›6 16, 2009

国内自動車業界の大打撃

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日本の電機業界が危機的状況にあることはこれまで書いたが、基幹産業と言われている日本の自動車業界は実はより危機的な状況にあると感じている。
自動車の実需が、先進国から新興国にマーケットが移ることで、韓国や中国のようなより安価な自動車メーカがコスト面で有利な状況となる。
電機業界と同様、自動車業界も高付加価値よりも低付加価値・低コストがニーズに一致しているのだ。

さらに高付加価値の面から言うと電気自動車(EV)である。EV自体はかつてGMが政治的要因で電気自動車から撤退したこともあり産業構造が大きく変わる問題をかかえている。しかし、いずれはハイブリッドから電気自動車に変わらなければいけない。環境も経済発展のためにも電気自動車が本質的に良いというはわかるだろう。

電気自動車になると、エンジンがいらなくなり自動車業界は技術的付加価値を失う。石油会社も大損害になる。
そこまではわかるが川下分野の影響の甚大さを、先日自動車業界、川下業界の人たちと話していると感じられた。

エンジン製造は精密な加工、金型成型、長い年月を要する職人の技能が要求される。
この分野が日本の製造業の付加価値の大きな要因であり、その派生技術が工機、電機業界など様々な分野に波及している。

ところがエンジンをつくらずモータで良いとなると、自動車業界の川下に属する金型メーカ、工作機械メーカ、系列参加の下請メーカの多くが存在意義を失う。
他方、電装部品が増大し、電機分野は潤うようになると思われるが、電機分野は装置依存で製造される分野が多く、発展途上国でも簡単に生産できるものが多い。

そのように考えると自体は非常に深刻だ。

先日日経新聞を読んでいたら、トヨタ御曹司の豊田章男氏はGMの倒産から非常に強い危機感を抱いているということが紹介されていた。
宿敵がいなくなって喜んでいると一般には思われているのかもしれない。しかし、産業構造から、コストの高い企業がつぶれると産業全体の低コスト化が起こり、かつて高品質・低コストであったトヨタの強みが失われることになる。それに加えて上記の社会構造の変化。
さらに技術革新。
どれをとっても非常に困難な事態を迎えているというのがわかる。

このような危機をチャンスに変えられるならば本物の経営者、企業家といえる。

ハイブリッド技術を持つトヨタ、ホンダはチャンスは多いともいえる。この技術を電気自動車に変え、日本中に電気スタンドを作るだけの政治的な影響力もあると思える。
しかし、それを行うとこれまでの発展の源泉であった、川下産業、下請企業、系列といったものを大きく破壊する必要があるようにも思える。

このような状況をチャンスと思っているのは実は発展途上国の自動車メーカだと思う。韓国メーカも低コスト自動車が売れているし、中国のBYDは電池の会社からハイブリッド、電気自動車を生産するに至っている。

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