてしまう。このようにして発展途上国の市民の金銭感覚は破壊され社会がおかしくなっていくのだと思う。しかも営業や仕事でシルクロードの国々を飛び回るのはビジネスクラスだ。

世界で活躍するビジネスマンになろうとしたら、まず若いうちに困難や苦悩を味わうことが大切だと思う。ビジネス知識や語学や教養は後から学べると思う。
もちろんこの小説ではクルド人問題や旧共産圏の歴史や文化も大いに学べる。

シルクロードの滑走路

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