›10 03, 2009

悪夢のサイクル―ネオリベラリズム循環

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昔の公立小学校や公立中学校はまだましだった。今では生徒の親は生活が苦しく、正社員にもつけない派遣社員の者も多いそうだ。ゆとり教育、学級崩壊ともはや荒れ果てている。その元凶は何なんだろうか。

悪魔のサイクルとはバブルと破綻の繰り返しのことで、その元凶はミルトン・フリードマンによるネオリベラリズム(リバタリアリズム)と弟子達(シカゴ・ボーイズと呼ばれる経済学者。竹中平蔵もその一派と指摘される)と筆者の内橋氏は指摘する。

ネオリベラリスト(リバータリアン)という新しい自由主義者については以前から紹介している。リベラルが平等社会を目指し大きな政府を主張するのに対し、リバータリアンは公正な社会を目指し小さな政府を主張する。
官製不況とリバタリアン

経済学ではアダム・スミスから古典派と呼ばれるマネタリストは市場主義者だったのに対し、ケインズ経済学信仰者(ケインジアン)は不景気には公共事業による財政政策を主張する。その後フリードマンが登場し、財政政策では無く金融政策それも金利を下げるのではなく、通貨の発行量を変えるだけで良いというドラスティックな市場主義かつ自由主義が登場した。

公共事業というのは無駄がある。不景気だから穴を掘って埋めさせればよいという経済的には意味のないことでも失業を抑え景気の波を解消する効果(ビルトイン・スタビライザー)程度だ。また、マンデル・フレミングの法則(財政政策よりも金融政策の方が効果が大きい)からもマネタリストの方が経済的かつ合理的だ。

ところが市場主義になると、景気が良い時は良いが、悪い時はとことん悪くなってしまう。レバレッジ効果が働いてしまうのだ。

この本を読むとフリードマンの主張するマネタリスト的経済学が米国の経済、景気を上昇させ、日本のもその経済文化が流れてきたことがよくわかる。そしてネオリベラリズム(リバタリアリズム)が引き起こしたのがアジア通貨危機であったり、サブプライムローン問題だとの主張だ。その点はもっともだと思う。

しかし今の世界不況の全てが新マネタリストの責任だろうか?それまでの好景気はだれのおかげだったか考えたことがあるのだろうか?

筆者は製造業への派遣解放など規制緩和を進めたことで格差が生まれ、今の不況の原因にもなっているという書き方だが、リバタリアンの考えでは当然それは正しく経済を成長させることになる。派遣社員になる者は最初から職を自分の意思で選び、対等に企業と交渉が合意され賃金が決まっているからである。
むしろ派遣社員がかわいそうになのは正社員や労働組合にある。企業は有能で安い労働者が欲しいのは当たり前である。無能で高給取りの正社員を解雇できないから派遣社員が切られるのだ。
何故そのような議論が日本でされないのか不思議である。

筆者は経済政策が新マネタリスト(ネオリベラリスト)になった影響が不況を招いたと主張するが、そもそも輸出中心の日本の国力は相対的に低下しており、さらにゆとり教育の影響か平和ボケのせいか努力しない大人が急上昇している。それがニートであったり、フリーターだ。
今の不況の現況は日本が経済成長を停止してしまったことだ。それは怠慢、ゆとり教育、人口減少、少子高齢化などさまざまな原因がある。

そんなひどい状況でもITバブル以降のゆるやかな経済上昇にあったのは小泉政権の竹中の政策も大きかったのだと思う。悪影響もひどいが。

ただし、どのような経済政策であれ資本主義には限界がある。企業は寡占化すれば勝ちであり、それは消費者にとっては負けであり、どこの市場も最終的にはそうならざるを得ない。
一時的には大企業のサービスが安くて良くても、それは中小企業を簡単に潰すことができ、最終的に大企業は競争が無くなることで怠慢になり消費者が不利益をこうむるのだ。

商店街が無くなったり、Walmartやイオンしか町に存在しなくなるのと同じことがあらゆる産業で起こるのが資本主義の末期症状だろう。

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